「タクシー運転手600人解雇」無効など求め仮処分申し立てへ

「タクシー運転手600人解雇」無効など求め仮処分申し立てへ
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新型コロナウイルスの感染拡大による業績悪化を理由に、都内のタクシー会社がおよそ600人の運転手などを解雇する方針を示したのに対し、運転手ら少なくとも70人余りが、近く解雇の無効などを求めて仮処分を申し立てることが分かりました。
都内を中心にタクシー事業を展開するロイヤルリムジングループは先週、グループ会社6社の従業員およそ600人を一斉に解雇する方針を明らかにしています。

そのグループ会社の1つ、「目黒自動車交通」の従業員でつくる労働組合によりますと、30代から70代までの少なくとも70人余りの運転手などが、一方的な解雇は不当だとして来週中にも東京地方裁判所に解雇の無効などを求める仮処分を申し立てることを決めたということです。

17日は申し立てに賛同する運転手らが組合を訪れ、必要な書類を提出していました。

代理人を務める木下徹郎弁護士は「これだけの人が仮処分を申し立てるということは、会社の解雇がいかに乱暴で、労働者の納得感が薄いものかを物語っている。すぐに食べるのにも困ってしまう人もいるので、できるだけ早く解決に導きたい」と話しています。
目黒自動車交通は「申立書を受け取っていないのでコメントできない」と話しています。

73歳運転手「失業給付は対象外 生活が不安」

仮処分の申し立てをする1人、笠松健市さん(73)は20年余りにわたってタクシーの運転手として働いてきましたが、先週、従業員を集めた集会で会社から解雇の方針を告げられました。

会社からは、売り上げが落ち込む中、感染のリスクがある仕事を命をかけてやるより、雇用保険から失業給付を受けたほうがいいと説明を受けたということです。

しかし、会社が利用できるとした失業給付は65歳未満が対象のため、73歳の笠松さんは利用できず、わずかな一時金しか支払われないことが、その後わかりました。

笠松さんはこれまで5万円ほどあった1日の売り上げが先月末からは1万円台まで落ち込み、解雇を告げられたあとはゼロになりました。

このままの状態が続けば、貯金を取り崩しすしかないと考えています。

笠松さんは「新型コロナウイルスの感染拡大の影響で給与は半分くらいになり、4月以降はさらに厳しい状況でした。そうしたさなかに、急きょ解雇されるということを聞き、信じられず最初はうそじゃないかと思いました。労使での話し合いもきちんとされていない中で、突然、解雇と言われ納得ができません。会社からは失業保険をもらったほうが手にするお金は多いという説明がありましたが、私は73歳のため一時金しか受け取ることができず、今後の生活が不安です」と話していました。

50代運転手「怒り収まらず 徹底的に戦う 」

50代の運転手は「経営者は従業員の生活を守る役割があるのに、むしろ従業員をないがしろにする対応で怒りが収まらず、絶対に許せません。ほかのタクシー会社も同じように経営が苦しくなる中、何とか頑張って従業員の雇用を守っている状況だと思います。突然、解雇というやり方がまかり通るのはおかしいので徹底的に戦っていきたい」と話していました。

労働問題NPO「安易にサインは避けて」

労働問題に取り組むNPO法人「POSSE」には、今月に入ってから「社員全員が一斉に解雇された」などといった相談が10件近く寄せられています。

中には、タクシー会社の一斉解雇が明らかになったあと、会社側から「7月になったら事業を再開するので、それまで失業給付で生活を維持してほしい」などと言われ、退職届に署名させられたケースもあるということです。

今野晴貴代表は、今後こうした事例が増えるおそれがあるとしたうえで、生活費として失業給付が受けられるといった説明をうのみにして労働者が解雇を安易に受け入れるのは危険だと指摘します。

今野さんは「失業給付は受けられる金額が人によって異なり、受け取れないケースもある。感染が拡大する中で再就職が厳しくなっているので、解雇をされると立場が非常に不安定になってしまう」と話していました。

そのうえで「経営者は非常に厳しい状況にあると思うが、解雇が広がっていくと社会全体が不安定になるので、国の政策や制度を最大限利用して雇用を維持してほしい。また、労働者は退職届を出すように求められても安易にサインするのは避け、考える時間を確保してほしい」と話しています。