苦境の中小零細企業 地域の信用金庫に融資の相談相次ぐ

苦境の中小零細企業 地域の信用金庫に融資の相談相次ぐ
新型コロナウイルスの感染拡大で大きな打撃を受けている中小零細企業を、資金面などで支えているのが地域の信用金庫です。東京都内の信用金庫には、連日、地域の中小零細企業から融資などの相談が相次いでいます。
東京 大田区にある「さわやか信用金庫」です。港区や大田区、台東区などにある合わせて1万6000社の中小零細企業を顧客としています。

その融資の窓口には、新型コロナウイルスの影響で、ことし2月半ばから相談が増え始め、その件数は今月半ばまでに4600件を超えたといいます。

融資を担当する小橋敏雄営業統括部長は「これまでに経験がない事態です。飲食業、観光業、さらに製造業まで幅広い業態に不安が広がっています」と打ち明けました。

相談内容で多いのが「新型コロナウイルスの影響で売り上げが激減した」という資金に関するものと、「中国から材料が入らない」などといった、いわゆるサプライチェーンに関するものです。

この信用金庫は当面の運転資金を融通するため、支店長が決裁できる最大500万円の融資と、利率を通常より抑えた融資の2つのプランを急きょ立ち上げました。すでに79社に融資したということですが、このまま感染拡大が続けば、さらに資金不足に陥る中小零細企業が急増するおそれがあります。

小橋営業統括部長は「終わりが見えませんが、地域とともに生きる信金として企業に1社でも多く事業を継続してもらえるよう、支援していきたい」と話していました。

ホテル「緊急の融資で安心できた」

信用金庫は取り引きのある企業に対して、みずから現場に足を運んで融資などの支援を進めています。

その1つ、台東区にあるホテルです。長年つきあいがあるというこのホテルは、新型コロナウイルスの影響で外国人観光客などが激減し、今月は客足が例年の1割にまで落ち込んでいます。

鈴木隆夫社長は先月中旬、宴会場やレストランの多くの予約がキャンセルされたことに危機感を持ち、信用金庫に融資の相談をしました。その結果、3日後に6か月分の融資などが受けられ、当面の資金をやりくりできるようになりました。

信用金庫はその後も支店長みずからホテルを訪れて、固定資産税の支払いの相談に乗ったり、コストの削減案を話し合ったりして支援を続けています。

鈴木社長は「支店長から緊急のプランで融資をいただいたので、安心しました。今後も頼りにさせていただきたいと思います」と話していました。

さわやか信用金庫の高橋支店長は「これまでのおつきあいから、収束後、必ず復活できると確信して、即座に融資を決めました。顔が見える関係という信金の強みを生かして、この苦境をともに乗り越えていきたいです」と話していました。

町工場「高度な技能 一度失われると再び育てるには何年も」

今回緊急融資を求めたなかには、製造業の中小零細企業も数多くありました。

東京 大田区で金属加工などを手がける町工場です。町工場によりますと、新型コロナウイルスの感染拡大で取り引き先の大手メーカーが中国に輸出できなくなりました。

その影響もあって、この町工場の納品先が減り売り上げは半分にまで落ち込んだということです。

この町工場のように部品の供給や組み立てを多くの企業でつながって分業する仕組みは、サプライチェーンと呼ばれています。この町工場は部品の調達は日本国内で行っているため、難を逃れたといいますが、中国などの海外に調達を依存している企業の中には今回、供給網が絶たれてしまい資金繰りに苦しんでいるところも少なくないということです。

松高智治社長は「下請けの仕事が、末端まで絶たれて厳しい状況になっている。中小零細企業の従業員は高度な技能を持っているが、一度、失われると再び育てるには何年もかかる。給付を含め緊急の資金繰りができるようにしてほしい」と話していました。

専門家「信用金庫のサポート問われる」

東京商工リサーチの原田三寛部長は「緊急事態宣言の対象が全国に拡大し、自治体の企業向けの相談窓口が混雑するなか、信用金庫には地元企業に寄り添う経営のホームドクターとしての役割が求められていると言える。今後、中小企業を取り巻く状況は、ますます厳しくなることが予想されるが、少しでも廃業する企業を減らすために、信用金庫がどのようにサポートしていくかが問われていると思う」と話していました。