新型コロナ感染 最期の別れの場にも影響 “おくりびと”の苦悩

新型コロナ感染 最期の別れの場にも影響 “おくりびと”の苦悩
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新型コロナウイルスは、最期の別れの場にも影響を及ぼしています。感染のおそれから、家族がご遺体に触れることも、直接声をかけることも難しくなっていて、亡くなった人を送った葬儀会社は「家族で故人を囲み、思い出を語り合う本来の姿が失われてしまう」と悩みを抱えています。
大阪の葬儀会社、公益社の山田雅史さん(42)は先月、新型コロナウイルスに感染して亡くなった高齢男性の葬儀を行いました。

ここでは感染して亡くなった人の葬儀の進め方を決めていて、家族やスタッフへの感染を防ぐため、ウイルスが付着した血液などを通さない「納体袋」に遺体を収め、消毒を施してお棺に納めてもらうよう病院に求めています。
お棺はすべての隙間をテープなどで目張りしたうえで、病院から直接、火葬場に持ち込んで火葬し、お骨を前に葬儀を行っています。

これまでは、ご遺体を清めて化粧を施し、お花やゆかりの品をお棺に入れて故人をしのぶ場を持てましたが、感染で亡くなった人の葬儀では、それが難しくなっています。

火葬場の中には、感染を防ぐため家族が火葬に立ち会うのを拒むところもあり、困惑する家族もいたということです。

山田さんは「家族が故人の体に触れることも声をかけることもできず、つらかっただろうと思います。みんなで故人を囲んで思い出を語り合うことは家族の心のケアにもつながりますが、そうした場が失われてしまう」と悩みを抱えています。

このため、火葬の前にはお棺の上に花を供え、霊きゅう車が火葬場に向かう際には自宅の前を経由するなど、家族の心情に配慮するようにしているということです。

葬儀にも影響が出ていて、遠方の親族や高齢者を呼ばず参列者を少なくしたり、会食を取りやめたりするケースもあるということです。

葬儀場では参列者の席や焼香を置く台の間隔を空け、葬儀でマスクを着用するのをためらう親族にも着用を呼びかけるポスターを掲示しています。
山田さんは「最期のお見送りの場は失いたくないからこそ、感染対策を取るとともに、家族には『ちゃんとお父さん、お母さんを送ったんだ』と実感してもらえるように、形は違っても揺るぎのないよう努めていきたい」と話していました。

遺体搬送や火葬の際の注意点は

厚生労働省は、新型コロナウイルスに感染して亡くなった人の遺体を搬送したり火葬したりする際に注意すべきことなどをまとめています。

それによりますと、新型コロナウイルスによって亡くなったり、その疑いがある人の遺体は、24時間以内に火葬することができるとしています。

遺体はウイルスが付着した血液などを通さない「納体袋」に密封されていれば特別の感染防止策は不要で、遺族などが遺体を搬送しても差し支えないとしています。

火葬の前に遺族などが遺体に触れたいと希望する場合は、手袋を着用するよう求めていて、遺体に触ったあとは手洗いやアルコール消毒が必要だとしています。

これについて、葬儀会社の業界団体からは、このとおりに行うのは現状では難しいという声が聞かれます。

大阪の葬儀会社、公益社の担当者は「疲れているご遺族は非常に免疫力が落ちているので、感染のリスクもあると思います。新型コロナウイルスはまだまだ解明されていない部分が多く、感染力も未知数のため、現段階で葬儀会社としては慎重に対応せざるをえないです」と話しています。