新型コロナ患者 全国103大学病院で受け入れ817床を確保

新型コロナ患者 全国103大学病院で受け入れ817床を確保
新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、大学病院でも患者の受け入れが進んでいます。これまでに全国103の大学病院で受け入れ態勢を整え、817床を確保していることが、国のまとめでわかりました。
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、文部科学省は今月9日、全国の大学病院長に対し新型コロナウイルスの感染患者をできるかぎり受け入れるよう通知を出しています。

文部科学省のまとめによりますと、全国に170ある大学病院のうち、14日の時点で103の病院が受け入れ態勢を整え、確保したベッド数は817床に上っています。

このうち重症患者に対応するベッドは233床となっています。

すでに72の病院が患者を受け入れていて、患者の数は累計で467人に上っています。

患者が急増している東京都内では22の大学病院が162床を確保しています。

しかし、大学病院で感染者を受け入れるのは簡単なことではありません。

大学病院では、高度な技術が求められる医療を提供する役割を担っていて、感染者を受け入れることで、がんや難病患者の治療が滞り、緊急性の低い病気であれば手術が中止されたり、延期されたりするケースも出始めています。

一方で、重症患者の治療には人工呼吸器やECMOなど大学病院の医療スタッフが持つ高度な医療技術が欠かせません。

日本医師会の釜萢敏常任理事は「今は平時ではないため、大学病院が持っている高度な医療技術や能力を新型コロナウイルスの治療にも生かしてほしい」と話しています。

大学病院 役割分担を明確に

一方で、新型コロナウイルスの感染患者を受け入れると、一般外来を縮小したり経費が掛かったりして、病院の経営に影響が出るケースも少なくありません。

新型コロナウイルスの患者を受け入れることによって、病院の収入にどれくらいの影響が出るのか。

NHKが入手した資料では、関東のある大学病院では、外来の縮小によって診察料が12億円余り減少し、別の大学病院では、マスクなどの防護具の経費だけで1200万円余りかかると試算されています。

大学病院の関係者は「今は大学病院でも経営が非常に大切なうえ、万が一、院内感染が起きると病院を閉じなくてはならなくなるおそれもあり、できれば受け入れたくないのが本音です」と話したうえで「大学病院は地域医療の最後の砦だと思うので、誰でも患者を受け入れるのではなく、重症な人だけを受け入れるなど、役割分担を明確にしてほしい」と話しています。

東京の大学病院の取り組み チーム医療

東京 三鷹市にある大学病院は、もともと感染症の指定医療機関ではありませんが、3月から院内に「発熱対応・コロナウイルス感染症チーム」を発足し、患者の治療にあたっています。

感染症科の医師を中心に、麻酔科や外科、それに救命救急などの15人の医師と、看護師や薬剤師、それに医療機器を担当する臨床工学士など15人の合わせて30人で構成されています。

このチームは万が一、医療スタッフで感染者が出てしまった場合でもカバーでき、本来の診療も可能な範囲で行えるような体制を維持するために立ち上げました。

感染者の受け入れにあたって、集中治療室に入っていた患者などを別の病棟に移動してもらいました。

こうして、人工呼吸器やECMOなどを使用しなければならない重症な患者にも対応できる病床を38床確保しました。

チームの立ち上げに携わった杏林大学病院呼吸器内科の石井晴之教授は「本来の大学病院は、高度な医療技術が必要な患者に医療を提供することが目的となっていますが、この感染症の治療で厳しい状況に置かれている地域の医療機関があり、それを支えないといけないという使命が大学病院にはあります。多くの医師が一緒に協力しあってチーム医療を行わなければ、なかなか立ち向かっていけない病気だと思います」と話しています。