WHO事務局長「米の影響を調査」ほか加盟国に資金拠出求める

WHO事務局長「米の影響を調査」ほか加盟国に資金拠出求める
WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は、アメリカのトランプ大統領がWHOに対する資金の拠出を一時的に停止する考えを明らかにしたことに遺憾の意を示し、「影響を調査しているところだ」と述べたうえで、今後ほかの加盟国などにさらなる資金の拠出を求め、医療態勢がぜい弱な国への支援を継続できるように努める考えを示しました。
これはWHOのテドロス事務局長が15日、スイスのジュネーブの本部で開いた定例の記者会見で述べたものです。

この中でテドロス事務局長は、トランプ大統領がWHOに対する資金の拠出を一時的に停止する考えを明らかにしたことについて、「決定を遺憾に思う。WHOはアメリカの国民や政府の協力によって、世界で最も貧しくぜい弱な多くの人たちの健康状態を改善できるように取り組んでいる」と述べました。

そして「アメリカによる資金の拠出がなくなることによる影響を調査しているところだ」と述べたうえで、今後ほかの加盟国などにさらなる資金の拠出を求め、医療態勢がぜい弱な国への支援を継続できるように努める考えを示しました。

トランプ大統領は、新型コロナウイルスへの対応について、「WHOの過ちによって多くの人が死亡した」と強く批判していますが、テドロス事務局長は「WHOの一連の対応は今後加盟国などによって調査される。改善すべき部分が明らかになり、今後学ぶべき教訓もあるだろう。しかし、今、集中すべきなのは、ウイルスの拡散を止め命を救うことだ」と述べ、今は感染拡大を防ぐことに力を尽くすべきだと訴えました。

WHOの予算は

WHOの予算は、各国が経済規模などに応じて義務づけられる「分担金」と、各国や財団などが独自に資金を提供する「任意の拠出金」に分けられています。

厚生労働省によりますと、このうち分担金の割合は2020年からの3年間で、アメリカが最も多く22%、次いで中国がおよそ12%、3位が日本でおよそ8.5%となっています。

またWHOによりますと、アメリカが2018年からの2年間に負担した、用途が定められている「任意の拠出金」は、合わせて5億5310万ドル、日本円で594億円余りで、加盟国や財団などによる、用途が定められている「任意の拠出金」の総額のおよそ15%を占め、最大となっています。

トランプ大統領が一時的に停止するとしたのが、「分担金」と「任意の拠出金」のどちらなのかは明らかになっていませんが、アメリカが拠出を停止することで、感染対策をめぐる国際協力に大きな影響が出ることが予想されます。

ホワイトハウス報道官は

トランプ大統領がWHOに対する資金の拠出を一時的に停止する考えを示したことについて、ホワイトハウスのマケナニー報道官は15日、ツイッターに政権の立場を投稿しました。

このなかでマケナニー報道官は、「コロナウイルスをめぐるWHOの誤った対応について検証が進められる間、トランプ大統領は資金を停止させるという大胆で断固たる措置をとった。勘違いしないでほしい。これはWHOに責任を押しつけているのではなく、中国に偏ったあり方について責任をとらせるということだ」としてトランプ大統領がみずからの責任を転嫁するためにWHOを攻撃していると批判されていることに反論しました。

フランス外務省は

トランプ大統領がWHOへの資金の拠出を一時的に停止する考えを示したことに対し、フランス外務省は、15日、声明を発表しました。

声明はWHOについて「今の危機に対処するうえで必要不可欠だ。科学的な情報を各国政府の間で速やかに共有し保健衛生上の対応を調整できる唯一の機関だ」としたうえでトランプ政権の発表に遺憾の意を示しています。

そのうえで、「WHOが活動を続け、組織そのものを強化していけるようヨーロッパ各国と支援する」としています。

ビル・ゲイツ氏は

WHOに対し、アメリカに次いで2番目に多い資金を出している慈善団体「ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団」を設立したビル・ゲイツ氏は、みずからのツイッターで、トランプ大統領の対応を批判しました。

アメリカの大手IT企業マイクロソフトの創業者で、世界有数の資産家のゲイツ氏は、トランプ大統領が14日、WHOへの資金の拠出を一時的に停止する考えを明らかにしたことに対し、「世界的な医療危機のさなかに、WHOへの資金の拠出を停止するのは危険だ」と批判しました。

そのうえで、「WHOは新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めをかけていて、その仕事が妨げられた場合、ほかの組織が代わりを務めることはできない。世界はいま、これまでにも増してWHOを必要としている」として、WHOが果たす役割の重要性を指摘しました。