「立山黒部アルペンルート」全線開通も観光客激減

「立山黒部アルペンルート」全線開通も観光客激減
富山県と長野県を結ぶ北アルプスの山岳観光ルート「立山黒部アルペンルート」が15日、全線で開通しました。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、観光名所の「雪の大谷」も、バスから降りて見学できなくなっていて、観光客は激減しています。
「立山黒部アルペンルート」は富山県立山町と長野県大町市をロープウエーやケーブルカーなどで結ぶ山岳観光ルートで、15日、全線で開通しました。

ことしはケーブルカーやバスの車内などの消毒を徹底し、車内や客が並ぶ列の間隔を広く取っているほか、いつもは歩いて楽しむことができる巨大な雪の壁「雪の大谷」も、バスから降りずに車窓から見学する形にしています。

全線開通初日の15日、例年は多くの観光客でにぎわう標高2450メートルの室堂ターミナルでは、観光客の姿はまばらで午前10時ごろに到着したバスからは、10人ほどが降り立ちました。

新潟県から訪れたという40代の会社員の男性は「去年も来ましたが、ことしは外国人の姿が全く見えないので驚きました。感染予防でマスクを持参して来ました。手洗いなど対策を心がけたい」と話していました。

アルペンルートを運営する「立山黒部貫光」によりますと、ことしは予約のキャンセルが相次ぎ、今月は団体の予約が1件も入っていないということで「観光客の減少はやむを得ないと考えている。国や県などと緊密に連携して、訪れる人の安全に配慮しながら、運営していきたい」とコメントしています。

海外からの観光客も激減 ホテルは大打撃

立山黒部アルペンルートを訪れる観光客を多く受け入れてきた、富山駅周辺のホテルも打撃を受けています。

富山駅近くの「ホテルグランテラス富山」は、部屋から見える立山連峰の雄大な眺めが人気で、例年この時期は、台湾や東南アジアなどから訪れた多くの観光客が、このホテルを利用します。

ホテルによりますと去年のこの時期は、宿泊客のおよそ6割が海外の観光客でしたが、ことしは新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、2月から先月にかけて予約のキャンセルが相次ぎ、今月と来月は外国人観光客の予約は1件も入っていないということです。

客室全体の稼働率も、去年は平均で7割ほどでしたが、ことしに入ってからは3割ほどにまで落ち込んでいて、このままの状況が続けば、宿泊による売り上げも去年の3割ほどになる見込みだということです。

ホテルの湯上均副総支配人は「今は、ふだん掃除が行き届かない所の清掃や、従業員の勉強会などに力を入れている。感染拡大の防止のため、利用者の減少はしかたがないことだと受け止めているが、早く終息することを願うしかない」と話していました。

ふもとの「大町温泉郷」では

立山黒部アルペンルートのふもとの大町市にある「大町温泉郷」では、地元の観光協会に所属する11の宿泊施設のうち、すでに6つの施設が休館しているということです。

温泉郷にあるホテルの一つ「アルペンルートホテル」は、休館はしていないものの、宿泊予約のキャンセルが続いているということです。

ホテルでは、5月いっぱいまで埋まっていた台湾からのツアー客、およそ2000人分の予約がすべてキャンセルとなったうえ、5月の大型連休などに入っていた国内の宿泊客の予約もキャンセルになりました。

4月と5月の2か月間のキャンセル分だけで、年間の売り上げの5分の1が減る見込みで、さらに7月や8月の夏の観光シーズンの予約も今のところ、ほとんど入っていないということです。

売り上げが回復する見通しが立たず、今後の経営に大きな不安を感じていると言います。

ホテルを経営する犬飼凱雄さん(78)は「1か月前までは回復すると期待していましたが、今となっては、この先しばらく回復の見通しが立たず不安がとても大きいです。ホテルの経営だけでなく従業員の雇用にも関わるので行政には休業の補償などを、もっと支援してほしい」と話していました。