「コロナ運ぶな!」ドライバーに心ない暴言も

「コロナ運ぶな!」ドライバーに心ない暴言も
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緊急事態宣言から1週間、スーパーにはいつものように食べ物や飲み物が並び、宅配便もほぼふだん通り。それを支えてくれているのがトラックの運転手たちです。ところが、トラック運転手たちが配送先などで心ない暴言や対応をされるケースが相次いでいるというのです。

トラックが運ぶのはコロナじゃない

「トラックでコロナを持ち込んでくるな。国が自粛って言ってるのが分からないのか!」

話を聞かせてもらったのは、都内の運送会社で働く30代男性のトラック運転手です。関東地方の郊外にあるスーパーで運んできた段ボールをトラックから降ろしていると、近くをとおりかかった人が東京と記されたナンバーを見るなり、こんな声をぶつけてきたといいます。

運んできた段ボールの中には、レトルトカレーや缶詰といった食品がたくさん入っていました。

みんなが必要な食料品を運んできただけなのに…。

込み上げてきた思いをぐっとこらえ、男性はその人に「すみません」と答えたそうです。

男性は、その時のことについて次のように話していました。

「物流を途絶えさせてはいけないと使命感を持ってやっていたのに、悔しくて悔しくて」

よく聞くと、男性は人一倍、感染対策に気をつかっていました。マスクは常に着用し、アルコールの消毒液やウエットティッシュも持ち歩いて車のハンドルやドアの取っ手部分、荷物を載せて運ぶ台車の手すり部分もこまめに消毒しているのだそうです。

男性はその理由についてこう話しています。

「お客様にうつしてもいけないし、自分が感染してしまったら会社に迷惑かけるし、かなり気をつけてはいます。自分だって外出自粛できるならしたいです。万が一、感染してしまったらと思い、家には小さな子どもがいるので、ここ数か月は家族と離れて暮らしているんです」

アルコールスプレー顔にかけないで

次に話を聞いたのは、都内で通販の商品などを運ぶ20代女性のトラック運転手です。

荷物を届けるため、ある家に出向き、インターホンを鳴らしたところ、出てきたのは70代くらいの高齢の女性でした。

女性が「こちらお荷物です」と言いかけた時、突然スプレーのようなもので顔や上半身に何かを吹きかけられました。よく見ると、アルコール消毒液のスプレーでした。

女性は、そのときのことをこう話してくれました。

「アルコールが目に入ってしみて、とても痛かったんです。お客様も悪気はなかったと思う、消毒したかったんだとは思うけど、びっくりしたし、やはりショックでした。その後、特に謝られることもなかったんです。直接受け渡しをせずに、インターホン越しで言ってもらえれば、玄関前に置いて帰ることだってできるんです。感染が不安ならそういう方法をとってほしいです」

外出自粛 支えるドライバーたち

多くの運転手の人たちに話を聞かせてもらうと、こうした心ない対応をする人は一部で、多くの人は「ありがとう」などと感謝のことばをかけてくれるといいます。そんなとき、改めて「頑張ろう」と思えるのだといいます。

取材したある運転手の1人は「東日本大震災の時、モノがないつらさを実感しているので、あの状況を繰り返したくない、という思いが強いです」とも話してくれました。

緊急事態宣言から1週間。私たちがふだん通り、買い物などができているのはトラック運転手など多くの人たちの支えがあるからだと思います。

こういう時だからこそ、改めて現場で働く人たちの頑張りに思いをめぐらせてみませんか。