外出自粛 今ほしいのは“秘密基地”

外出自粛 今ほしいのは“秘密基地”
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための外出の自粛が続いています。日中、離れて過ごしていた家族が休校や在宅勤務で一日中、顔をつきあわせる環境でストレスを感じるという人も少なくないと思います。子どもも大人も1人になれる空間や時間を与えてくれるもの。それが、テントです。
(ネットワーク報道部 記者 大石理恵 大窪奈緒子)

夕飯も寝るのもテントで

埼玉県で幼稚園と小学校に通う2人の男の子の母親は、自宅での生活が続く中、子どもたちに少しでも楽しんでもらおうと今月12日、ベランダにテントを設置しました。
子どもたちは、テントの中におもちゃや毛布、それに非常用リュックまで持ち込み、「秘密基地」気分を味わっていたそうです。
2人はテントをすっかり気に入って、夕飯をテントの中で食べ、夜は家の中にテントを移動してテントの中で就寝したそうです。
母親
「2人とも夢中になりおもちゃや食べ物を持ち込んで楽しんでいたのでよかったです。私はテントの外で好きなことができ、少しの間自由な時間がもてました」

売り上げ3倍

実際、ホームセンターに問い合わせてみると、新型コロナウイルスの影響で、テントは売り上げを伸ばしているようです。
全国で670以上の店舗を運営するDCMホールディングスでは、3月末と4月上旬で比較すると、テントの売り上げはおよそ3倍に伸びているといいます。組み立てる本格的なタイプよりも、ワンタッチで広げることができる簡易的な「ポップアップテント」が売れているようです。
DCMホールディングス広報室 鳴海友絵さん
「通常は屋外のレジャーシーンで使う人が多いですが、コロナウイルスの感染の拡大や外出の自粛でいまは自宅の中やベランダ、庭で使うという人が多いです」

大人向け“基地”も

一方、在宅勤務が増えるなか、SNSで話題を集めているのがこちらの商品。いわば、大人向けの“基地”です。
パソコン周辺機器などを販売する岡山市の会社「サンワサプライ」が今月からネット上で販売を始めたところ、問い合わせが増えているといいます。
担当者は「災害時の避難所でのプライバシーテントとしてや、カメラ撮影の暗室として使うこともできますが、いまは、在宅勤務で集中して仕事をしたい人に受け入れられていると思います」と話しています。

やさしくなれるテント

テントを設置したことで兄弟げんかの回数が減りけんかの時間も短くなったという人がいます。
東京都に住む30代の女性は、自粛により自宅での育児が続く中、小学校1年生になったばかりの6歳の長男と4歳の次男の激しい兄弟げんかに日々、悩まされていました。
女性
「休園や休校で家にこもる生活が続く中、兄弟げんかがすごく増えて本当に困っていました。お互いに譲り合うなどの気持ちの整理がつかずに、ぶつかりあうことが多く、時には手が出てしまい、泣いたりわめいたり叫んだりしています。私が口で注意してもなかなかけんかを止められず、最近では仲裁に入ることに疲れてしまっていました」
そこで女性は今月10日、子どもたちが赤ちゃんのころに使っていた遊具のテントを引っ張り出し、「やさしくなれるテント」という掲示とともに自宅リビングに設置しました。
色画用紙の掲示には手書きで
▼ここには1人しかはいれません
▼おこったり、ないたりしたら、はいります
▼でてくると、ふしぎなことに、とてもやさしくなっています
▼ふたりではいりたいときは、じゅんばんです、と4つの「おやくそく」を記入しました。

出てくるときはニコニコに

テントを見ると2人の子どもたちは大喜び。女性と一緒に4つの「おやくそく」を大きな声で読み上げました。
テントと「おやくそく」の効果は絶大だったようで、それからは、泣きわめいてどうしようもなくなると、子どもたちは自分からテントに入り、気持ちを落ち着かせてから出てくることができるようになったそうです。
女性
「子どもたちにとって、クールダウンできる場所になっていると感じます。私に口で仲裁に入られるよりも“テントに入って落ち着く”という行動のほうが子どもにとってわかりやすくていいのかもしれません」
ただ一方で、長期化する自粛生活にこの女性は、次のようにも話しています。
女性
「子どもたちにはせめて少しでも楽しく毎日を感じてほしいと生活を工夫していますが、できる工夫にも限界があります。母親としては先が見えず本当に不安で苦しいです。近くに親戚など、頼れる人もいないため気も抜けず、いつまでこの生活が続くのかと絶望を感じています」

「1人の空間 大切」

非常事態の今、なぜ人はテントに入りたがるのでしょうか。
臨床コミュニティー心理学が専門で心のケアに詳しい九州産業大学の窪田由紀教授は、思うように外出できない中で、子どもも大人もプライベートな空間を持つのは大切なことだと言います。
窪田教授
「日本の住環境では家族がそれぞれ個室を持つことは難しく、常にお互いの姿が見える状態で長時間過ごすとどうしてもストレスがたまってしまいます。そのため、1人になれる空間を確保するのはとても大事です。テントの場合、非日常感も味わえて二重の意味で効果的だと思います。手作りの段ボールハウスとかでもいいと思います」
ウイルスへの恐怖や生活の不安と隣り合わせで、心が沈みがちないま。私たちはどのように心の元気を保っていけばいいのでしょうか。
窪田教授
「コロナウイルスに対して過剰な不安や恐怖を抱いてしまうと偏見や差別といった別の問題も起きてしまいます。それを防ぐためにも、今できないことではなく、今できることを考えることが大切です。例えば、これまで時間がなくてできなかった引き出しの片付けをやってみるとか庭に花を植えてみるとか、小さくてもいいので目に見えることをやって達成感を得られれば、心が落ち着くと思います」