アジア新興国で通貨安 ドル確保の動き強まる 新型コロナ影響

アジア新興国で通貨安 ドル確保の動き強まる 新型コロナ影響
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて世界の金融市場が動揺する中、基軸通貨のドルを手元に確保しておこうと、新興国の通貨を売ってドルを買う動きが強まっています。このため新興国の通貨安が急速に進み、経済の不安定要因として懸念されています。
このうち、インドネシアの通貨ルピアは、先月には一時ドルに対して、およそ16%下落し、アジアが通貨危機に見舞われていた1998年以来の安値となりました。その後、いくぶん買い戻されましたが、ことしに入ってから13日までに、11.3%の下落となっています。

またインドのルピーはおよそ6.6%下落し、最安値の水準となっています。

このほかタイのバーツが8.5%、マレーシアのリンギットが5.3%、それぞれ下落しています。

このようにアジアの新興国では、多額の経常赤字や対外債務を抱えるなど、経済基盤の弱い国を中心にドルの投資資金が流出し、外国為替市場では急速な通貨安が進んでいます。

こうした事態を受けて、アメリカのFRB・連邦準備制度理事会や日銀など主要な中央銀行が協調してドル資金を供給するなど、金融市場の動揺を抑えようと、対策を強化しています。

新興国からの資金流出は11兆円 IMF

ワシントンに本部があるIMF=国際通貨基金は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で金融市場が動揺する中、投資家がドル資金を確保するために新興国市場から大量の資金を引き揚げたとして、警鐘を鳴らしています。

これはIMFのトップのゲオルギエワ専務理事が今月9日の演説で明らかにしたものです。

この中で、「新興国市場からの資本流出の規模がこの2か月で1000億ドルにのぼり、2008年の金融危機と比べて、3倍以上になっている」と述べ、投資家がドル資金を確保するため、新興国市場から日本円で11兆円もの資金を短期間に引き揚げたとして、警鐘を鳴らしています。

そのうえで「新興国や発展途上国はみずからの力では必要な資金の一部しかカバーできていないため、緊急に援助を必要としている」と述べ、新興国などへの資金支援を強化すると強調しています。