「子どもに手をあげた」親からの相談相次ぐ 名古屋のNPO

「子どもに手をあげた」親からの相談相次ぐ 名古屋のNPO
新型コロナウイルスの感染拡大で、外出自粛や学校の休校が続き、親子が自宅で過ごす時間が増える中、児童虐待防止に取り組む団体には、ストレスなどから「子どもに手をあげてしまった」といった親からの相談が相次いでいて、団体では虐待のリスクが高まっているとして警戒を強めています。
名古屋市のNPO「CAPNA 子どもの虐待防止ネットワーク・あいち」には、学校の休校や外出自粛の要請が始まった先月、去年の同じ月より2割近く多い196件の相談が寄せられました。

相談のほとんどは全国の子育て中の親たちからのもので、「一時保育が使えなくなり、精神的に限界だ」とか「休みで家にいる子どもに暴言を口にしてしまう」、「子どもに手を上げてしまった」などといった相談が相次いでいるということです。

相談からは新型コロナウイルスの感染拡大で外出もままならない中、子どもと長時間過ごしている親が心理的なストレスを抱えていることがうかがわれるということです。

NPOでは「児童虐待のリスクが高まっている」として、今後も相談体制を維持することにしていて、水野真由専務理事は「事態の長期化が予想され、子どもだけでなく親への支援が必要な状況だ。相談機関があることを知ってほしい」と話しています。

母親「相談できる場が少ない」

関西地方に住む30代の女性は、3人の小学生の子どもが臨時休校のため学校に通うことができず、1日のほとんどの時間を家の中で一緒に過ごしているといいます。

女性は「子どもたちが学校に行けないので、学習面とか友達との関係がすごく心配だったり、コロナがいつ収束して普通の生活に戻れるのか分からないという不安があります」と今の心境を明かしました。

また、子どもたちがささいなことでけんかを繰り返すことに精神的なストレスを感じているといい、「外に出かけられない子どもたちにもストレスがあって、一度泣いたら、すぐには泣き止まないし、注意をしたら、生意気なことばで言い返してきます。学習面で遅れが出てしまうことへの不安もあって、イライラしてしまいます」と話しました。

女性は「頼れる人がいないし、気分転換もできずストレスがたまる一方です。絶対にいけないことだと思いますが、子どもに手が出てしまう気持ちもすごくよく分かります。ふだん会っている友人とも集まることは避けているので相談できる場がすごく少ないです」とストレスを抱えながら孤立していくことへの不安な心情を語っていました。

専門家「親は心に覚悟を持って行動を」

子どものころ父親から虐待を受けた経験があり、現在、「児童虐待防止機構オレンジCAPO」の理事長として、子育てに悩む親への精神的サポートに取り組んでいる島田妙子さんは、親が虐待をしないための「心のマネージメント術」を講演活動や動画を通じて紹介しています。

島田さんは子どもにカッとなった時は怒りを無理に押さえつけず、深呼吸や背伸びをして、まず感情をやり過ごすこと、気持ちがおさまらない時には家事をしたり、音楽を聴いたりして、その場を離れてみることも効果があるとしています。

また、外出を控えなければならない今のような状況でも一人で抱え込まず、電話やSNSを通じて、友人などと気持ちを分かち合うことが、心の余裕を保つために大切だということです。

島田さんは「コロナの件がある中で、不安とか悲しみとか恐怖とか怒りを感じてしまうのは正常なことで、ふだんなら腹が立たないことで腹が立ってしまう時期だと思う。ただその怒りの感情が、虐待に発展してしまえば子どもの心の傷は本当に深くなる。大きなストレスを抱えた今のような状況だからこそ、親はどならない、たたかないと、心に覚悟を持って行動してほしい」と話しています。

国連が警鐘 国内でも虐待増に懸念の声も

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、各国で外出制限が行われ、人々が家で過ごす時間が増える中、国連はDV=ドメスティックバイオレンスが急増しているとして、警鐘を鳴らしているほか、国内でも今後、家庭内の暴力や児童虐待が増えるのではないかと懸念する声が上がっています。

厚生労働省は先月の学校の一斉休校に合わせて、支援の対象になっている子どもの家庭については、休校の期間中も児童相談所や学校が連携して状況把握に努めるよう、全国の自治体に通知を出しています。

また、緊急事態宣言が出されている地域でも児童虐待に関する通告や相談は、通常どおり受け付けることにしています。

子どもの福祉や虐待などに詳しい東京通信大学の才村純教授は「学校が休校になることで虐待の早期発見は難しくなる。民生委員や近隣住民など、周囲の大人が協力して子どもの変化にアンテナを張ってほしい」と話しています。