感染拡大でバイト収入減少 大学生など経済的不安4割に

感染拡大でバイト収入減少 大学生など経済的不安4割に
新型コロナウイルスの感染拡大で大学生などのおよそ4割がアルバイトによる収入が減り経済的な不安を訴えていることが、学生団体のアンケートで分かりました。
アンケートは、奨学金制度などの改善を目指す学生団体、「高等教育無償化プロジェクトFREE」が先月8日から、今月10日まで行い、大学生や大学院生など149人が回答しました。

それによりますと、ウイルスの感染拡大に伴いアルバイトの収入が減少したと回答した人が37.6%、収入が減ったことで学費が確保できないと回答した人が6.7%で、経済的な影響を受けている学生が合わせて44.3%に上ったということです。

自由記述では「両親から仕送りをもらっておらず、奨学金で生活費をみずから支払っているため学生といえど収入がないと今後も含め生活が困難になる」とか、「バイトがなくなり学費の支払いに不安がある。親の仕事にも影響が出ていて(大学を)続けられないかもしれない」などといった切実な訴えがつづられています。

団体は、「アルバイトが無くなれば大学で学ぶ機会を失う人も出てくる。困っている学生はたくさんいるので、一人一人の実態に即した支援が必要だ」と話していました。

1日の食費 500円ほどに抑える学生も

新型コロナウイルスの感染拡大でアルバイト先の業績が悪化し、生活に影響が出ている学生もいます。

浜松市の大学に通う米田凌さん(22)は親からの仕送りの5万円と月に7万円ほどをアルバイトで稼いで生活してきました。
しかし、ことし2月からアルバイト先の居酒屋の仕事が減りはじめ、先月は2日しか仕事がなく、収入は2万円にまで減りました。
このため、1日の食費を500円ほどに抑えなければならず、今は即席ラーメンやレトルト食品を食べてしのいでいるということです。

国はウイルスの感染拡大を受け、今月から雇用を維持するための助成金を拡充し、企業がアルバイトに休業手当を支払った場合も費用の一部を助成することにして利用を促していますが、アルバイト先からは休業手当は出せないと言われ、仕事が減った分の補償はされていないということです。

米田さんは来年、大学院に進学しようと考えていましたが、このままでは入学金すらためられないのではないかと不安を感じています。

米田さんは、「お金のやりくりがぎりぎりの状態で、それがいつまで続くのか、いつまで耐えられるのか分かりません。大学院も諦めたくはないけれど、今よりもひどい状況になったら就職しなければならず、先行きが見えないので不安です」と話していました。

年々厳しくなる学生の生活環境

大学生をめぐる生活環境は、家庭の収入の減少や学費の値上げなどを背景に年々厳しくなっています。

厚生労働省によりますと、一世帯当たりの平均所得は、平成元年は566万7000円でしたが、平成29年度は551万6000円で、15万円余り減っています。

一方、大学の学費は上がり続けています。
国立大学の年間の授業料を国が定める標準額でみますと、平成元年度は33万9600円でしたが、今年度は53万5800円とおよそ20万円増えています。
また、私立大学は平成元年度は平均で57万584円でしたが、平成30年度は90万円4146円で30万円以上増えました。

文部科学省によりますと、物価上昇に加え学習環境を整えるためのパソコンなどのICT機器の導入などコストの上昇が主な原因で、今後も学費の上昇傾向は続くとみられるということです。

学生団体のアンケートでは回答したおよそ8700人のうちアルバイトで得た収入を生活費に充てている学生が5割に上っています。

専門家「雇い主は制度使ってバイト学生に補償を」

アルバイトの労働問題に詳しい指宿昭一弁護士は、「現在は多くの学生がアルバイトを生活や学費のため必要不可欠なものと位置づけていて、無ければ生活できないし、学業を続けられない人も多く、補償が行き渡るようにすることはとても大事だ。ただし、活用できる助成金制度を知らなかったり、知っていても手続きが面倒でやらなかったりする会社が多いので、結果として補償されていないケースが多い」と指摘しました。

そのうえで、「飲食店はふだんからアルバイトに頼って経営しているわけで、こういう時にアルバイトの生活を守ることはとても大切なことだ。中小企業であれば、解雇を行わなければ休業手当の90%が雇用調整助成金で支払われるので、きちんと制度を使って、補償すべきだ」と話していました。