新型コロナウイルス 欧米で行動履歴記録にアプリ等活用の動き

新型コロナウイルス 欧米で行動履歴記録にアプリ等活用の動き
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、欧米やアジアの国々では行動履歴を記録するスマートフォンのアプリや、感染者や感染の疑いがある人がいる地域を示すインターネットのサイトなどが広く活用されています。

イギリスでは

イギリスのロンドン大学キングスカレッジなどが中心となって開発した「COVID SymptomTracker」は、イギリス国内での感染の広がりを調べるためのアプリで、これまでに210万人以上が登録しています。

利用者ははじめに性別、生年月日、身長、体重、それに自宅の郵便番号などを登録します。その後は毎日、発熱やけん怠感があるかや、新型コロナウイルスの検査を受けたかどうかなどを尋ねる簡単なアンケートに回答します。

集められたデータは、大学と政府の研究機関が共同で分析し、どの地域で感染が広がっているか地図上で確認できます。

このほか、データを活用してウイルスの実態を把握する研究も進められていて、ウイルスに感染すると発熱よりも、においや味がしなくなる症状が多く現れるという分析が導き出されました。

アメリカでは

アメリカでは、スマートフォンのアプリと専用の体温計を使って発熱の症状がある人を調べることで、新型コロナウイルスの感染拡大の傾向をいち早く把握できるのではないかと注目されています。

▽アメリカのITベンチャー企業、「キンサ」社とオレゴン州立大学が開設している「ヘルスウェザー」というウェブサイトは、「キンサ」社が開発したアプリと専用の体温計を使って全米100万人以上の体温を集めています。
インフルエンザの流行を検知するための研究として始められましたが、新型コロナウイルスの感染拡大の傾向もいち早く把握できる可能性があるとして注目されています。
ウェブサイトでは全米すべての州の郡ごとに、体温が平熱より高い人の割合などを見ることができます。
全米で最も感染者が多いニューヨーク州では平年に比べて発熱している人が多い傾向が3月上旬から見られたほか、患者数が急増しているフロリダ州ではニューヨーク州より1週間ほど遅れて発熱している人の割合が増えていることが分かります。
研究を行っているオレゴン州立大学のベンジャミン・ディエル准教授は「新型コロナウイルスは未知のことが多く、体温との関連が科学的に証明されたわけではないが、保健当局はこの体温データを早期警戒のサインとして利用できるのではないか」と話しています。

▽アメリカのハーバード大学やボストン小児病院などが運営するウェブサイト「COVIDNEAR YOU」では、新型コロナウイルスの感染者がアメリカ国内のどの地域にいるか、誰でも地図上で確認できます。
利用者は自分の年齢や郵便番号などを入力した上で、せきや発熱などの症状があるか、さらに新型コロナウイルスの検査を受けたかやその結果を報告します。
集められたデータは大手IT企業グーグルが運営する「グーグルマップ」に示され、郵便番号が同じ地域ごとに感染者または感染の疑いのある人がいるかが分かるようになっています。

▽アメリカのマサチューセッツ工科大学などが開発したアプリ「セーフパス」は日本語で「安全な道」という意味です。
ユーザーの過去4週間の行動が記録され、新型コロナウイルスへの感染が確認された人がアプリを通じて保健当局に自分の行動履歴を提供すれば、当局は個人の特定につながる情報を取り除いた上でその行動履歴を公開します。
ほかのユーザーは過去に感染者と同じ場所にいて濃厚接触者となった可能性がある場合、アプリを通じて知らされる仕組みです。
一方で、感染者が保健当局への行動履歴の提供に同意する必要があるほか、感染者数が増えると当局の追跡調査が追いつかずアプリでの情報の更新が遅くなってしまうという課題もあります。

中国では

中国では、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、ITを活用して管理するさまざまな取り組みが行われています。

このうち大手通信3社は、スマートフォンの電波情報をもとに、利用者の行動履歴を確認できるサービスを提供しています。
スマートフォンを、オフィスビルや飲食店の入り口などに掲示されたQRコードにかざすと、利用者が過去14日間に訪れた都市の名前が表示され、感染が広がっている地域に行っていないかどうか確認できます。
また、みずからの健康状態を証明する「健康コード」と呼ばれるシステムが各地で導入されています。
新型コロナウイルスの感染リスクを評価するもので、専用のアプリを通じて申請すると当局のデータベースと照合し、その人がこれまで感染したことがあるかや家族に感染者がいるかといった情報に基づいてリスクが高い順に「赤」「黄」「緑」の3段階に分けられます。
そして、バスに乗ったり建物に入ったりする際、スマートフォンをQRコードにかざすと、その人の感染リスクが表示される仕組みです。

韓国では

韓国では、新型コロナウイルスの感染者の行動履歴を地図上で確認できる「コロナマップ」というサイトが広く使われています。
大学生が開発したもので、政府の発表情報などをもとに、
▼感染者が24時間以内に滞在した場所に赤、
▼4日以内に滞在した場所に黄色い印をつけるなどしていて、利用者は自分が濃厚接触した可能性があるかどうか確認できます。
また、韓国政府は、感染者と接触するなどして自宅に隔離された人たちの状況を追跡するため「自家隔離者安全保護」というアプリを使っています。
アプリを通じて、37度5分以上の熱がないかなど、健康状態を入力してもらうほか、GPSの位置情報で自宅にとどまっているかを確認することができます。
ただ韓国メディアによりますと、スマートフォンを自宅に置いたまま外出するケースもあり、新たな対策を求める声もあがっています。
韓国ではこのほかにもアプリの活用が進んでいて、「ネイバーマップ」という民間のアプリは、薬局ごとのマスクの在庫を地図上に示すサービスを提供しています。

シンガポールでは

シンガポール政府は、新型コロナウイルスの感染者と濃厚接触した人を特定するため、無料のアプリを開発して先月から運用を始め、利用者はすでに100万人を超えているということです。
「TraceTogether」と名付けられたこのアプリは、スマートフォンにダウンロードし電話番号を登録するだけで使うことができます。
同じアプリの利用者が半径2メートル以内に30分間以上いた場合、短距離通信のBluetoothで検知し、濃厚接触の可能性があるとして記録します。
そして、新型コロナウイルスへの感染が確認された利用者がアプリに記録された行動履歴の提供に同意すれば、政府の担当者が、濃厚接触の可能性がある人たちに電話で連絡する仕組みです。
アプリ内の行動履歴の保管期限は21日間で、それより前の情報は自動的に削除されるということです。