悪質“ファクタリング” 高額手数料を請求 相談急増

悪質“ファクタリング” 高額手数料を請求 相談急増
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新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、中小企業の資金繰りが厳しくなる中、取引先への売掛債権を現金化して当座の運転資金を調達する、「ファクタリング」と呼ばれる金融サービスを利用する企業が急増しています。しかし、ファクタリング業者の中には、年利に換算すると数百%にあたる高額の手数料を請求するところもあり、専門家は「法のグレーゾーンの中で実質的にはヤミ金融と変わらない悪質な業者も多く、国が適正な運営指針を示す必要がある」と指摘しています。
「ファクタリング」は、中小企業などが取引先から代金を受け取る権利=売掛債権を業者に譲渡する代わりに、債権の額面から手数料を差し引いた現金を早く受け取ることができる金融サービスです。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、中小企業の資金繰りが厳しくなる中、新たにファクタリングのサービスを始める金融会社が増えていて、このうち東京 港区の大手信用保証会社には、先月のサービス開始から当座の運転資金を求める申し込みが殺到し、この1か月間の申込件数はおよそ80件に上っているということです。

一方、ファクタリングは契約上、「債権の譲渡」で金銭の貸し借りにはあたらないため、原則として貸金業法や利息制限法などの規制の対象になっていません。

このため貸金業などの登録がなくても参入でき、SNS上には「売掛金を即日現金化」などと勧誘する業者の投稿が相次いでいます。

しかし、年利に換算すると法律の上限を大きく超える数百%にあたる高額な手数料を請求する業者も多く、都内の弁護士事務所には先月中旬以降、30件以上の相談が寄せられているということです。

ファクタリングの問題に詳しい井上裕貴弁護士は「法のグレーゾーンの中で、実質的にはヤミ金融と変わらない非常に高い手数料を取っている悪質な業者も多いが、新型コロナウイルスの感染拡大によって、こうした業者に頼らざるをえない企業が増えている。国はファクタリング業者の適正な運営指針を示す必要がある」と指摘しています。

ファクタリングの仕組み

中小企業が取引先に商品を納入してから、実際に代金の支払いを受けるまでには時間差があるため、売掛債権をファクタリング業者に譲渡することで、企業側は通常より早く当座の運転資金を手にすることができる仕組みです。

一方、ファクタリング業者は、取引先から売掛債権の代金を回収すれば、中小企業側から差し引いた手数料分が利益になります。

しかし、売掛債権を譲渡したことが取引先などに知られると企業の信用に関わるとして、本来、ファクタリング業者が行うはずの債権回収を中小企業側が代行し、実際には業者側と企業側だけで資金をやり取りする「2者間ファクタリング」と呼ばれる方法も広がっています。

業者の中には、年利に換算すると法律の上限を大きく超える、数百%にあたる高額な手数料を請求するケースも相次いでいますが、ファクタリングは契約上、「債権の譲渡」で金銭の貸し借りにはあたらないため、原則として貸金業法や利息制限法などの規制の対象になっていません。

ファクタリングを利用する中小企業が急増していることについて、金融業者でつくる全国事業者金融協会の高木秀男副会長は「政府の緊急対応策である保証付きの融資が実際に実行されるまでには、申し込んでから2か月くらいかかるため、すぐに当座の資金を確保しなければ中小企業の資金繰りは持たない状況になっている」と話しています。

また、「2者間ファクタリングは実質的には売掛債権を担保にした高利な貸し付けでヤミ金融と変わらないが、ファクタリングには法律の規制がなく、元ヤミ金業者が大手をふるって商売できる状況になっている」と指摘しています。

建設業者「背に腹は代えられず」

「ファクタリング」で、運転資金を調達したという関東地方の建設業者は、ことし2月以降、新型コロナウイルスの影響で、予定していた複数の工事がすべて中止や延期になり、資金繰りに行き詰まったということです。

このため政府系金融機関から融資を受けようとしましたが、審査が通らなかったため、ファクタリング業者を利用することになったといいます。

建設業者は、額面がおよそ850万円の売掛債権をファクタリングで現金化し、当座の運転資金を確保することができましたが、手数料として債権の20%にあたる、およそ150万円を差し引かれ、実際に受け取った現金は700万円でした。

手数料を年利に換算すると240%になりますが、事業を継続するためには、ファクタリングを頼らざるを得なかったといいます。

また、売掛債権の回収はファクタリング業者ではなく、建設業者が代行して行う「2者間ファクタリング」と呼ばれる契約になっていました。

しかし、取引先の経営状況も悪化していたため期日までに債権を回収できず、さらに別の債権をファクタリングして資金を調達する自転車操業の状況に陥っているということです。

建設業者は「金融機関からは融資を受けられず、会社を潰すわけにはいかないので、いちばん、てっとり早く資金を調達できるファクタリングに行き着いてしまった。手数料の額を聞いたときには『正直、返せるのかな』と思ったが、従業員のことを考えると背に腹は代えられなかった。事業継続のためには、また、ファクタリングを頼らなければならないのが実情で、現実的な資金繰りはそろそろ限界を迎えている」と話しています。

新型コロナウイルスの影響で申し込みが殺到

東京 港区にある大手信用保証会社「イー・ギャランティ」は、新型コロナウイルスの影響で資金繰りが厳しくなっている中小企業を支援するため、先月から新たに「ファクタリング」のサービスを始めました。

この会社は、ファクタリングの「手数料」の上限を売掛債権の0.5%までにおさえていて、年利に換算すると6%になります。

ただ、手数料が比較的安くても、売掛債権の現金化は「利益の先食い」でリスクを伴うため、ファクタリングは「最終手段」だとして、企業側には積極的に勧めていないということです。

しかし、サービス開始と同時に当座の運転資金を求める中小企業からの申し込みが殺到し、この1か月間の申込件数は、およそ80件に上っています。

イー・ギャランティの吉嶺佑一営業課長は「新型コロナウイルスの感染拡大で苦しむ中小企業のために何かできないかと思い、ファクタリングのサービスを始めたが、基本的には金利も掛かってくるので、本来、取るべき手段を、まずご案内させていただいている。年利換算で数百%もの手数料を取っている業者もあるが、一度飛びついてしまうと抜け出せなくなり、企業のためにもならないと考えている」と話しています。

弁護士事務所に相談相次ぐ

東京 中央区の弁護士事務所には先月中旬以降、ファクタリングに関する中小企業からの相談が30件以上寄せられています。

SNS上では「コロナの資金繰りに悪化掛け売りを現金化へ」、「最短即日での資金繰りが実現」、「ゆるゆる審査実施中!」などという、ファクタリング業者の投稿が相次いでいます。

しかし、中小企業からは「経営状況の足元を見られ、高額の手数料を取られた」とか、「売掛債権の回収自体も代行する契約になっているが、期日までに債権を回収できず、ファクタリングでさらに資金を調達する自転車操業の状態になっている」などという相談が相次いでいるということです。

ファクタリングの問題に詳しい東京駅前総合法律事務所の井上裕貴弁護士は「3月中旬から下旬にかけて、相談が急激に増えている。中には、元ヤミ金業者が実質的に高利な貸し付けを行っているケースもあるが、契約書の体裁さえ整っていれば、貸金業法や利息制限法、出資法の規制の対象にもならない状態で、新たなグレーゾーンが確立されているのではないか」と話しています。

そのうえで、「ファクタリングを利用すれば、一時的なキャッシュフローは改善されるかもしれないが、すぐに資金繰りの悪化の原因になりえる。しかし、こうした業者に頼らざるをえない企業が増えているのが実情で、国はファクタリング業者の適正な運営指針を示す必要がある」と指摘しています。