“非接触型体温計 入手できない”障害者施設から不安の声 千葉

“非接触型体温計 入手できない”障害者施設から不安の声 千葉
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、肌に触れずに素早く測れる非接触型の体温計の国内への供給が滞り、千葉県内にある知的障害者の施設からは、感染防止対策を徹底できないという不安の声が上がっています。
新型コロナウイルスの集団感染が起きた千葉県東庄町の北総育成園では、入所者の障害によっては毎日の体温計測が難しく、感染の疑いを早期に把握することが困難だったと指摘されています。

千葉市の障害者施設「あけぼの園」でも、全国的な感染拡大に危機感を抱き、わきの下に挟む従来の体温計の代わりとして、肌に触れず素早く測ることができ、入所者の負担にもならない非接触型のものを購入しようとしましたが、入手できない状態が続いているということです。

非接触型体温計の大手メーカーによりますと、中国にある工場での生産が止まっているため、国内への供給が滞り、出荷の再開は来月の大型連休明けを目指すということです。

「あけぼの園」の管理者の星野茂夫さんは「従来の体温計では、嫌がる入所者も多く、お互いに時間をかけて接触しながら検温をしなければならない。健康状態の把握はとても重要なので、非常に困っている」と話していました。

障害者施設の現場では

千葉市稲毛区にある「あけぼの園」は、地元などから通ってくる、およそ90人の知的障害者の生活や就労の支援などを行っています。

利用者が施設に着いたあと、毎朝9時ごろから、わきの下に挟む従来の体温計で順次、検温を行っていますが、中には嫌がる人もいるため、職員は背後から覆いかぶさるようにして検温をすることがあります。

施設では新型コロナウイルスの場合、利用者と職員の密着を避けたほうがよいとされるなか、2月ごろから非接触型の体温計をインターネットなどを通じて購入しようとしてきましたが、到着予定日に欠品を知らせるメールが届いたこともあったということです。

今は手洗いやうがい、消毒の徹底を図っているほか、窓を定期的に開けて換気を行い、感染予防に努めていますが、入所者の体温を迅速に測り、健康管理を徹底することが感染の早期に把握するうえで欠かせないと考え、製品の到着を待っています。

あけぼの園の管理者の星野茂夫さんは千葉県東庄町の障害者福祉施設で発生した集団感染について「衝撃を受けた。あすはわが身という思いもある」としたうえで、「3つの密のうちの1つで、接近して支援するということもあるので、感染したり感染させてしまったりするリスクは高い。非接触型の体温計で測れば、そのあとの支援もしやすくなると思う」と話し、到着を待ち望んでいました。

また千葉県知的障害者福祉協会の千日清事務局長は「国は外出の自粛や人との接触を控えることを重要視しているが、濃厚接触を避けることができないのが福祉の仕事だと思う。施設の性格上、集団生活が一般的なので、感染拡大については恐れている」と頭を悩ませていました。

非接触型体温計 感染症対策で人気

東京 豊島区にある電子計測機器の大手メーカー「エー・アンド・デイ」は、額から出る赤外線の量を計算して、体に触れることなく、1秒ほどで熱を測定できる非接触型の体温計を4年ほど前から一般向けに販売しています。

体温計をわきの下に挟んでいることが難しい乳幼児や高齢者、それに障害がある人の検温が容易になるうえ、直接、体に触れないため、感染症対策にもなるとして人気が高まっていたといいます。

しかし中国で新型コロナウイルスの感染が急激に拡大したため、現地の工場での生産が止まって国内に供給できなくなり、品不足の状態が続いているということです。

ことしの1月下旬には、高齢者や障害者の介護を行っている施設などから、ふだんの30倍にも上る注文が寄せられましたが、2月には在庫が切れ、出荷は止まっています。

その後、中国での状況が改善し、工場での生産態勢も徐々に復旧しているということですが、部品の調達に時間がかかるため、生産の再開は来月の大型連休明けを目指しています。

エー・アンド・デイメディカル事業推進部の荒裕二さんは「問い合わせが急激に増えて、数日で何万台という在庫が出てしまい、申し訳ないが欠品が続いている。もうしばらく待っていただきたい」と話していました。

また、非接触型の体温計を扱っている、ほかの2社の製品についても入手しにくくなり、しばらくは、こうした状況が続きそうだということです。