安倍首相会見「正しい情報に基づき冷静な行動を」

安倍首相会見「正しい情報に基づき冷静な行動を」
法律に基づく「緊急事態宣言」を受けて、安倍総理大臣は7日夜に記者会見し、東京など7都府県の住民に対し、来月6日までの1か月間、人との接触の7割から8割の削減を目指して外出の自粛を要請するとしたうえで、正しい情報に基づいて冷静な行動を取るよう呼びかけました。
冒頭、安倍総理大臣は、新型コロナウイルスの感染者への対応にあたる医療関係者に謝意を示したうえで、病院の機能維持を図るため、医療物資の提供体制を強化する考えを示すとともに、軽症者や無症状の人は、宿泊施設で療養してもらうとして、ホテルチェーンの協力で関東で1万室、関西で3000室を確保したことを明らかにしました。

「もはや時間の猶予はない」

そして、安倍総理大臣は、「こうした努力を重ねても、都市部を中心に感染者が急増しており、病床数は明らかに限界に近づいている。医療従事者の肉体的、精神的負担も大きくなっており医療現場はまさに危機的な状況だ」と指摘しました。そのうえで、「医療提供体制がひっ迫している地域が生じていることを踏まえれば、もはや時間の猶予はないとの結論に至った」と述べ、「緊急事態宣言」を行うにあたって、法律で定められた要件を満たしたという認識を示しました。
宣言を踏まえ、安倍総理大臣は、最も感染者が多い東京について、今月中を目途に、東京オリンピック・パラリンピックの警備にあたる警察官のために準備していた宿舎を改修し、800人規模の軽症者を受け入れられるよう整備するとともに、必要に応じて、自衛隊などの医療スタッフを動員し臨時の医療施設として活用することも検討する考えを示しました。

外出自粛 人との接触7割~8割削減を

そして、安倍総理大臣は、感染拡大を抑制するためには、国民の行動を変えることが大切だとして、政府として、東京など7都府県の住民を対象に生活の維持に必要な場合を除き、みだりに外出しないよう要請すべきと考えたと強調しました。

さらに、安倍総理大臣は、専門家の試算として、人と人の接触機会を最低7割、極力8割削減できれば、2週間後には感染者の増加を減少に転じさせることができるとしたうえで、大型連休が終わる来月6日までの1か月間、人との接触の7割から8割の削減を目指して、外出を自粛するよう呼びかけました。

具体的な対応は

具体的な対応として、安倍総理大臣は、
▽社会機能の維持に必要な職種を除き、テレワークを行うこと、
▽どうしても出勤が必要な場合はローテーションを組むなどして出勤者の数を最低7割減らすこと、
▽人との距離を十分取るなどの取り組みを求めました。

また、
▽オンラインによる学習や診療を積極的に活用すること、
▽「密閉、密集、密接」の3つの密を避ける行動を徹底すること、
▽集会やイベントを避け、飲み会や家族以外の多人数での会食も行わないよう呼びかけました。

「『自分は感染者かも』という意識を」

そして、「この感染症の恐ろしい点は症状が全くないにもかかわらず感染している人が多いことだ。『すでに自分は感染者かもしれない』という意識を、特に若い人を中心に、すべての皆さんに持っていただきたい」と訴えました。

「雇用と生活を守り抜く」

また、経済への影響について、安倍総理大臣は、「世界経済だけでなく、日本経済が今まさに、戦後最大の危機に直面していると言っても過言ではない。強い危機感のもとに、雇用と生活を断じて守り抜いていく」と述べGDP=国内総生産の2割にあたる、事業規模の総額で108兆円程度の緊急経済対策を実施する考えを示しました。

「『都市封鎖』を行うものではない」

一方、安倍総理大臣は「今回の宣言は、海外で見られるような『都市封鎖』、『ロックダウン』を行うものでは全くない」と指摘したうえで、「東京や大阪での感染リスクは、現状でも、不要不急の外出を自粛して普通の生活を送っているかぎり、決して高くない。地方に移動するなどの動きは、厳に控えていただきたい」と呼びかけました。

さらに安倍総理大臣は「社会機能はしっかり維持していく」として自治体とも協力しながら、電気、ガス、通信、金融、ごみの収集・焼却などのサービスは、平常どおり続けるようにすると強調しました。

また、高齢者介護施設や保育所に対し、必要とする人へのサービスを継続するよう求めるとともに、食品など生活必需品の製造・加工や、物流、小売店などの事業者には営業の継続を要請する考えを示しました。

「正しい情報に基づき 冷静な行動を」

そして、「正しい情報に基づいて、冷静な行動を心よりお願いする」と呼びかけたうえで、「国家的な危機にあたり、ウイルスとの戦いに、皆さんの力をお借りしたい。あらゆる分野で、全国で立ち上がって下さっている皆さんこそが『希望』だ。共に力をあわせれば、ウイルスとの戦いに打ち勝ち、緊急事態という試練も、必ずや乗り越えることができると確信している」と強調しました。

「最悪の事態 私が責任を取ればいいというものでない」

安倍総理大臣は、記者団から、「対策が失敗した場合、どのように責任をとるのか」と問われたのに対し、「最悪の事態になった場合に、私が責任を取ればいいというものではない」と述べました。

「できるだけ東京にとどまって」

東京から地方への人の移動については「東京では都市封鎖・ロックダウンのようなことは行わず、経済・社会の機能は維持していくので、できるだけ東京にとどまっていただきたい」と述べました。

対象外の地域も「『3密』に注意を」

安倍総理大臣は、緊急事態宣言の対象となっていない地域について、「基本的には緊急事態宣言の対象とはしていないが、いつ感染が広がるかは分からない。そういう意味においては、十分に『3密』に注意していただきたいと思っている」と述べました。

「『アビガン』使えるようにする」

安倍総理大臣は、新型コロナウイルスの治療薬として効果が期待される「アビガン」について、「医師に『アビガンを使ってもらいたい』と言い、その病院の倫理委員会の審査で使えるようになっていれば、使って頂けるようにする。観察研究の中で行っていくという形で使っていただきたい」と述べました。

個別の休業補償に否定的な考え

安倍総理大臣は緊急経済対策に関連して「イベントなどの中止、延期などの要請、夜の街での自粛要請などによって甚大な影響が及ぶが、ある特定の業界にお願いしても損失はその業界にとどまるものではない。個別に補償していくということではなく、困難な状況にある皆さんに現金給付を行いたい」と述べ、個別の休業補償に否定的な考えを示しました。

また、中小・小規模事業者に対する実質無利子・無担保の融資について、8日、総理大臣官邸に金融機関の責任者を招き、融資を進めるよう要請する考えを明らかにしました。

さらに、収入が減少した世帯への現金30万円の給付について、安倍総理大臣は「自民党にも一律で給付すべきという議論があったが、本当に厳しく収入が減収した人たちに直接行き渡るようにしたいと考えた。なるべく早く補正予算案を通していただき、5月に直ちに出て行くようにしたい。今回スピードも重視した」と述べました。