集中治療 早期に医療体制崩壊のおそれ 学会が緊急声明

集中治療 早期に医療体制崩壊のおそれ 学会が緊急声明
新型コロナウイルスの患者が重症化した場合に行われる集中治療について日本集中治療医学会は、医療体制の崩壊が非常に早く訪れるおそれがあるとして、専門知識や経験のある医師などを早急に確保すべきだとする緊急声明を出しました。
専門の医師などで作る日本集中治療医学会は今月1日に緊急声明を発表しました。

それによりますと、先月末の時点でイタリアの死亡率は11.7%だったのに対しドイツでは1.1%で、これは主に集中治療の体制の違いが要因だとしています。

日本は人口10万当たりの集中治療のベッド数がイタリアの半分以下で、このままでは集中治療体制の崩壊が非常に早く訪れることも予想される、と危機感を示しています。

また、新型コロナウイルスの患者の場合、集中治療室では感染予防のため通常の4倍の看護師が必要だとしています。

さらに人工呼吸器や、症状が非常に重い患者に使われる「ECMO(エクモ)」と呼ばれる人工心肺装置などの機器を扱える医師や看護師が少ないと指摘しています。

このため、国内にあるおよそ6500床の集中治療室のうち、実際に新型コロナウイルスの患者に対応できるのは1000床に満たない可能性があるほか、台数を増やしたとしても今の体制では対応しきれないと指摘しています。

このため学会は、重症患者を治療した経験のある医師を早急に確保するなどして、集中治療体制を維持するためのあらゆる方策を考えるべきだと訴えています。

医学会理事長「国は医師ら確保にお金を」

日本集中治療医学会の西田修理事長は「集中治療室で新型コロナウイルスの重症患者を診ようとすると、感染を防ぐために通常の3~4倍の看護師が必要になる。今の段階で最も必要なのは人工呼吸器よりも医師や看護師などのマンパワーで、国は病院が人員を確保したうえで重症患者を受け入れることができるように、マンパワーにしっかりお金をつぎ込んでほしい。そうすることで、医療崩壊を遅らせることができる」と話しています。

ECMO 専門技術必要 対応可能な医師らに限りあり

ECMOとは、非常に症状が重い肺炎の患者に使われる人工心肺装置です。

取り出した血液に直接酸素を送り込むことで肺の機能を一時的に代行する高度な治療で、装着中、肺を休ませることで回復につなげようとするものです。

日本集中治療医学会によりますと、先月30日の時点で、国内では新型コロナウイルスによる肺炎患者少なくとも40人がECMOによる治療を受け、このうちおよそ半数の19人が回復に向かった一方、6人は死亡したということです。

学会によりますと、ECMOは国内におよそ1400台ありますが、装着や管理に専門的な技術が必要なため対応できる医師や看護師に限りがあり、新型コロナウイルスの患者に対応できるのはおよそ500人分ほどだとしています。

政府は緊急経済対策や今年度の補正予算に対策費を計上し、メーカーに増産を呼びかけるほか、装置を扱える人材を育成して派遣する体制を整備する方針です。