軽症患者など1200人受け入れ 臨時の施設整備へ 日本財団

軽症患者など1200人受け入れ 臨時の施設整備へ 日本財団
新型コロナウイルスの感染拡大で、患者が入院する病床の確保が課題になっています。患者のさらなる増加に備え、日本財団は、今月下旬以降、軽症の患者など、およそ1200人を受け入れる臨時の施設を整備し、7月以降には、1万人を受け入れられるようにしたいと発表しました。
これは、日本財団の笹川陽平会長が記者会見を開いて明らかにしました。

それによりますと、日本財団は、グループが所有する東京・品川区の「船の科学館」の敷地内で、東京パラリンピックを目指す選手が練習の拠点としている「パラアリーナ」と呼ばれる体育館や、駐車場など合わせて1万4000平方メートル余りを提供し、医師に入院の必要がないと診断された患者など、およそ1200人が過ごせる施設を整備するとしています。

このうち、駐車場などには、冷暖房を備えた大型のテント9棟を設置し、医師や看護師らが宿泊できる施設も設けるとしています。

医師や看護師の確保など、具体的な運営方法については今後、東京都や厚生労働省などと協議して決め、今月中に患者の受け入れを始められるようにしたいとしています。

さらに、7月以降には、茨城県つくば市の研究所跡地に、およそ9000人を受け入れる施設も整備し、合わせて1万人を受け入れられるようにするとしており、笹川会長は「感染が拡大せず、施設が使われない状況になることが願いだが、スピード感を持って備えることが重要だ」と話しています。

「パラアリーナ」とは

新型コロナウイルスの患者の病床を確保するために提供される「船の科学館」の体育館は、「パラアリーナ」と呼ばれ、東京パラリンピックを目指す多くの選手が練習の拠点としている施設です。

パラスポーツ専用の体育館「パラアリーナ」は、練習場所の確保に悩んでいたパラリンピックの競技団体の要望に応え、おととし、日本財団がオープンした施設で、東京パラリンピックを目指す選手たちが利用していました。

中でも、車いすの競技は、転倒すると床に傷がつくとして、一般の体育館の利用を断られることがあるため、車いすラグビーや車いすバスケットボールなどの選手たちは、頻繁に、この施設を利用していました。

シャワーやロッカーなども車いすの選手や、手や足に障害のある選手が利用しやすいバリアフリーの設計になっているほか、筋力トレーニング用の機材なども充実しているため、多くの競技団体の練習の拠点となっていました。

新型コロナウイルスの感染拡大が続く間は、病床として提供されるため、競技団体が、いつから利用を再開できるかは不透明で、この施設を拠点としていた多くの選手は、代わりの練習場所の確保を迫られることになりました。

運営する組織の会長「大変心苦しいが人類の危機」

パラスポーツ専用の体育館「パラアリーナ」を運営する「日本財団パラリンピックサポートセンター」の山脇康会長は、「アスリートの皆様には、パラアリーナを一時的に閉館するという今回の決定により、日常の練習に多大なご迷惑をおかけすることになり、大変心苦しく思っています」とコメントしています。

そのうえで「世界各地で起こっていることは、スポーツの域をはるかに超えた人類の危機であり、新型コロナウイルスの感染拡大を阻止し、人々の命を守ることに、あらゆる手をつくすことが最優先だと思います。皆様とともに、この困難な時期を乗り越え、健康で安心安全な社会を取り戻すことに全力で取り組みます」としています。