人工呼吸器が足りなくなった場合の考え方 専門家などが提言

人工呼吸器が足りなくなった場合の考え方 専門家などが提言
新型コロナウイルスの感染がさらに拡大し、治療に必要な人工呼吸器が足りなくなった場合に誰に装着するかなどの考え方を示した提言を、医療倫理の専門家などの有志のグループがまとめました。いまは人工呼吸器が足りない状況にはなっていませんが、グループは、いざというときに備えて医療機関や自治体などで検討を進めておいてもらいたいとしています。
提言は、東海大学医学部の竹下啓教授ら医療倫理を研究する医師や弁護士で作る有志のグループがまとめました。

提言では、感染がさらに拡大して重症の患者が急増した場合、人工呼吸器が不足し、どの患者に装着するかなどの判断を迫られ、「未曽有の倫理上の問題に直面することになる」としています。

そのうえで判断の基本原則を示し、医療上適切かどうかや患者本人の意思に基づいて行うこと、非常時には救命の可能性が極めて低い状態の患者への人工呼吸器の装着など効果が期待できない医療を控えざるをえないこと、医療やケアのチームで判断し、その内容を記録して患者や家族と共有することなどを挙げています。

そして、あらかじめ、医療機関で対応の方針を決めておくことや、救命できるかどうかの可能性を判断する際は、性別や社会的地位などに基づく差別をしないことを強調しています。

患者数が爆発的に拡大したイタリアでは、人工呼吸器が足りず、持病のなかった患者が亡くなるなど、命を救えない事態が起きていると報告されています。

竹下教授は「通常ではありえない状況で、医療者も家族も選択を迫られる事態がもしかしたら日本でも起きるかもしれない。そうなる前に、どう対応すべきなのか医療機関や行政が検討を進めておくとともに、患者の立場でどう選択するのか真剣に考えてもらいたい」と話しています。