小池都知事 緊急事態宣言時の都の対応を説明

小池都知事 緊急事態宣言時の都の対応を説明
k10012366451_202004031606_202004031745.mp4
東京都の小池知事は、今後、仮に、新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく「緊急事態宣言」が出された場合に都がとる対応について、3日の記者会見で説明しました。
このなかで、小池知事は「緊急事態宣言」が出された場合は、都として、
▽都民に外出の自粛などを要請し、
▽各施設やイベントの主催者には施設の使用停止などを要請するなどとしています。

個別の要請内容は今後、国から出される方針などを受けて決定すると説明しました。

そのうえで、食料品や医薬品などの生活必需品の販売や、銀行や証券取引所などをはじめとする金融サービスなど、社会や経済生活を維持するうえで必要なサービスは、必要な衛生管理などを行ったうえで、引き続き営業してもうらうと説明しました。

さらに、都民や事業者が抱く疑問や不安に答えるため、新たにコールセンターを設置して、相談体制を強化するということです。

また、感染の拡大が続く今の状況について、小池知事は「感染爆発の重大局面と何度も申し上げているが、この局面は変わっておらず、より深刻になっている」と述べ、感染リスクが高まるいわゆる3つの密を避けるよう呼びかけました。

このほか、4日からの週末は、引き続き不要不急の外出を控えるよう協力を呼びかけました。

小池知事は「不要不急」の意味について「きょう行かなければならない用事なのか、あした行かなければならないのかといった観点からの仕分けもある」と述べました。

ただ、「いのちに関わる事などで病院に行く方、薬がないとだめな方もいると思う。

また、例えばスーパーやコンビニ行ってその日の食材を買うのは普通に行っていただきたい」と述べ、それぞれで判断するよう呼びかけました。

緊急事態宣言

「緊急事態宣言」を行う際は、国民の生命や健康に著しく重大な被害を与えるおそれがある場合と、全国的かつ急速な、まん延によって国民生活と経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある場合の2つの要件をいずれも満たす必要があると定められています。

さらに、感染症の専門家でつくる「諮問委員会」に意見を聞くなどの手続きも必要です。

また「緊急事態宣言」を行う場合、総理大臣は緊急的な措置を取る期間や区域を指定し宣言を出します。

緊急事態宣言について菅官房長官は、3日の閣議のあとの記者会見で「今がまさに国内の急速な感染拡大を回避するために重要な時期であり、現状では、ぎりぎり持ちこたえていると思われ、緊急事態宣言が必要な状態にはないという認識に変わりはない」と述べました。

緊急事態宣言が出されると、小池都知事が述べていたロックダウン=都市の封鎖は、そもそもできるのでしょうか。

ロックダウン

厚生労働省などによりますと、日本で「ロックダウン」=都市の封鎖を行うには、根拠となる法律が必要ですが、施行された「新型コロナウイルス対策特別措置法」には、「ロックダウン」ということばは、どこにも書かれておらず明確な定義もないということです。

仮に「ロックダウン」のようなことをするにしても、まずは政府が「緊急事態宣言」を出すことが前提になるということです。

外出

ただ仮に「緊急事態宣言」が出されても、特措法では外出禁止を強制することはできないということです。

特措法の45条では「都道府県知事は生活の維持に必要な場合を除き、みだりに当該者の居宅、または、これに相当する場所から外出しないこと、その他の感染の防止に必要な協力を要請することができる」と書かれていて、あくまで外出自粛の「要請」にとどまり、外出した際の罰則はないということです。

東京都が先月末に要請した外出自粛と、緊急事態宣言後の外出自粛は、どちらも「要請」で差異はないとしています。

交通

交通機関についても、都市封鎖するために公共交通機関を止めることは法律に書かれていません。

特措法の20条と24条には、総理大臣や都道府県知事は、鉄道会社などの「指定公共機関」と、総合調整を行うことができると書かれています。

これはストップさせるというよりも逆で、感染が拡大した際でも公共機関の職員は働かなければいけないので「最低限は交通機関を動かしてください」というもので、鉄道などを止めることは想定していません。

また道路についても、特措法で道路を封鎖できるという規定はありません。

一方、感染症法33条では、感染した場所が十分に消毒できていない場合、そこに人が集まらないように72時間以内で局所的に閉鎖したり、そこに向かう交通手段を遮断したりできますが、それは消毒のためであって広域的に人の動きを止めるために使える条文ではありません。

このように仮に緊急事態宣言が出たとしても、外出自粛は「要請」ベースで強制力はなく、これまでの自粛要請と、ほとんど変わらない見通しです。

今の特措法では、海外のような「ロックダウン」はできず、徹底的に実施するならば、諸外国のように罰則付きの法律を別途整備することが必要だということです。

東京都の小池知事は、先週末の不要不急の外出を控えるよう呼びかけましたが「皆さんの協力を得て、かなりの部分の外出をお控えいただいた」と述べるなど、効果が見られたという例もある。

それを踏まえると、強制力はないが心理的な効果があるのではないかという見方もあります。

イベント

イベントについては、特措法の45条2項に基づき、イベントを開催しないよう知事がまず「要請」して、それでも応じない場合は「指示」できます。

指示には罰則はないものの、公権力を背景とした指示は、事実上の強制力を持つと考えられます。

さらに「指示」を行ったら、事業者名などを知事がホームページなどに「公表」することになります。

休校

学校の休校についても、特措法の45条2項が根拠となり、休校を「要請」または「指示」できるようになります。

県立高校は、県が所管しているので知事の判断で休校できます。

私立学校や市町村立の小中学校は、知事が休校を「要請」し、応じない場合には「指示」できるという建て付けになっていますが、罰則はありません。

店舗や施設

店舗の営業についても、特措法の45条2項で「多数の者が利用する施設」は、使用制限や停止を「要請」できるとなっていて「多数の者が利用する施設」は政令で定められています。

主なものは、映画館や展示場、百貨店やスーパーマーケットのほか、ホテル、美術館、キャバレー、理髪店、学習塾などとなっています。

ただしスーパーマーケットのうち、食品、医薬品、衛生用品、燃料など、生活必需品の売り場だけは営業を続けることができます。

ただ、民間企業を強制的に休業させる直接的な規定はありません。

企業が活動を休止したり、イベントを中止したりした場合の損失補償については、そもそも強制的に店舗を閉めたり、イベント中止を命じることはできないため、特措法には直接の規定はないということです。

マスク

マスクについては、特措法の55条でマスクなど、必要な物資の売り渡しの要請ができるほか、応じないときには、知事が強制的に収用できるようになります。

また特措法とは別に、すでに政府は国民生活安定緊急措置法などに基づいて、マスクを買い上げるなどして北海道や医療機関などに配っています。

強制的にできること

緊急事態宣言が出たときに行政が強制的にできることは、都道府県知事が、臨時の医療施設をつくるために必要がある場合に、土地や建物を所有者の同意を得ないで使用できることと、知事が医薬品や食品など、必要な物資の保管を命じることです。

命令に従わず、物資を隠したり廃棄したりした場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。

保管場所の立ち入り検査を拒否した場合も30万円以下の罰金となります。

罰則があるのはこの2つだけです。

政府「ロックダウン 確立した定義承知せず」

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、海外で行われている「ロックダウン」=都市封鎖について、政府は、3日の閣議で「確立した定義があるとは承知していない」とする答弁書を決定しました。

「ロックダウン」について、政府の専門家会議の提言では「数週間の間、都市を封鎖したり、強制的な外出禁止の措置や生活必需品以外の店舗閉鎖などを行う」などと記述されています。

これを踏まえ、国民民主党の後藤祐一衆議院議員は、質問主意書で、「ロックダウン」の定義や法的に可能か、政府の見解をただしました。

これについて、政府は、3日の閣議で、「『ロックダウン』については、確立した定義があるとは承知していないため、お答えすることは困難だ」とする答弁書を決定しました。

「ロックダウン」をめぐっては、安倍総理大臣が参議院決算委員会で、「さまざまな要請はすることになるかもしれないが、フランスなどで行っているものとは、やや性格は違うものだ」と述べています。