緊急報告 “コロナショック”地域の悲鳴

緊急報告 “コロナショック”地域の悲鳴
新型コロナウイルスの影響を多くの日本人がはっきりと意識したのは、ことしの1月下旬。日本の観光地から中国人旅行客の姿が消え、中国・武漢の封鎖で、日本企業の現地生産が停止したときでした。そこから2か月余りで想像を超える事態が、現実になっています。見えないウイルスの猛威は、わたしたちの日々の暮らしや、地域の経済に深刻な痛みをもたらしています。今、何が起きているのか。新年度が始まった地域の声を全国でいっせいに取材しました。

インバウンドが消えて

中国からの旅行者が急減し、日本を訪れた外国人旅行者はすでに2月の時点で、前年比58%減。それ以後、世界中の国からの入国が制限・拒否が決まり、4月、5月と、旅行者が、さらに落ち込むのは避けられません。

各地のホテルや旅館の予約はキャンセルが続出。インバウンドの盛り上がりが地域経済を支えてきただけに、日本中の観光地から厳しい声があがっています。

経験したことのない危機

「考えられないことが目の前で起きている。経験したことのない危機だ」
歯ブラシなどアメニティーグッズを製造し、全国のホテルなどに販売する愛媛県のSANYOホールディングスの武内英治社長は危機感をあらわにしました。
3月後半、当て込んでいた取引先からの受注がストップ。倉庫には、大型連休の需要の増加に備え、増産していた在庫が積み上がっていました。

東京オリンピック・パラリンピックの需要拡大を見込んで、およそ8億円をかけて新工場を建設。3月10日に竣工したばかりでしたが、今は操業を停止しています。
武内英治社長
「旅行客が増え、われわれがホテルを支えるという構図が土台から崩れたような感じだ」
会社は生産態勢の大幅な見直しを迫られています。

仕事が週2日か3日に

ホテルにシーツやタオルを貸し出すリネンサプライ業も打撃を受けています。

さいたま市のリネンサプライ会社、べネックは、東京都心や東京ディズニーランド周辺のホテルと取り引き。外国人旅行者の増加で業績を伸ばしてきましたが、2月半ばから売り上げが急減。シーツ、タオルを洗濯する栃木県の工場は1年中休みなく稼働してきましたが、3月からは週3日の休みを設けました。
「これまで週5日働いてきましたが、週2日か3日の勤務になりました。目に見えて仕事が減って不安です」
工場で働く女性従業員は心配そうに話しました。

収束、待つしかない

影響は水産業にも及んでいます。

岩手県大船渡市であわびの養殖を手がける北日本水産。東日本大震災で全壊した養殖施設を6年前に復旧させ、ホテルや飲食店への販売を増やしてきました。
しかし新型コロナウイルスの影響で売り上げは1年前の半分ほどに落ち込みました。あわびの輸出も手がけてきましたが、税関が封鎖されて送り返されてくることもあるといいます。
古川季宏社長
「八方ふさがり。収束を待つしかない」
インバウンドの落ち込みにとどまらず、国内の感染拡大がとまらず、自粛の動きも日に日に強くなっています。北海道・函館のタクシー会社。山梨・富士河口湖町のホテルやレストラン、おしぼりをリースする中小企業。新潟・燕市の金属加工会社。先の見えない不安が全国に広がっています。

リーマン以来の危機に身構える

一方、インバウンドとともに厳しい声が相次いだのが自動車関連です。

2008年のリーマンショックを経験した各地の企業は、危機の再来に身構えています。
愛知県清須市の自動車部品の金型メーカー、エムエス製作所は、中国の工場が2月下旬までおよそ1か月操業停止となり、インドの工場も生産停止に追い込まれました。

日本でも4月に見込んでいた受注の3分の1が無くなりました。
「これまでの会社の歴史の中で、いちばんの危機にあるということだけは確かだ」
迫田邦裕副社長は、自動車生産が世界中で一斉に落ち込んでいることを強く警戒しています。

社員の生活を守る

大阪・八尾市の金属部品の加工会社、理化工業は、従業員およそ70人。自動車部品に熱処理を施して強度をあげる事業を手がけています。電気自動車の軽量化のため需要が伸びるアルミを熱処理する新たな設備を3億円かけ作ることを計画していました。しかし、感染拡大が続く中、急きょ投資を凍結しました。

森嶋勲社長は、今は巨額投資のリスクは避け、守りを固める時期だと考えています。
森嶋勲社長
「社員の生活を守っていくのが中小企業にとっていちばん大きなテーマ。これから来るショックに備えておかないといけない」

いつまで耐えればいいのか

コロナウイルスで急ブレーキがかかる深刻な状況を何とかしのごうと、いま多くの企業が資金繰りの手当てなどに走っています。政府は、実質的に無利子・無担保で融資を受けられる資金繰り支援を始め、民間金融機関もさまざまな対応に乗り出しています。
東京・港区に本店がある芝信用金庫は500万円以内であれば支店の判断ですみやかに融資する特別の仕組みを導入。
「お客さんが事業を継続できなければ、私たち信金も生き残っていけない」
信金の橘新治常務理事は、取引先を支えなければ、将来の地域経済の地盤沈下につながりかねないと危機感をあらわにします。しかしウイルスの感染はおさまらず、暮らしや地域経済も日に日に停滞の度合いを深めています。
「いつまで耐えればいいのか」
厳しいですが、今はまだわかりません。