外出自粛で高齢者の健康に影響懸念 新型コロナウイルス

外出自粛で高齢者の健康に影響懸念 新型コロナウイルス
新型コロナウイルスの感染拡大で外出を自粛する動きが広がる中、特に高齢者は家の中にこもりがちになり、運動不足になったり生活のリズムが変わったりして健康への影響が心配されています。
東京都内で1人暮らしをしている高山日出子さん(76)は持病の糖尿病の改善や健康維持のために15年前からフィットネスクラブに通い週に4日ほど運動を続けてきました。

ところが、新型コロナウイルスの影響でフィットネスクラブは感染のリスクが高いとされ、周りとも相談した結果休会せざるをえなくなりました。

いま、多くの時間は自宅で過ごしています。

テレビを見ながら簡単なストレッチをしたり近所を散歩したりしていますが以前よりも運動不足になったことで、糖尿病の進行や体力の低下に不安を感じています。

さらに、地域のイベントや仲のよい友達との花見の予定なども中止になり、他人と会話を楽しむこともほとんどなくなりました。

離れて暮らす娘や、会えない友人とはLINEで連絡を取り合って励まし合っています。
高山さんは、「日々運動することで糖尿病の数値も下がってきていたので影響が心配ですし、筋力が落ちてしまわないかと思っています。フィットネスクラブに行って友達と会っていろんな話をすることも一切絶たれてしまったので、これからまだこの状況が続くと思うとつらく、なんとか早くもとの生活に戻りたいです」と話していました。

専門家「新たな病気のリスクも」

健康政策が専門の筑波大学大学院の久野譜也教授は、「運動不足で筋肉量が落ちると高齢者の体は弱って転倒や骨折をしやすくなり寝たきりになるおそれもある。特に、糖尿病や高血圧など持病がある人が運動しない状態が続くと、新たな病気になるリスクも高くなり、ウイルスの感染予防だけでなくこうした“2次健康被害”を減らすことを考えることが重要だ」と指摘しています。

そして、具体的な対策として、人混みを避けたうえでなるべく自宅周辺を歩いたり公園で簡単な体操をしたりして意識的に体を動かすよう呼びかけています。

また、1人暮らしの高齢者が家にこもって誰とも話さないと認知症になるおそれも高まるとして、「家族と電話で連絡を取り合うなど、可能なかぎりコミュニケーションをとってほしい」と話していました。

対策強化し営業再開するフィットネスクラブも

全国の86万人の会員のうち60代以上がおよそ70%を占めるフィットネスクラブ「カーブス」では新型コロナウイルスの影響で一時営業を取りやめていましたが、現在は換気や運動器具の消毒など対策を強化して営業を再開しています。

一方で、ウイルスに感染した場合特に重症化するリスクが高いとされている80歳以上の人や糖尿病や心筋梗塞などの持病がある人については、今も「休会」という対応をとっています。

フィットネスクラブでは休会している高齢者が自宅にこもりがちになって体力が落ちたり、周囲との交流がなくなり気分が落ち込んでしまったりしないように、インストラクターが電話をかけて生活の状況などを聞き取るといった取り組みを進めているということです。

フィットネスクラブの担当者の関口桂さんは、「高齢の方が家の中にずっとこもって運動ができず誰ともしゃべらないでいると健康への影響が心配です。自宅でもできる運動を少しでもしてもらい、また元気に通ってもらえるように支援したいです」と話していました。