物流業界 ”買いだめ”で疲弊 消費者の行動で大きな負担

物流業界 ”買いだめ”で疲弊 消費者の行動で大きな負担
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、各地で相次ぐトイレットペーパーや冷凍食品などの「買いだめ」。こうした消費者の行動で大きな負担が生じているのが、国内の貨物輸送の9割以上を占めるトラック業界です。現場ではいったい何が起きているのか、取材しました。

トイレットペーパー“買いだめ”で負担増

「急にメーカーや卸しからのオーダーが2倍になり、てんてこ舞いでした」。

こう話すのは、トイレットペーパーなど家庭用の紙類の配送を行う、東京の物流会社の責任者です。

この会社は、首都圏のスーパーマーケットやドラッグストアなど、およそ300か所にトイレットペーパーを配送しています。

通常はトラックおよそ50台で、1日当たり段ボールで1万箱を配送していましたが、買いだめの動きが広がってからは、メーカーや卸し業者から倍の2万箱の配送を依頼されました。

会社では急きょ、協力会社に依頼して新たに10台のトラックを手配して、なんとか対応しました。

それでも配送量が増えた影響で、運転手は品物の積み降ろしの頻度や運転時間が増えるなどして大きな負担になったといいます。

さらに配達に時間がかかったことで予定どおり店舗をまわれなくなり、最大で配送が3日も遅れたケースもあったということです。

配送を担う運転手やトラックには限りがあるため、発注が急激に増えたことで、逆に商品が届きにくくなるという悪循環が起きてしまったというのです。

結局こうした混乱は、つい最近まで1か月近く続いたということです。

責任者は、次のように不安を漏らしています。

「消費者が1個買えばいいものを2個、3個と買うと、それだけ物流にしわ寄せがかかる。しかし運転手不足で通常の配送でもぎりぎりの中、急なオーダーには対応しきれない。結果、通常配送も滞ってしまった。いつまた同じ混乱が起きるか、気が気でない」。

都の外出自粛要請でさらなる負担

ようやくトイレットペーパーの買いだめが落ち着いてきたやさきに、新たな懸念も出てきています。

先週末、東京都が外出自粛を要請したのをきっかけに一部の店舗では、冷凍食品などを買い占める動きがありました。

これを受けて、冷凍食品などの配送を行う都内の会社では、冷凍食品の配送依頼が増えてきているといいます。

この会社の経営者は、次のように話しています。

「スーパーの陳列棚を見ると冷凍食品コーナーは、特売の後のように品薄になっているところもあり、中には『あるだけ持ってきてくれ』という依頼もある。配送センターはトラックへの荷入れなどで大騒ぎで、まるで戦場のようです」。

「ただ、社内の倉庫には冷凍食品の在庫はきちんとある。あるメーカー用の倉庫はぎっしり詰め込まれている。通常の配送なら在庫が切れることはない。買いだめは控えてほしい」。

運転手は…

現場の運転手からも不安の声があがっています。

都内で食料品などを配送する50代の運転手は、先週からスーパーマーケットなどへの食料品の配送が増え、食事の時間を確保するのが難しくなるほど業務量が増えているといいます。

「とにかく疲れがたまっています。仕事が増えても人が増えるわけではないので。早く落ち着いてほしいです」。

都内のおよそ3200社の運送会社でつくる東京都トラック協会の担当者も危機感を募らせています。

「そもそもトラック業界は慢性的な運転手不足の中で、通常の配送もぎりぎりの中で行っている。業務が増えたことで万が一、運転手が体調不良にでもなってしまうと物流全体にも影響が出かねない事態になってしまう。消費者の人たちには、デマに惑わされず買いだめを行わないで冷静な行動、いままでどおりの購入を続けてほしい。皆さんの行動が物流業界全体に、そして皆さんの生活にも影響することを想像してもらいたい」と呼びかけています。