首相「首都圏での新型コロナ拡大回避は極めて重要」衆院本会議

首相「首都圏での新型コロナ拡大回避は極めて重要」衆院本会議
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、安倍総理大臣は衆議院本会議で、特別措置法に基づいて政府対策本部を設置したことなどを報告したうえで、「首都圏での急速な感染拡大の回避は極めて重要だ」と述べ、対応に万全を期す考えを強調しました。
この中で安倍総理大臣は先月26日に新型コロナウイルスの特別措置法に基づいて政府対策本部を設置したのに続き、全般的な方針などを盛り込んだ「基本的対処方針」を決定したことを報告しました。

そのうえで安倍総理大臣は「各都道府県においても対策本部がすでに設置されている。今後はこれまで以上に、都道府県と連携を密にしながら、一体となって対策を進めていく。国民の皆様の命と健康を守ることを第一に、感染拡大の防止に向けた取り組みを徹底していく」と述べました。

また安倍総理大臣は東京オリンピック・パラリンピックについて先月、IOC=国際オリンピック委員会のバッハ会長と電話で会談し、大会の中止はないことを改めて確認するとともに、「世界のアスリートが最高のコンディションでプレーし、観客にとって安心で安全な大会」とするため、遅くとも来年夏までに開催することで合意したことを説明しました。

そのうえで、「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として、完全な形で実施できるよう、IOCと緊密に連携していくことで一致した」と説明しました。

そして、その後の関係者による協議の結果、オリンピックについては来年7月23日から8月8日の日程で、パラリンピックについては8月24日から9月5日の日程で開催することが決まったと報告しました。

安倍総理大臣は「この決定を踏まえ、今後ともIOC、大会組織委員会、東京都などとの緊密な連携のもと、東京大会の成功に向けて、開催国の責任をしっかりと果たしていく」と述べました。

「罰則は慎重な検討が必要」

安倍総理大臣は衆議院本会議で新型コロナウイルスの特別措置法について、罰則規定を設けるなど、より強制力を持たせるべきだと指摘されたのに対し、「現行法では緊急事態において、大規模施設でのイベントの制限について、都道府県知事に要請や指示を行う権限が付与されているが、私権を制限するものであるため、範囲を広げることや、罰則による強制力を強めることは慎重な検討が必要だ」と述べました。

また加藤厚生労働大臣は治療薬の開発をめぐり、インフルエンザ治療薬「アビガン」については、先月31日から企業による治験が始まっていることを説明したうえで、「安倍総理大臣からは、緊急経済対策で、感染拡大防止策などとともに、治療薬の開発について取りまとめるよう指示を受けており、早期の開発促進に向け、現在具体的な検討を行っている」と述べました。

「小池都知事と緊密に連携 同じ危機感持って対応」

自民党の小倉將信氏は新型コロナウイルスの特別措置法に基づく緊急事態宣言について、「国民の間では、いつ緊急事態宣言が発令されるのか、発令されれば、いわゆるロックダウン=都市封鎖が行われるのではないかとの心配が広がっている。宣言発令も含め、足元の状況をどう認識しているのか」と質問しました。

安倍総理大臣は「現在の国内の状況は東京をはじめとして、都市部を中心に感染者数が急増し、感染経路が不明な感染者も増加しており、海外からの移入が疑われる事例も多数報告されている。緊急事態宣言との関係では、現時点ではまだ全国的かつ急速なまん延という状況には至っておらず、ぎりぎり持ちこたえているが、少しでも気を緩めればいつ急拡大してもおかしくない、まさに瀬戸際が継続している状況だ」と述べました。

そのうえで、「東京を含む首都圏で急速な感染拡大を回避することは極めて重要で、東京都の小池知事とは緊密に連携し、同じ危機感を持って対応している」と述べました。

「五輪延期に伴う経費 検討状況を注視」

立憲民主党の逢坂政務調査会長は東京オリンピック・パラリンピックの延期について、「延期によって、どのような課題が生じるのか。追加費用はどの程度と見積もっているのか、それを誰が負担するのか。また、来年夏までの延期だが、1年後には確実に実施できるのか。再延期はないと言い切れるのか」とただしました。

これに対し、安倍総理大臣は「東京大会の延期に伴い、競技会場の確保やボランティアを含めたスタッフの確保などの課題がある。延期に伴う追加的経費については、まずは大会組織委員会や東京都を中心に内容の精査を進められると承知しており、その検討状況を注視していく」と述べました。

また安倍総理大臣は品薄状態が続いているマスクについて、「来週決定する緊急経済対策に、再生利用可能な布マスクの買い上げを盛り込み、全国のすべての世帯を対象に1住所当たり2枚ずつ配布する。今年度の補正予算案の成立前でも、予備費の活用などにより、再来週以降、感染者数が多い都道府県から順次配布を開始する」と述べました。

「財政、金融、税制総動員し思い切った措置を講じる」

公明党の高木政務調査会長代理は経済対策について、「雇用の維持・確保の支援、景気全体を浮揚させるための対策など、リーマンショック時を超える、国費20兆円、事業費60兆円以上の対策を講じるべきだ。具体的には1人当たり10万円の現金給付を迅速に行うべきだ」と求めました。

安倍総理大臣は「経済への甚大な影響に対して、リーマンショック時の経済対策を上回る、かつてない規模の対策としたい。徹底的に下支えすることにより、地域の雇用、働く場所はしっかり守り抜く。仕事が減るなどで収入が減少し、生活に困難をきたしている方々には、生活を維持していくための現金給付を実施していく。前例にとらわれず、財政、金融、税制を総動員して思い切った措置を講じていく」と述べました。

また安倍総理大臣は、緊急事態宣言を出す際の周知について、「専門家の意見や、決定に至った背景などについて、私から直接、国民の皆様に説明する場を設ける。都道府県が講じる外出自粛要請などの措置の内容についても、しっかりと情報発信し、不安の払拭(ふっしょく)に努めていく」と述べました。

「最大の使命は事業継続と雇用守ること」

共産党の塩川鉄也氏は雇用対策をめぐり、「雇用形態を問わず、賃金、収入の8割を補償するべきだ。新型コロナを理由に解雇、雇い止め、派遣切り、内定取り消しなどを行わないよう、対策を講じるべきだ」とただしました。

これに対し、安倍総理大臣は「政治に課される最大の使命は、何とか事業を継続していただき、雇用を守っていくことだ。緊急経済対策の中で、雇用の維持と、事業の継続の観点から、民間金融機関でも無利子融資を受けることができる制度を整えるとともに、特に厳しい状況にある中小・小規模事業者などに対して、新たな給付金制度を創設する」と述べました。

「甚大な影響受けている方々に必要な額を早期に提供」

日本維新の会の浦野靖人氏は、感染拡大で所得が減少した人への現金給付について、「政府・与党は、所得で対象者を限定する方向だが、線引きに時間がかかり、給付が遅れる。一律の現金給付は検討しないのか」と指摘しました。

これに対し、安倍総理大臣は「国民全員に一律で行うのではなく、甚大な影響を受けている中小・小規模事業者の方々や、フリーランス、個人事業主の方々をはじめ、仕事が減るなどにより、収入が減少し、生活に困難をきたしているご家庭の方々に、この困難を乗り越えていただき、事業の継続、生活の維持のために、必要な額をできるだけ早期に提供していきたい」と述べました。