感染拡大の中で? 日韓関係は? 韓国総選挙

感染拡大の中で? 日韓関係は? 韓国総選挙
4月15日に行われる韓国の総選挙。
300の議席をめぐり、4月2日に選挙戦がスタートした。

ムン・ジェイン(文在寅)大統領の任期が残り2年となったタイミングで行われる今回の総選挙。

その結果はいったいどんな意味を持つのだろうか。
そして、悪化している日韓関係にはどんな影響があるのだろうか。
そもそも、韓国でも新型コロナウイルスの感染が広がり対策に追われているのに、本当に選挙は実施されるのか。

ひとつひとつ疑問に答えていく。(国際部記者 石井利喜 近藤由香利 金知英 白井綾乃)

選挙結果はどんな影響を及ぼすの?

韓国の国家元首は大統領。
その大統領は、「帝王」とも言われるほど権限が強く、最高裁判所の裁判官を任命する権限や、国会が可決した法案を事実上、拒否できる権限もある。

このため、5年に1度の大統領選挙がもっとも重要とされる。
だが、国会議員を選ぶ4年に1度の総選挙も、実はこれまで韓国の政治を何度も揺るがしてきた。
例えば8年前の2012年4月。この時は、逆風だった与党をパク・クネ(朴槿恵)氏が最高責任者として勝利に導き、過半数を獲得。勢いを得たパク・クネ氏は、この年の12月、大統領に当選した。

逆に4年前2016年4月には当初の予想を覆し与党が惨敗。
その後、パク・クネ大統領は急速に求心力を失い、翌年、罷免されるまでに至った。
韓国政治に詳しい慶應義塾大学の西野純也教授は、次のように指摘する。
西野教授
「与党が第1党の座を逃すことになれば、国会で法案が通らなくなることは明らかで、ムン政権の支持率が急速に低下することは避けられない。選挙の結果によっては残りの国政運営がかなり左右されることになる」
「また、ソウル中心部の選挙区で与党のイ・ナギョン(李洛淵)前首相と、パク・クネ政権で首相を務めた最大野党のファン・ギョアン(黄教安)代表が対決する。この戦いは2年後の大統領選挙に向けた前哨戦の意味合いも強い」
つまり総選挙は、現政権を揺るがす可能性もあれば、次の大統領選挙の行方を占う最初の戦いになる可能性もあるのだ。

新型コロナの感染拡大 選挙はできるの?

ところで、韓国でも新型コロナウイルスの感染は広がっている。

日本と同じように韓国政府は、不要不急の外出を控えるよう呼びかけているが、それでも選挙をやるのか?
答えは「やる」。
韓国では、天変地異が起きた場合などに、大統領の権限で選挙を延期することもできる。感染の拡大で、一部の野党からは選挙の延期論も浮上した。

しかし、韓国メディアによると、これまで朝鮮戦争でも選挙は延期されなかったという。

今の国会議員の任期は5月29日に迫っていて、ムン政権は予定どおり4月15日に投開票を実施する方針。

日本とちょっと違う選挙制度

韓国の国会は、衆議院と参議院がある日本と違って、一院制で、解散もない。

定数は300。このうち選挙区が253議席、比例代表が47議席。
選挙区は、1つの選挙区で1人が選ばれる「小選挙区制度」。
比例代表は、得票率に応じて政党に議席が配分されるが、日本の制度にはない新たな仕組みが今回の選挙から導入された。
選挙区で当選者が少ない政党に優先的に比例代表の議席が配分される枠が設けられ、少数政党が議席を獲得しやすくなったとされる。

選挙権が得られる年齢は、日本は18歳。これまで韓国は19歳だった。これについても法改正で、今回から18歳に引き下げられ、18歳の誕生日を迎えていれば高校生も投票できるようになった。

5年と4年 この「ズレ」がポイント

ちなみに韓国の大統領の任期は5年、国会議員の任期は4年。この任期の「ズレ」がポイントだ。

大統領の5年の任期中、総選挙がいつ行われのるか、そのタイミングによって、さまざまな意味合いを持つ。
例えばイ・ミョンバク(李明博)元大統領の場合、任期中に2回、総選挙が行われた。

政権発足直後だった2008年は与党が圧勝し、大統領は政権運営の基盤を整えた。政権末期だった2012年は与党が勝利したものの、次の大統領になるパク・クネ氏が勢いを得て、イ大統領のレームダック化が進んだ。

選挙結果はムン政権の残り任期を左右する

では、今回のケースはどうか?

ムン大統領にとっては、任期が残り2年というタイミング。「中間評価」という位置づけになる。

韓国国会のホームページによると、3月31日の時点で、300議席のうち、ムン政権を支える革新系の与党「共に民主党」は120議席で過半数を下回る少数与党。

対する保守系の最大野党の「未来統合党」は92議席。

選挙戦は、2大政党の対決を軸に進むとみられ、双方とも第一党を目指す。

カギを握るのは有権者の3分の一を占めるとも言われる無党派層の人たちの投票行動。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、投票率も注目される。

韓国の国民は、ムン大統領にどのような「中間評価」を下すのだろうか。

日韓関係はどうなる?

このところ悪化した状況が続いている日韓関係。

そのきっかけになったのは、おととし(2018年)10月の韓国の最高裁判所の判決だ。
「太平洋戦争中に日本で強制的に働かされた」と韓国人4人が訴えた裁判で、日本企業に賠償を命じる判決を言い渡したものだ。

日本政府は、「徴用」をめぐる問題は、1965年の日韓請求権協定に基づき解決済みだとして、国際法違反の状態を是正するよう韓国政府に求めている。
これに対して、ムン政権は、三権分立の原則から司法判断を尊重するという姿勢を示している。

その後、去年(2019年)7月、日本政府は安全保障上の理由で、半導体の原材料など3品目について、韓国向けの輸出管理を厳格化。また、輸出手続きを簡素化する優遇措置の対象国から韓国を除外した。

これに対して韓国政府は、「徴用」をめぐる問題での報復だとして対抗措置をとる考えを示し、去年8月には、日本との軍事情報包括保護協定=GSOMIAを破棄すると通告。
失効が迫った去年11月、韓国政府は一転して、GSOMIAの維持を決めたが、韓国側は暫定的な措置だと主張していて、日本政府に輸出管理を厳しくした措置を撤回するよう求めている。

争点ではないが 選挙後は…

今回の総選挙で韓国の有権者が重視している政策は、「新型コロナウイルスへの対応」や「経済活性化」に集まっていて、日本との関係を含む「外交」はほとんど争点になっていない。

しかし、選挙の結果によっては、その後の日韓関係にもさまざまな影響が及びそうだ。

慶應義塾大学の西野純也教授は、次のような可能性を指摘した。
西野教授
「与党が勝利した場合は、日本に対して厳しい意見を持つ国会議員が増えることになり、対日政策も厳しくなる可能性がある」
「一方、与党が敗れた場合、対日政策の改善を求める保守派の野党が勢いを増して、厳しい対日世論も軟化し、日韓関係が改善する力学がはたらく可能性がある。ただ、韓国国内で革新派と保守派の対立がさらに深まれば、両者の考え方が最も対立する日本との歴史問題で与党は譲歩せず、結果的に日韓関係に悪い影響が及ぶ可能性もある」
日韓の間の懸案はいずれも、双方の外交当局が話し合いによる解決を目指しているが、そうした交渉に影響がでる可能性も指摘されている。
国際部記者
石井利喜
国際部記者
近藤由香利
国際部記者
金知英
国際部記者
白井綾乃