米病院で治療にあたる日本人医師「受け入れ能力超えてしまう」

米病院で治療にあたる日本人医師「受け入れ能力超えてしまう」
新型コロナウイルスの感染が深刻化しているニューヨーク市の近郊の病院で治療にあたる日本人の医師がNHKのインタビューに応じ、重症患者が増え続け、このままの状態が続けば医療崩壊が起きかねない危機的な状況にあることを明らかにしました。
アメリカ・ニューヨーク州では、大都市ニューヨーク市を中心に感染が急激に拡大し、29日、感染者は5万9500人余りに上り、965人が亡くなっています。

こうした中、ニューヨーク市と川を隔てたニュージャージー州の病院の救急救命室で治療にあたる感染症が専門の斎藤孝医師がNHKのインタビューに応じました。

斎藤医師は「医師や看護師にマスクなどが十分行き渡っておらず、朝から晩まで1つのマスクを使い続けている」と述べ、医療従事者が感染の危険にさらされている現場の状況を説明しました。

また、患者の状況について「救急にやってくる患者の4分の3が新型コロナウイルスによる肺炎患者で、日々増え続けている。このペースでは、近いうちにこの病院の受け入れ能力を超えてしまう」と述べ、医療崩壊が起きかねない危機的な状況にあることを明らかにしました。

そのうえで斎藤医師は、「一度、重症化すると入院が長引くのでベッド数の確保も課題で、人工呼吸器なども不足している」と、患者を受け入れる臨時の施設や人工呼吸器などの医療機器の確保が急務であると訴えています。
一方、フランスでは、29日の時点で、新型コロナウイルスの感染者が4万人を超えたほか、亡くなった人は2606人とヨーロッパでは、イタリア、スペインに次いで多く、医療現場は急増する患者への対応に追われています。

パリ近郊の総合病院で研修を受けている折口達志医師が(25)NHKの取材に応じ、現場の状況について語りました。

病院では新型コロナウイルスによる肺炎が重症化した患者に対応していて、先月末に1日数人だった重症患者は現在は1日100人ほどに急増しているということです。

また、感染した患者を診察するたび、ウイルスを除去するため換気を20分間行い、床の消毒も行うことから、通常の診察よりも時間がかかるということです。

折口さんは「毎日いつ感染のピークが来るのか、不安を抱えながら働いていて気が休まらない」と不安に思う胸の内を語りました。また、病院には集中治療用のベッドが20床あるものの、ほぼ埋まっている状況が続いていて、助かる見込みが少ない人は集中治療を行わないという判断をせざるをえないことも多いということで、折口さんは、「担当医師は心身を削られるような状況だと聞いている」と話していました。

折口さんによりますと、物資の不足が深刻になっていて、本来なら頻繁に交換することが望ましいマスクや防護服は4時間に1度交換するルールになったほか、マスクなどの着用が必要となる家族の見舞いについては、最期をみとる立ち会いであっても家族1人に制限されているということで、「家族につらい思いをさせていると思う」と話し、現場の窮状を訴えていました。