コメディアンの志村けんさん死去 新型コロナ感染で肺炎発症

コメディアンの志村けんさん死去 新型コロナ感染で肺炎発症
新型コロナウイルスに感染し、入院して治療を受けていたコメディアンの志村けんさんが29日夜、新型コロナウイルスによる肺炎のため東京都内の病院で亡くなりました。70歳でした。
志村けんさんは3月17日にけん怠感などの症状が出たあと、東京都内の病院で重度の肺炎と診断されて入院し、25日に所属事務所が新型コロナウイルスへの感染を公表しました。

その後、治療が続けられていましたが、事務所によりますと、29日午後11時すぎ、新型コロナウイルスによる肺炎のため、東京都内の病院で亡くなったということです。

志村さんは昭和25年に東京 東村山市で生まれ、高校時代に、いかりや長介さんをリーダーとする人気コミックバンド「ザ・ドリフターズ」の付き人となり、昭和49年に正式なメンバーとなりました。

民放の公開バラエティー番組「8時だョ!全員集合」では持ちネタの「東村山音頭」や、チョビひげ姿で加藤茶さんと踊る「ヒゲダンス」などを披露し、一躍人気メンバーとなりました。

その後も自身の冠番組で「バカ殿様」や「変なおじさん」などの個性的なキャラクターを生み出し、「アイーン」や「だっふんだ」などのギャグは世代を超えて親しまれてきました。

長年にわたってテレビのタレントとして活躍する一方、平成18年からは自身が座長を務める舞台の公演を続けるなど、精力的に活動していました。

30日から放送が始まったNHKの連続テレビ小説「エール」では日本を代表する作曲家の役で出演することになっていて、今月6日にも収録に臨んでいました。

また、ことし12月に公開予定の山田洋次監督の映画「キネマの神様」では初めて主演を務めることになっていて来月から撮影が始まる予定でした。

しかし新型コロナウイルスへの感染を公表した翌日となる今月26日、所属事務所から出演を辞退することが発表されました。

このほか新型コロナウイルスの影響で延期されたこの夏の東京オリンピック・パラリンピックでは聖火ランナーに選ばれ、ことし7月に都内を走る予定でした。

志村さんは新型コロナウイルスによる肺炎のため、29日午後11時すぎ、東京都内の病院で亡くなりました。70歳でした。

発症から2週間ほどで亡くなる

新型コロナウイルスに感染した志村けんさんは、肺炎の治療を続けていましたが、病状は回復せず、発症から2週間ほどで亡くなりました。

所属事務所によりますと、志村さんは今月17日、けん怠感を訴え、自宅で静養を続けていました。

その後、19日になって、発熱や呼吸困難の症状が現れたため、翌日、東京都内の病院に搬送され、重度の肺炎と診断されて入院しました。

入院の3日後の23日に、検査の結果、新型コロナウイルスへの感染が確認され、その後、人工心肺装置を使うなどして治療を続けていたということですが、29日夜遅く、都内の病院で亡くなりました。

所属事務所「メンバーは一様にショック受けていた」

志村けんさんが所属する事務所の担当者は東京 港区の事務所前で報道陣の取材に応じ、「昨晩、午後11時10分に新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなったと病院から連絡をもらいました。ザ・ドリフターズのメンバーには電話で亡くなったことを伝えましたが、一様にショックを受けていました」と語りました。

そのうえで、「応援していただいた皆さんの声援や励ましのことばには感謝の気持ちでいっぱいです。本人もこういう亡くなりかたをするとは思っていなかったでしょうが、最後まで笑いを届けるという使命をもってがんばってきたと思います。今後、お別れの会などを開くよう検討したいと考えています」と話していました。

自宅玄関先に花手向ける人も

都内にある志村けんさんの自宅には近所の人が訪れて、玄関先に花を手向けていました。

このうち近くに住む70代の女性は手書きのメッセージを添えた花束を手向けました。メッセージには「けんさんへ 子どもたちが小さいころ、八時になるのを待っていました。ありがとうございました」と書かれていました。

女性は「子どもたちが小さい頃、志村さんが近所に引っ越して来たと喜んでいました。子どもたちは、『8時だョ!全員集合』が大好きで、いつも放送を楽しみに待っていました。こういった形で志村さんが亡くなったのはとてもさみしいし、私も年が近いので、身につまされる思いです」と話していました。

街の人たちは

コメディアンの志村けんさんが亡くなったことについて、東京の渋谷駅前で話を聞きました。

40代の女性は「小さい頃からテレビで見ていたので、びっくりしました。芸能界を引っ張って来られた方で、長生きしてほしかったです。新型コロナウイルスにかからなければもっと長生きされていたと思うので、このニュースで、お年寄りも若者もいま置かれている状況を再認識するではないかと思います」と話していました。

また20代の男性は「当たり前にいる人で、すごく活躍されていた方だったので、その姿をもう見られないというのは、まだ実感はわかないですが、喪失感があります。新型コロナウイルスでこうして身近に感じる方が亡くなられると状況が迫ってきてる実感があり、気を引き締めないといけないと思います」と話していました。
大阪市内ではショックだという声や、感染の怖さを身近に感じたといった声が相次ぎました。

このうち72歳の男性は「びっくりしました。志村さんと同年代ですが、新型コロナウイルスの感染の怖さが、自分の身に迫ってきたように感じます」と話していました。

また70歳の女性は「テレビで知っている人なのでショックを受けました。入院して治療も受けていると報道されていましたが、それでも亡くなったと聞くと本当に怖いなと思います」と話していました。

21歳の男子大学生は「感染が確認されてから、こんなに早く亡くなってしまったことに驚きました。お笑いの番組で明るく、『大丈夫だあ』と言っているイメージが強く、亡くなってしまうとは思っていなかったので、今までひと事だった感染の怖さが一気に身近なものと感じてしまいました」と話していました。

来月から社会人になる24歳の男性は「有名人で知っている人が亡くなったことに衝撃を受けるとともに、感染のリスクを甘く考えてはいけないなと思いました」と話していました。

都知事「新型コロナの危険性についてメッセージ届けて下さった」

東京都の小池知事は記者団に対し、コメディアンの志村けんさんが亡くなったことについて「謹んでお悔やみを申し上げたい。エンターテイナーとして、皆に楽しみや笑いを届けて下さったことに感謝したい。最期に、悲しみと、新型コロナウイルスの危険性について、メッセージを届けて下さったと思う」と述べました。

官房長官「大変残念に思う」

菅官房長官は午前の記者会見で、「大変残念に思う。心よりご冥福をお祈り申し上げる」と述べました。

そのうえで、「今がまさに国内の急速な感染拡大を回避するために極めて重要な時期であるとの認識のもとに、おととい策定した基本的対処方針に基づき、感染拡大の防止に全力で取り組む」と述べました。

海外メディア「日本の喜劇王が亡くなった」

志村けんさんの死去を海外のメディアも大きく伝えました。

ロイター通信は「1970年代初期から活動を続ける志村さんは日本で最も有名なコメディアンの1人だ」として、志村さんの功績を報じました。

AP通信は「彼のドタバタ劇とおかしな表情はすべての世代を魅了した」と伝え、志村さんが出演した数々の番組を紹介しました。

さらに香港のメディアは「日本の喜劇王が亡くなった。志村さんは日本のお笑いの地位を確立させた」と伝えました。

「エール」収録分は予定どおり放送へ

志村さんは、30日から放送が始まったNHKの連続テレビ小説「エール」に日本を代表する作曲家の役で出演することになっています。

去年の12月からこれまでに4回の収録にのぞみ、直近の収録は3月6日でした。また次回は来月10日に収録に4月のぞむ予定でした。

収録が終わったシーンは予定どおり放送されることになっていて、志村さんが最初にドラマに登場するのはことし5月1日の予定です。

感染症の専門家「症状が急激に悪化という特徴」

志村けんさんが新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなったことについて、感染症の専門家で東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授は「70歳という年齢で志村さんが亡くなったことは非常に衝撃が大きいと思う。入院から1週間余りで亡くなったという事実は、このウイルスによる症状が特に高齢者や持病のある人の場合、急激に悪化していくという特徴を示している。さらに人工心肺を使った治療を行っても、救えない命があるということを重く受け止めなければならない」と指摘しました。

そのうえで、「本人がどれだけ気をつけていても感染を避けるのはとても難しい。若い世代も含めて社会として感染を拡大させず、重症化する人が増えることをどう防ぐかということに私たち一人ひとりが真剣に向き合わなければならない。なにより密閉・密集・密接の『3つの密』を避けること、こまめな手洗いなどの感染予防を徹底することを改めて心がける必要がある」と話していました。

日本医師会会長「厳しい病気であることを認識して」

日本医師会の横倉会長は記者会見で、「国民の皆さんも相当なショックを受けられていると思うが、この病気がそれだけ厳しい病気であることを認識していただきたい」と述べました。