「強大な経済財政政策を実施すべき」 G20首脳が一致

「強大な経済財政政策を実施すべき」 G20首脳が一致
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新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、G20=主要20か国の首脳によるテレビ会議が26日夜に行われ、感染の収束に向けて、治療薬などの開発を加速させるとともに、強大な経済財政政策を実施すべきだという認識で一致しました。
新型コロナウイルスの感染が世界的に深刻な状況となっていることを受けて、G20=主要20か国の首脳は、26日午後9時ごろからおよそ2時間、臨時のテレビ会議を行い、感染拡大への対応策をめぐって意見を交わしました。

リードスピーカーを務めた安倍総理大臣は、感染の収束に向けて、WHO=世界保健機関や民間部門を含め世界の英知を結集させて、治療薬などの開発を一気に加速させるとともに、リーマンショックの際と同様に、今回もG20が底力を示す時だとして、G20全体として強大な経済財政政策を実施すべきだと呼びかけ、各国首脳は同様の認識で一致しました。

また、東京オリンピック・パラリンピックについて、安倍総理大臣が、1年程度延期し、遅くとも来年夏までに開催することで、IOC=国際オリンピック委員会のバッハ会長と合意したことを説明したうえで、人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しとして完全な形で開催する決意を示したのに対し、各国首脳からは理解と支持が示されました。

このあと、G20の首脳は、感染の抑制に向けて、治療薬などの研究開発を加速させるとともに、深刻な影響が懸念される世界経済への対応として、5兆ドル、日本円にしておよそ550兆円を超える資金を注入することなどを盛り込んだ首脳声明を発表しました。

首相声明の内容

G20首脳によるテレビ会議のあと発表された首脳声明では、過去に例を見ない新型コロナウイルスのパンデミック=世界的な大流行と闘うため、大規模かつ科学に基づくグローバルな対応が必要だとして、この共通の脅威に対して、共同戦線を張るとしています。

そして、感染の抑制に向けて、
◇すべての必要な公衆衛生上の措置を取るとともに、十分な資金の確保を目指すほか
◇治療薬やワクチンの研究開発資金を増加し、速やかな開発・製造・配布に向けて民間部門を含めた調整を強化するとしています。

また、深刻な影響が懸念される世界経済への対応については、ダメージを最小化するとともに、成長を回復し、市場の安定を維持するため、すべての政策手段を用いて、できるかぎりの対応を行うとしています。

そのうえで、経済財政政策や金融政策として、世界経済に5兆ドル、日本円にしておよそ550兆円を超える資金を注入するとしています。

また、各国の財務相と中央銀行総裁に対し、新型コロナウイルスに対する行動計画を作成するとともに、国際的な財政支援を迅速に実施するため、定期的に調整を行うことを要請するとしています。

さらに、世界の主な中央銀行が実施したドル資金供給の拡充や、各国の金融当局でつくるFSB=金融安定理事会による金融市場を支えるための取り組み、それに、IMF=国際通貨基金による各国への支援措置を歓迎するとしています。

また、それぞれの国民のニーズに基づき、国境を越えて必要不可欠な医療物資や重要な農産品、サービスの流通の確保に取り組むとともに、すべての人々の健康と福祉を支えるため、国際的なサプライチェーンの混乱の解決に取り組むとしています。

一方、保健制度や経済の面で課題に対処するのが特に難しいアフリカや島しょ国の開発途上国などにもたらされる危険を深刻に懸念しているとしたうえで、技術支援を強化し、開発や人道上の資金を動員する用意があるとしています。
そして、東京オリンピック・パラリンピックの日程を遅くとも来年夏までに変更したIOC=国際オリンピック委員会の決定を評価するとしたうえで、人類の力強さの証しとして、完全な形で東京大会を主催するという日本の決意を称賛するとしています。

最後に、G20の首脳は、状況に応じて、再び会合を行う用意があるとしています。

中国の習主席「国際社会は団結を」

G20=主要20か国の首脳によるテレビ会議で中国の習近平国家主席は、新型コロナウイルスの感染状況について、「多大な努力と犠牲を経て、中国の状況は改善に向かっている」としたうえで、「世界の状況は大きな懸念であり、国際社会は団結して全面的に協力を強化すべきだ」と述べて、各国が一致団結して対応するよう呼びかけました。

そして、世界経済の落ち込みを防ぐため、「G20が共同の措置をとって関税の引き下げや障壁の撤廃によって貿易を円滑にし、世界経済の回復に向けて力強いメッセージを出すよう呼びかける」と述べて、貿易の拡大に向けて共同で取り組むべきだという立場を示しました。

一方で、中国政府の当初の対応の遅れや情報統制については触れず、「ウイルスに国境はなく、感染拡大は共通の敵だ」としたうえで、「中国は、WHOが指導的な役割を発揮することを支持する」と述べ、WHOを中心に国際的な感染予防の仕組みを強化するべきだという考えを示しました。