J2甲府 ねらいは環境? 18期連続黒字の“経営感覚”とは

J2甲府 ねらいは環境? 18期連続黒字の“経営感覚”とは
新型コロナウイルスの影響で公式戦の中断が続くJリーグ。事態の収束を待ちわびるサッカーファンに話題を1つ。J2のヴァンフォーレ甲府が、チームの活動で出る二酸化炭素の削減に乗り出したことをご存じでしょうか?背景には、社会貢献にとどまらない経営戦略があります。(甲府放送局記者 古堅厚人)

排出量を“見える化”

3年前、残念ながらJ2に降格したヴァンフォーレ甲府。しかし、チームの経営は、すでに決算が発表されている去年1月期まで18期連続で経常黒字の堅実ぶりです。

そのヴァンフォーレが新たに取り組んでいるのが二酸化炭素の排出削減です。といっても、試合中の選手の呼吸を減らすわけではありません。東京都市大学などの協力を得て、商品の製造や配送、廃棄などで出た二酸化炭素の量を示す「カーボンフットプリント」と呼ばれる手法をもとに、チームの活動によって出た二酸化炭素の量を推計しました。

自分たちがどれだけの二酸化炭素を出しているかを「見える化」することで、どのような削減策が効果的かも浮かび上がると考えたのです。

見えてきたものは?

その推計によると、おととし2月から去年1月までの1年間に、チームが出した二酸化炭素の量は2230トン。一般家庭に換算するとおよそ700世帯分にあたります。このうちの24%が、観客がスタジアムを訪れる際に自家用車やタクシーなどを使うことによるものでした。
さらに分析すると、そのほとんどは自家用車によるものでした。この人たちを、バスなどの公共交通機関を利用するようにしむけられれば、排出量を効果的に減らせるというわけです。

一方、最も大きな割合を占めたのが、遠征やグッズ販売などチームの運営に直接関わる「フロント・チーム」という項目。全体の62%に上ります。いきなりドカンと減らすのは難しいということですが、例えばチームの移動に電気自動車を使うなど、具体的な削減策を打ち出したいと考えています。

なぜ、サッカーチームが?

では、なぜ、サッカーチームが環境問題に熱心に取り組もうとしているのでしょうか。もちろん、社会貢献という理由はありますが、それだけにとどまらない経営戦略が根底にあります。

こうした取り組みは、チームの運営を支えるスポンサーの獲得やファン層の拡大にもつながると考えているのです。

ヴァンフォーレの本拠地がある山梨県の人口は81万人と、全国の都道府県で下から6番目。スポンサーなどに恵まれた大都市のチームと比べると、経営環境としては厳しいといえます。だからこそ、独自の取り組みによって、小規模でも特徴あるクラブとして価値を高めたいというねらいがあります。

いま、ビジネスの世界では、投資先を選ぶ基準として、収益性だけでなく、環境や社会問題への取り組みを重視する傾向が欧米を中心に広がっています。ヴァンフォーレは、こうした世界の動きに、サッカー界でいち早く反応しているのです。
佐久間ゼネラルマネージャー
「環境問題に取り組む団体や組織を評価しようという世界的な潮流を、クラブとしてとらえていく必要がある。スポーツ界から環境問題に取り組むことで、クラブのブランド力を高めたい」

国も注目 動きは広がるか

ヴァンフォーレの試みには、国も注目しています。3月、佐久間ゼネラルマネージャーは小泉環境大臣と面会。小泉大臣からは、環境問題の解決に向けて「スポーツが持つ強い発信力を活用したい」と期待を寄せられたということです。

ヴァンフォーレは、この取り組みをJリーグ全体に働きかけようとしています。多くのチームが環境問題に取り組むことで、Jリーグ全体のブランド力を高めることにもつながると考えているのです。

18期連続で黒字をキープできた秘けつは、こういった時代の流れを読んだ経営感覚にあるのかもしれません。世界のトレンドを取り込もうと始まったヴァンフォーレの取り組みが日本のスポーツ界にどれだけ影響を及ぼせるか、取材を続けたいと思います。
甲府放送局記者
古堅厚人
平成27年入局
宇都宮局を経て現在、甲府局で県政やスポーツを担当