東京五輪・パラ 延期支持する声の一方で影響広がる

東京五輪・パラ 延期支持する声の一方で影響広がる
東京オリンピック・パラリンピックが1年程度延期されることについて、スポンサー企業からは延期決定を支持する声が目立っている一方、競技会場や宿泊施設などに影響が広がっています。

アサヒビール「ポジティブに受け止める」

大会スポンサー企業の一つ、アサヒビールは「選手、観客、大会関係者の安全・安心のための延期決定を支持します。1年延期をポジティブに受け止め、日本全体が大会に向けて盛り上がっていけるように延期される時間を有効活用し、更なる盛り上げ策を展開していきたい」としています。

NEC「決定を尊重」

NECは「あらゆる関係者にとって望ましい環境で大会を迎えられることが最良と考えており、今回の開催延期の決定を尊重します。引き続き、安全・安心な大会の実現に向けて最大限協力していきます」としています。

日本郵政「スポンサーとしての責務果たす」

日本郵政は「世界的に新型コロナウイルス感染症が大きな問題になっている状況においては、やむを得ない措置と考えます。引き続き、IOCなどの動向を注視しつつスポンサー企業としての責務を果たして参ります」としています。

東京オリンピック・パラリンピックではトヨタ自動車が選手の移動に使われる自動運転の電気自動車を提供するなど、日本の先端技術を世界にアピールする場にもなる予定になっています。

東京ガス「中止でなくありがたい」

オフィシャルパートナーになっている東京ガスの内田高史社長は記者会見で「延期は大変残念だが、今の状況を考えればしかたのない、当然の措置だ。むしろ中止でなく延期になったのは大変ありがたい。来年ということなので、これからどういう取り組みをしていくか考えていきたい」と述べました。

その一方でスポンサーを継続するかどうかについて「継続したいが、われわれの経済的な負担がどれぐらい増えるのか何も手元にないので、今の時点ではやるともやらないとも申し上げられない」と述べました。

また、新型コロナウイルスの感染拡大がガスの需要に与える影響について、内田社長は「手元に数字はないが、ホテル業界や飲食業界、あるいは学校が休校になった影響で需要は落ちていると思われる。また、工場を止めなければならないという話も聞こえているので、今後工業用で落ちてくることも考えられる」と述べました。

関西のスポンサー企業 延期を支持

東京オリンピック・パラリンピックが1年程度延期されることについて、関西のスポンサー企業からは延期の決定を支持する声が聞かれています。

パナソニックは、1988年にカナダのカルガリーで開かれた冬季オリンピック以来、30年以上にわたってオリンピックのスポンサーを担ってきました。

会社では「延期の決定を支持し、来年の開催に向けて協力していく。IOC=国際オリンピック委員会のバッハ会長とともに、オリンピックの聖火が人類が経験している暗いトンネルの先に光ることを願っている」とのコメントを発表しました。

また、大阪市に本社がある大和ハウス工業は「延期の決定は残念だが、安全な大会を実施するために必要なことだ。今後の大会の日程や方針については示されていないものの、大会の実現に向けて最大限、協力していきたい」とコメントしています。

宿泊施設では

東京オリンピック・パラリンピックが1年程度延期されることを受けて、当初予定していた期間中に大会関係者や一般の宿泊客の予約を受けていた宿泊施設では今後、大量のキャンセルが出る可能性があり、対応を検討しています。

大会招致の際の「立候補ファイル」によりますと、期間中に大会関係者やスポンサー、メディアなどの宿泊需要として、1日当たり最大4万6000室程度を見込んでいて、組織委員会では、宿泊先の確保を進めてきました。

延期によって、観客の宿泊需要も含めて宿泊施設では今後、大量のキャンセルが出る可能性があり、この影響をどう緩和するかが課題となっています。

このうち帝国ホテルでは、期間中、大会関係者の宿泊用に数百室を確保していたほか、一般の宿泊客から入っていた予約もあり、満室に近い状態でした。ホテルはこの期間中の予約の扱いや新しい日程が決まったあとの部屋の確保などについて今後、適切に対応したいと話しています。


このほか、京王プラザホテルは大会関係者の宿泊用に数百室を確保しているほか、プリンスホテルも、大会関係者向けに部屋を用意するなどホテル各社はこの期間、まとまった予約を受けていて、今回の延期を受けて対応を検討しているということです。

東京都ホテル旅館生活衛生同業組合の須藤茂実事務局長は「足元で懸念しているのは大会組織委員会などのために確保していた部屋のキャンセル料金がどうなるのかということだ。新型コロナウイルスの感染拡大の影響でキャンセルが相次ぎ、東京オリンピック・パラリンピックが最後の頼みだったが、今回、延期となってしまった。組合員からはこの1年間耐えられるかどうか不安だという声があがっている」と話していました。

競技会場では

東京オリンピック・パラリンピックの延期を受け、競技会場の1つの千葉市の幕張メッセでは、運営への影響が懸念されています。

千葉市の幕張メッセは、レスリングやフェンシングなど一つの会場としては最多の7つの競技が行われる予定で、これに伴って、施設の利用が来月21日から9月20日まで制限される予定でした。

通常の年では、この5か月間におよそ300を超えるイベントや会議が開かれますが、ことしは、多くの主催者が中止にしたり、会場を県外に移したりする特別な対応を取ったため、今後、大会延期の正式な連絡を待って、この間の施設の運営を再検討することにしています。

一方、来年の予定については、会場の予約は1年前から受け付けが始まるため、4月以降の予約は正式には入っていませんが、すでに複数のイベント主催者から仮予約の相談が寄せられているため、東京大会の延期で、来年も、同じ期間、施設の利用が制限されることになった場合、かなりの調整が必要になる見通しだということです。

さらに、ことし予定していた東京大会の会場としての使用料については、大会組織委員会との間で「使用開始までに全額支払う」ことで合意していたため、まだ全く支払われていないということです。千葉県では大会関連の使用料の総額は、およそ35億円にのぼると試算していました。

運営会社の筆頭株主である千葉県は、こうした金銭面での交渉も含め、なるべく早く今後の対応を大会組織委員会と協議したいとしていますが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、先月と今月だけで50以上の催しがキャンセルされたうえ、今後も大規模イベントの自粛が続く見通しで、厳しい運営を強いられることが予想されます。

選手村となるマンションは

東京オリンピック・パラリンピックが1年程度、延期されることで選手村の跡地に整備されるマンションの入居時期に遅れが生じることが懸念されています。

東京 中央区の晴海地区で建設が進められている選手村は、大会後には、建物や周辺の土地を活用して23棟のマンションが整備され、分譲と賃貸を合わせて65600戸余りが供給される予定です。

すでに去年7月から一部の物件の販売が始まっていて、940戸のうち、893戸の購入が決まっています。

東京大会が終わったあと、来年からリフォームが行われ、2023年3月下旬以降、順次、入居できるようになる予定ですが、大会の延期でリフォームの工事に入る時期も遅くなり、入居時期に遅れが生じることが懸念されています。

このため開発を手がける不動産会社では、入居前のリフォームの工期を短縮できるかや、入居時期が遅れた場合の購入者への補償の扱いがどうなるのかなどについて確認を進めているということです。

3LDKの部屋を6000万円台で契約したという都内の30代の会社員は、「入居が遅れることは、しかたないですが、選手村の食堂を改修して作られる小学校に、次女がちょうど1年生で入学する予定だったので改修が延びた場合、計画がくるってしまいます。今の学区に入学して、すぐ転校となると、友達とか制服とか影響が大きいと思います。ほかにも入居までの家賃負担など、考えられる課題が山ほどあります。都や売り主が落ち着いたら、しっかり確認したいです」と話していました。

東京ビッグサイト 利用者への影響懸念

東京 江東区にある東京ビッグサイトは、東京オリンピック・パラリンピックの報道・放送の拠点となるメディアセンターとして使われます。

しかし、大会が延期されると、ここを重要なビジネスの場として利用してきた業界には、大きな影響がでると懸念されています。

東京ビックサイトは、全国最大の商談の場で、来年4月までの展示会や商談会などの予約はすでに200件以上入っていますが、大会の延期によってこれらのイベントが開催できなくなるおそれが出ています。

イベントや展示会の企画会社などでつくる「日本展示会協会」の浜田憲尚会長によりますと、これらの展示会に参加するのは、主に中小企業で、その数は、延べ10万社近くに上るといいます。

これらの中小企業にとって、ビッグサイトへの出展は、大きなビジネスチャンスとなっていて、その機会が失われれば、大きな損失になると懸念しています。

浜田さんは「新型コロナウイルスの感染拡大の影響でイベントが相次いで中止となっている業界としては危機的な状況だ。特に中小企業にとっては商談の場が長期にわたって失われて死活問題になる。すでに予約している展示会などが予定どおり開催されることを望んでいる」と話していました。


新潟県燕市にある従業員30人の金属加工メーカー「中野科学」は、精密な研磨技術を生かして、大手メーカーの半導体の製造装置などに使われる部品を製造しています。

自社の努力だけでは、大々的に新商品を宣伝できず、これまでも、東京ビッグサイトで開かれる大規模な展示会が重要な商談の場となってきました。

ところが、新型コロナウイルスの影響で、ことしの展示会はすでに延期されさらに、東京大会の延期により、来年も展示会が開かれないことになれば、新製品を発表する場が奪われ、経営に大きな打撃を受けるおそれがあるということです。

中野信男社長は「会社のホームページでPRするだけでは限界があり、営業に不安を感じています。オリンピックは成功してほしいが、その陰で厳しい状況に置かれる中小企業がいることを知ってもらいたい。国には対策を検討してほしい」と話しています。

同じく懸念の声は、大阪から毎年出展していた中小企業からも相次いでいます。大阪 堺市の金属加工メーカー「太陽パーツ」も、東京ビッグサイトで開かれる機械部品や半導体産業の展示会に毎年出展しています。

来年春の展示会にも、軽量で高性能な金型を作る製法を発表しようと準備していたということです。

城岡陽志社長は「一度に400枚、500枚の名刺を交換できる展示会の機会が奪われると売り上げは大幅に落ち、経営の死活問題となるので避けてほしい」と訴えています。

また、同じく16年前から、東京ビッグサイトの展示会に出展し続けている城東区の金属部品メーカー「三元ラセン管工業」の高嶋博会長も「製品を、直接見てもらうことで初めて商売につながる。1年間、展示会が開けないと1年後、2年後の新規開拓ができなくなり、大変なことになる」と不安を語っています。

ボランティア予定者は

東京オリンピック・パラリンピックの延期が決まったことで、ボランティア体験に参加したり、試合の観戦に招待されたりするはずだった高校生のなかには、受験勉強で参加が難しくなったり、大会の開催が卒業後になって観戦ができなくなったりする生徒もいて、「不安だ」とか「残念だ」といった声が聞かれました。

東京都は、大会の期間中、パブリックビューイングの会場で観光案内を行うなどボランティア体験に参加する中高生を募集していて、数千人規模の生徒が参加する予定でした。

このうち、杉並区の都立西高校では、およそ20人の生徒が申し込んでいます。参加する予定だった生徒のひとりは「一生に一度の貴重な経験になると思っていましたが、来年は受験生なので参加できるか不安です」と話していました。

さらに、都は都内の小中学校、高校などで希望する人数分の観戦チケットを確保していて、この高校ではおよそ350人がバドミントンの試合を観戦する予定でした。

しかし、延期が決まったことで、大会の開催が卒業後になる生徒もいて、観戦の機会を失うことになります。

来月から3年になる生徒のひとりは「スポーツ観戦が好きで楽しみにしてましたが、卒業してしまうので観戦できなくなり残念です」と話していました。

都立西高校の萩原聡校長は「残念だがしかたがないと思います。学校行事などにも影響が出るので、開催時期はなるべく早く決めていただけたらと思う」と話していました。

一方、就職活動を見送ってまでボランティア活動に参加する予定だった女子大学生は、延期後の大会にも参加するかどうか迷っています。

大阪府に住む大学4年生の宮原怜子さん(22)は、4年前のリオデジャネイロオリンピックを見て感動したことをきっかけに「真剣に取り組む選手たちを応援する一生に一度のチャンスかもしれない」と思い、ボランティアに応募したということです。

そして東京オリンピックで大会関係者へのIDの発行を手伝うボランティアに選ばれていました。

宮原さんはボランティアに全力で携ろうと、去年夏の教員試験の受験を見送り、卒業の時期も半年間延期していました。懸念は学費がよけいにかかることでしたが、母親に相談すると「やりたいことをやったらいい」と背中を押してくれたということです。

こうした中での延期を受け、宮原さんは、「就職のためことし夏に試験を受けるか、来年のボランティアに参加するために先延ばしにするか迷っています」と話しています。

そのうえで「すべての予定が狂ってしまいましたが、ボランティアとして活動したい気持ちは強いので、早くオリンピックの新しい日程が決まって、いま選ばれているボランティアの人たちへの対応がどうなるのか連絡をもらいたいです」と話していました。

教科書にも影響

来年4月から中学校で使われる教科書には、東京オリンピック・パラリンピックに関する記述が多く含まれていました。

ところが、検定が終わった直後に、東京大会の延期が決まったため、教科書会社は、内容を訂正申請するかなど対応に追われています。

来年4月から中学校で使われる教科書は、24日、文部科学省による検定が終了しました。これらの教科書には、2020年の東京オリンピック・パラリンピックについて、その理念やホストタウンなどの記述が多く盛り込まれていました。

ところが、24日夜、東京大会の延期が決まり、各教科書会社は内容を訂正申請をどうするかなどの対応に追われています。

ある教科書会社の担当者は「延期には驚きました。早急にどの程度、修正が必要なのか確認しています」などと話しています。

文部科学省は「延期が決まったばかりで、修正が必要なのかどうか各教科書会社で検討していると思う。今後、訂正申請があれば適切に対応していきたい」としています。