地価上昇率全国一 ニセコに異変!?

地価上昇率全国一 ニセコに異変!?
国土交通省が18日に発表した地価公示。商業地、住宅地とも上昇率が全国でトップだった場所、ご存じでしょうか。北海道の倶知安町でした。「くっちゃんちょう」と読みます。スキーリゾートとして知られる「ニセコ」地区にあると言えば、わかるでしょうか。札幌から車で2時間ほどかかる距離にありながら、世界各国から外国人観光客が続々と訪れ、活発な投資が地価を引っ張り上げてきました。ところが、「今、ニセコに異変が現れている」という話を耳にしました。観光産業と地域が一体となって成長し、観光の先進地となってきたニセコ。そのニセコにいったい何が起こっているのか、探ってみました。(小樽支局記者 橋本真爾)

閑散とするニセコ地区

倶知安町のスキー場。ここ数年は、魅力のパウダースノーを楽しむ大勢の外国人観光客でごった返すのが見慣れた風景でした。そのにぎわいが、ニセコ地区への投資の原動力になってきたのです。ところが、そのスキー場がこのところ、閑散としています。大きな要因は、ここでも新型コロナウイルスの感染拡大。3月の利用客は例年の半分以下にとどまっているといいます。スキー場にいた外国人観光客に聞いてみたところ、「どこを滑っても周りには誰もいない」と喜んでいいのかどうか、複雑な表情を浮かべていました。
影響は高級ホテルにも及んでいます。スキー場に程近い「シャレーアイビー ヒラフ」に取材すると、この冬、売り上げが4割落ち込んだということでした。ロビーにも人けが感じられず、4月末からの大型連休まで低調な予約が続いているといいます。
岩佐信 ホテルマネージャー
「2月の後半あたりから明らかに、新型コロナウイルスの影響は肌で感じ始めるようになっている。北海道のイメージがかなり厳しい状況で、国内客への影響もかなり懸念される」

営業を打ち切る飲食店も

営業を打ち切る店も出ています。町内で毎年、冬の時期限定で開いているシーフード・レストラン「エゾ シーフード」は、3月末まで予定していた営業を1週間以上前倒しで終えました。予約の状況をタブレット端末で見せてもらうと、キャンセルを示すという赤の表示ばかり。2月中旬以降の予約は、およそ70%がキャンセルされたといいます。
この店では、新鮮な海産物を扱うため、客が少ないと仕入れた食材がロスになってしまいます。この状況が続くと、赤字が膨らんでしまう懸念があり、営業を打ち切るという苦渋の決断を強いられました。
レストランのオーナー ジェームス ギャラガーさん
「状況がどんどん変わって厳しくなってきて、閉めるしかなくなりました」

不動産取引に異変が

こうした影響がこれまで勢いがあった、ニセコ地区の不動産取引に、影を落とし始めています。実態を聞こうとニセコ地区を中心に、不動産の売買や仲介を手がける会社「日本信達」を訪問し、石井秀幸社長に話を聞きました。

これまで中国人など海外の投資家を相手に取り引きを行ってきたという石井社長。ところが、中国からの入国が難しくなった2月以降、物件の視察が10件以上、ことごとく中止になりました。交渉を進めにくくなってしまった結果、ことしに入ってからの売り上げが去年の半分にまで落ち込んでいるといいます。
石井社長
「スキーリゾート地に投資したいっていう中国の富裕層の人たちがドンッと増えたのがここ2、3年なんです。しかし、今回『日本買い』をする投資家の人たちが来られなくなってしまった。このため取り引きは目に見えて減速すると思う。北海道っていうのがマイナスのブランドになっている」
それでも苦境を打開しようと、石井社長は、テレビ電話を使ってビジネスを進めようとしています。取材に訪れたこの日には、すでに取り引き実績のある中国人投資家と商談をしました。しかし、相手は投資の意欲はあるものの、日本への入国が難しいため、今は検討する段階にないという反応でした。投資家が「コロナで異常、経済も異常。一日も早く行きたいけれど」とことばに詰まっていたのが印象に残りました。

全国随一の活況を呈していたニセコ地区の不動産取り引き。石井社長は、景気や金融市場の先行きが不透明になっている間は、厳しさが続くとみています。
石井社長
「景気不安が起こるとお金がストップしますし、不動産の購入もストップします。リゾートに対しての投資は、人が来ないとお金の流れがなくなるのでいちばん最初に影響が出ると思います」

「復活に自信」の声も…

それでも、今回の取材では、営業打ち切りを決めた飲食店のオーナー、ギャラガーさんも「ニセコのよさは変わらないので必ずお客さんは戻ってくる」と話していました。また、不動産会社の石井社長も「落ち着けば、投資は必ず復活する」と力強く語り、自信を感じました。とはいえ、新型コロナウイルスの感染拡大が大きな試練であることは間違いありません。外国人観光客の増加、そしてそれが活発な投資を呼び込むというサイクルの象徴になってきたのが、ニセコ。それだけに地価の動向だけでなく、地域の観光産業そのものがどうなっていくのか、今後も注意してみていく必要があると思います。
小樽支局記者
橋本真爾

平成28年入局
函館局を経て現所属
経済や海保などを取材