福知山線の脱線事故 追悼慰霊式中止に 感染拡大防止で

福知山線の脱線事故 追悼慰霊式中止に 感染拡大防止で
列車の乗客など107人が死亡したJR福知山線の脱線事故から15年となる、来月25日に予定されていた追悼慰霊式について、JR西日本は新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、中止することを明らかにしました。
これは25日朝、JR西日本の長谷川一明社長が明らかにしたものです。

来月25日で15年となるJR福知山線、通称、宝塚線の脱線事故では、107人が死亡、562人がけがをし、JR西日本は毎年、事故の起きた日に追悼慰霊式を開いています。

これについて長谷川社長は「新型コロナウイルスの感染拡大の収束に見通しが立たない中、ご遺族、被害者の方に申し訳ない思いはあるが、異例の判断としてことしの追悼慰霊式を行わないことを決めた」と述べました。

現場に設けられている追悼施設については、当日の午前中、遺族やけがをした人たちが個別に訪れて献花などができるようにするということで、午後からは一般の人からの献花も受け入れるということです。

長谷川社長は「事故が発生した4月25日は特別な日であり、厳粛な気持ちで式典を開催するのがいちばんよい方法と考えているが、新型コロナウイルスの広まり具合を勘案し、多くの人が集まって行える環境ではないと判断した」と述べました。

追悼慰霊式が中止になるのは初めてです。

義理の弟を亡くした男性「追悼行事ことしも変わらず」

事故で義理の弟を亡くした大阪 八尾市の上田誠さんは「4月25日は遺族にとって特別な日であり特別な場所なので、慰霊式がなくなったのは残念だ。ただ、慰霊式がなくても遺族は現場に行くと思うので、JR西日本は追悼できる態勢を整えてほしい」と話していました。

一方、上田さんら遺族が毎年、事故の起きた日の前日に開いている、現場でろうそくに火をともして亡くなった人を悼む行事について「追悼の行事がこれだけになるので、ことしも変わらず決行したい。使命感を持ってやっていきたい」と述べ、行事を続ける考えを示しました。

次男を亡くした男性「水を差された気持ち」

事故で当時18歳だった次男を亡くした、神戸市北区の上田弘志さん(65)は「ことし三男が結婚し、孫も生まれるので報告に行こうと思っていたが、少し水を差された気持ちだ。ただ、追悼式典で感染者が出てはならないので、中止はしかたがない。追悼式がなくなってもJR西日本には、若手の職員にしっかりと事故のことを伝えてもらいたい」と話していました。