新学期からの「学校再開ガイドライン」を公表 萩生田文科相

新学期からの「学校再開ガイドライン」を公表 萩生田文科相
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、萩生田文部科学大臣は、新学期からの学校再開に向けて、感染者や濃厚接触者と特定された児童・生徒は出席停止の措置をとるなどとしたガイドラインを公表しました。
新学期からの学校再開に向けて文部科学省は、専門家会議の提言を踏まえてガイドラインを作成し、24日、萩生田文部科学大臣が公表しました。

それによりますと、換気の悪い密閉空間で、多くの人が密集し、近距離での会話や発声が行われるという3つの条件が重なるのを徹底的に避けるため、換気の徹底や近距離での会話の際のマスクの使用などを明示しているほか、感染者や濃厚接触者と特定された児童・生徒は、出席停止の措置をとるなどとしています。

また、入学式などの学校行事の実施に際し、3つの条件が重ならないよう対策を行い、部活動の実施にあたっても3条件が重ならないよう内容や方法を工夫するなどとしています。

一方、新学期以降に臨時休校を行う場合の学校の対応について、児童・生徒や教職員に感染者が出た際は、症状の有無や地域での感染拡大の状況などを総合的に考慮し、自治体の衛生主管部局と十分に相談したうえで、感染者や濃厚接触者の出席停止のみとするか、学校の全部か一部の臨時休校を実施するか判断するなどとしています。

そして、学習に著しい遅れが生じないよう、家庭学習を課すことに加え、登校日を設定するなどとしています。

萩生田大臣は、閣議のあと記者団に対し、「一人ひとりの行動の自粛の呼びかけが必要な厳しい状況だという認識を大前提に、春休みの期間も含め警戒を緩めることなく学校再開に向けた準備をしていきたい」と述べました。

文科省「地域の感染実態や児童生徒の状況で判断を」

この通知について、文部科学省の担当者は「具体的に現場が考慮すべき要素を示している。各自治体の保健衛生部局と相談して決めるとともに、今ある知見をもとに現場で正確に判断してほしい。各学校が置かれている事情が違う中、全国一律に示すより地域の感染実態やそれぞれの児童生徒の状況で判断してくのが有効だと思う。国も積極的に情報収集し、適切な情報を提供し、助言してきたい」と話しています。

感染症に詳しい専門家「妥当な内容」

学校再開に向けて文部科学省が公表したガイドラインについて、政府の新型コロナウイルス対策の専門家会議の委員で、感染症に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は「ガイドラインは、現時点で可能なかぎり学校教育を維持するという観点で、妥当な内容だと思う。学校という場で、密閉空間で、密集し、近距離で会話するという3つの状況を完全に避けるのは無理だが、可能なかぎり感染対策を行う必要がある」と指摘しています。

そのうえで「現場の先生方には負担になるが、検温するなどして児童生徒の健康状態の把握に努めてほしい。さらに、学校で感染者が出た場合は、地域全体の状況を考慮しての判断が必要なので、感染を広げないために、自治体などとよく相談したうえで臨時休校などの措置をとってほしい」と話しています。

学校教育に詳しい専門家「現場任せで学校の不安は大きい」

学校再開の指針について、学校教育に詳しい名古屋大学大学院の内田良准教授は、「休校要請はいきなりだったので、今回、新学期まで時間がある中、方針を示したことは評価できるが、内容的には現場任せとなっていて、学校の不安は非常に大きいのではないか」と述べました。

その理由としては、「学校の先生たちは感染対策の専門家ではないし、自治体にも専門家がいるとはかぎらない。感染者が出た場合、学校がどういう対応ができるか、国が具体的な案を示すべきだった」と指摘します。

そのうえで、「学校の中にはマスクや消毒液がなく、対応に不安を抱く先生たちもいる。また、教室というのは密室空間で、近距離の会話や大声を控えるのは不可能だ。1人の先生がたくさんの子どもの感染症対策をコントロールするのは難しいと思う。また、補習などで遅れた学習も取り戻さなければならない。学校を再開させたいという国の方針は分かるが、分散登校とか、少しずつ様子を見ながら再開するような対応が必要だったのではないかと思う」と話していました。

全国の小中学校再開 時期は

小中学校の再開をめぐり、全国の自治体の中には来月から予定通りの日程で、新学期を始めるところがある一方、多くの自治体は24日示された国の指針を踏まえて判断するとしています。

NHKが全国の放送局などを通じてまとめたところ、来月の新学期から、予定した日程で小中学校を再開する方針を決めたのは、24日の時点で、宮城県、大阪府、京都府、奈良県、岡山県、福岡県、大分県の7つの府県の59の自治体です。

このうち福岡県は、福岡市など県内52の市と町が来月6日から7日にかけて小中学校の始業式を行い、学校を再開するということです。

岡山市では、来月7日から小中学校129校が再開するということです。

また、沖縄県や鳥取県など14の県では、24日までに学校を再開している自治体は、新学期も予定通り授業を行う方針だということです。

このほかの自治体では、24日示された国の指針を踏まえて判断するとしています。