“あなたの家 消毒します”

“あなたの家 消毒します”
新型コロナウイルスの影響で自宅でこもっていたところに突然、電話が。「行政の委託で自宅の消毒作業をしています」。今、こうした不審な電話やメールなどが相次いでいます。その手口はさまざま。「マスクを無料で送る」「新型コロナウイルスを予防できる」。不安な気持ちにつけ込んだ悪質な犯罪。専門家は、“誰もが詐欺の対象になる”と指摘しています。(広島放送局 後藤祐輔/ネットワーク報道部 鮎合真介 井手上洋子)

不安そうな人がターゲット?

「水道管に新型コロナウイルスが付着している。点検の必要がある」。 これは、詐欺だと分かりそうです。でも、厚生労働省の感染症対策推進本部が重症化のリスクが高いとしているさなかに高齢者に「市役所の職員です。流行しているので気をつけるように電話しています」という電話がかかってきたら。
「行政の委託を受けて自宅の消毒作業をしています」。80代の女性の自宅に業者を名乗る男から電話がかかってきました。

女性が費用について尋ねると「面積によって違う」と要領をえない受け答えが返ってきて、不審に思ったということです。

国民生活センターによると、これらは消毒作業の名目などで多額の費用を請求したり、盗みに入る前に在宅状況を探る“アポ電”の手口だということです。

全国の消費生活センターには新型コロナウイルスに関連し、マスクの品不足や旅行のキャンセルをめぐる相談のほか、こうした「悪質商法」に関わる相談が寄せられています。

ほかにも、携帯電話に「マスクを無料で送るので確認をお願いします」とか実在する企業の名前でマスクの画像とともに「ご購入はこちら」という記載にURLが付いたメールが送られてくる手口も。

アクセスすると氏名や住所などの個人情報の記入を求められるということです。
「常に最新の巧妙な手口が出ています」
そう指摘するのは、国民生活センター相談情報部の森澤槙子さんです。
国民生活センターは、2月28日に「新型コロナウイルスに便乗した悪質商法にご注意!(速報)」、3月12日に「新型コロナウイルスに便乗した架空の“マスク販売広告メール”にご注意!」。同じ日に、第三弾として「行政機関名をかたる電話、行政から委託されたという業者からの電話には応じないようにしましょう」と、矢継ぎ早に注意を呼びかけました。
森澤さん
「外出を控える動きから自宅にこもりっきりになる高齢者につけ込む手口も見られます。ちょっとでも変に思ったらまず相談する、相談できる相手を見つけておくことが大切です」
特殊詐欺対策として「すぐに相談を」という呼びかけが行われていますが、新型コロナウイルスの感染や重症化への心配から外出を控えている特に1人暮らしの高齢者は、何か起きても相談もできない状態になってしまっています。

森澤さんは、「電話、メール、訪問と怪しいと感じたら対応しない、無視を徹底することが重要です。少しでもおかしいと感じたら消費者ホットライン『188』に相談してください」と呼びかけています。

こんな時にそんなことする人がいるの!?

各地の警察は、新型コロナウイルスに便乗した犯罪に注意を呼びかけています。

このうち徳島県警察本部は、マスク不足に乗じた新たな手口のサイバー犯罪が全国で相次いでいるとして、手口などをマンガで紹介するポスターを作成しました。
ポスターでは、▼マスクが無料でもらえるとうたって、不正サイトのURLをクリックさせる手口や、▼ショッピングサイトでマスクの在庫があるように見せかけて代金をだまし取ったり、クレジットカードの情報を盗み取ったりする手口などを紹介しています。

そして「自分から気をつけないとだまされます」などと「サイバー防犯は自分から」が大事だと呼びかけています。

子どもねらう犯罪も注意

また、千葉県警察本部は、新型コロナウイルスの感染予防のため多くの学校が休校になったことに便乗し、子どもだけで留守番をしている家をねらった犯罪が予想されるとして、注意を呼びかけています。

具体的には、▼電話をかけて保護者がいないことを確認したあと、集金や配達を装い、ドアを開けさせて押し入る、▼子どもが帰宅するときをねらって家に押し入る、▼公共機関の職員を名乗る人が「保護者が新型コロナウイルスに感染して入院した」などと、うそを言って車両に誘い込む、などのケースが想定されるとしています。

そして対策として、▼留守番中に訪問者がいる場合は、絶対にドアを開けないことや、▼家に入るときは、周囲の安全を確認し、大きな声で「ただいま」と言って入ること、また、▼公共機関の職員を名乗る人が子どもを誘い出すような声かけをしてきた場合にはすぐにその場から逃げ、近くの大人に助けを求めてほしいということです。

千葉県警は子どもたちが危険に遭遇した場合にみずから回避できるよう、日頃から親子で安全対策について話し合い、子どもたち自身に防犯知識を身につけさせるとともに、ブザーなどの防犯機器を携帯させることなども大切だとしています。

専門家“誰もが詐欺の対象に”

次から次へと出てくる不審な手口。どんなことに気をつければいいのでしょうか。犯罪心理学を研究している淑徳大学の大橋靖史教授に話を聞きました。大橋教授はまず、“誰もが詐欺の対象になる”と指摘しています。
大橋靖史教授
「振り込め詐欺などの場合は、ある特定の人を対象にしているため、客観的に冷静に判断することができる方が周りにいれば、その方のアドバイスで防ぐことが可能です。それに対し、今回の新型コロナウイルスに関しては多くの人々が不安な状態にありデマに惑わされやすい状況にあります。そのため不確かなさまざまな情報が飛び交い、人々の間の不安が高まり、トイレットペーパーの買い占めなどが生じています。そうした人々の不安が高まった中での詐欺であることが特徴になります。あらゆる人が詐欺の対象となる可能性があります」
今後、懸念される詐欺について聞いてみると…。
大橋靖史教授
「子どもの勉強の遅れに対する不安や心配を利用した教育教材などの勧誘を装った詐欺、金融市場が不安定なことを利用した投資勧誘を装った詐欺、休業補償などの公的な補助金を装った詐欺などさまざまな形態の詐欺が生じることが考えられます」
こうした犯罪の被害にあわないために正確な情報を求め続ける姿勢と立ち止まって判断することが大切だと呼びかけています。
大橋靖史教授
「誰もが、先の見通しがつかず、不安な状態にあると思います。そうした状態では、不確かな情報であったり、怪しげな勧誘に対して、通常よりも客観的・冷静な判断が難しくなります。それを防ぐには、確かな情報・正確な情報を得ることが大切です」