五輪・パラ延期の場合…会場やボランティアの確保などに影響も

五輪・パラ延期の場合…会場やボランティアの確保などに影響も
東京オリンピック・パラリンピックは、東京を中心に合わせて43の競技会場で競技が行われる予定で、このうち6割近くにあたる25の会場は既存の施設を使うため、大会が延期になった場合は、再び会場を確保できるかが課題です。
既存の施設の中には、東京体育館や国技館などのスポーツ施設だけでなく、大規模なコンサートや展示場などとしても使われる「さいたまスーパーアリーナ」や「東京国際フォーラム」、「幕張メッセ」などもあります。

このうち、ウエイトリフティングなどの競技会場となる「東京国際フォーラム」は、ホールの貸し出しの予約をイベントの開催の2年前から受け付けているため、東京大会の後にはすでに複数のコンサートなどの予定が入っているということです。

また、大会期間中にメディアセンターとなる「東京ビッグサイト」は、年間およそ300件の展示会や見本市が開かれます。

東京大会が延期された場合に、こうした施設で再びスケジュールを調整するとなると、すでに予約が入っている展示会やイベントに影響が出ることが予想されます。

一方、競泳やボートなどの会場として都が新たに整備した8つすべての競技施設は、大会後、スポーツの国際大会の会場などとして再びオープンする予定です。

都によりますと、東京大会が延期された場合、再開業の時期が遅れることや、施設の維持・管理費が膨らむなどの影響が想定されるということです。

幕張メッセでは秋以降 展示会やイベント予定

千葉市の幕張メッセは、東京オリンピック・パラリンピックで、レスリングやフェンシングなど1つの会場としては最も多い7つの競技が行われる予定で、トイレやエレベーターの改修など大規模な工事が進められてきました。

大会前後の準備や撤去にかかる期間も含め、施設の利用は4月21日から9月20日まで制限されることになっていました。

幕張メッセによりますと、通常は年間およそ940のイベントや会議が開かれています。

会場の予約は1年前から受け付けているため、すでにことしの秋以降の予約などが入っているということです。

ことしの9月24日から4日間は、およそ25万人が参加する「東京ゲームショウ」の開催が決まっているほか、例年8月に開催している「DIYショー」は日程を11月5日からにずらして開催することが決まっています。

また、15万人以上が参加する都市型音楽イベントの草分け・「サマーソニック東京」は、ことしは会場が使えず中止の予定で、感染が拡大する前の段階では来年夏に幕張メッセで開催することを目指していました。

主催する会社は「政府やオリンピック組織委員会の方針が示されるのを踏まえて、改めて来年の会場の調整に入りたい」と話しています。

一方、幕張メッセの運営会社と運営会社の筆頭株主である千葉県は、延期になった場合の対応について「まだ仮定の話で現段階ではコメントできない」としています。

東京ビッグサイト 来年4月までに予約200件以上

「東京ビッグサイト」は、東京オリンピック・パラリンピックの期間中、報道・放送の拠点となる「国際放送センター」や「メインプレスセンター」として使用される予定です。

すでに、施設改修などのため、去年から多くのスペースが利用できなくなっていて、イベント会場として、再び利用できるようになるのは、大会終了後の12月ごろになると見込まれています。

東京ビッグサイトによりますと、すでに展示会や商談会などのイベントの予約が来年4月までに200件以上入っているということです。

関係者によりますと、東京大会が延期となった場合は、これらの予約を変更するため膨大な手続きや費用が必要となるほか、イベントが開催されなければ、出展予定だった中小企業の売り上げなどに、大きな影響が出ることが懸念されるということです。

ボランティアに影響も

東京オリンピック・パラリンピックでは、競技会場や選手村などで活動する「フィールドキャスト」が8万人、競技会場の周辺や駅などで観客を案内する「シティキャスト」が3万人以上の合わせておよそ11万人のボランティアが活動を予定しています。

このうち東京都は、「シティキャスト」を希望し面談に参加したおよそ3万人に、今月末までに採用の連絡して、5月以降は役割や配置される場所ごとに研修を行う予定だということです。

都によりますと、「シティキャスト」の応募者は10代が22%を占めていて、大会が延期されると、学校のスケジュールと合わずに参加できなくなる学生が出ることが予想されるということです。

また、延期になった場合、開催される時期によっては、ボランティアの募集をやり直す必要が出るなどの影響も予想されるということです。

選手村跡地のマンション 入居時期の遅れ 懸念

選手村の跡地に整備されるマンションの入居時期に影響が出ることも懸念されます。

東京 中央区の晴海地区で建設が進められている東京オリンピック・パラリンピックの選手村は、大会後には、建物や周辺の土地を活用して23棟のマンションが整備され、分譲と賃貸を合わせて5600戸余りが供給される予定です。

すでに去年7月から一部の物件の販売が始まっていて、940戸のうち893戸に合わせて2220件の申し込みがありました。

平均倍率は2、36倍と、選手村の跡地ということもあって、高い関心を集めています。

東京大会が終わったあと、来年からリフォームが行われ、2023年3月下旬以降、順次入居できるようになる予定ですが、大会が延期されることになれば、リフォームの工事に入る時期も遅くなり、入居時期に遅れが生じることも懸念されています。

開発を手がける企業グループの代表の三井不動産レジデンシャルは、「正式に延期などが決まったわけではないので、現時点では、延期した場合の対応についてコメントは差し控えたい」としています。

会場周辺ホテルからは影響を心配する声

会場周辺のホテルでは影響を心配する声が聞かれました。

東京 新宿区にある日本青年館ホテルでは、東京オリンピック・パラリンピックの期間中、220室ある客室は組織委員会など大会関係者を中心に満室となっています。

ホテルによりますと、現時点では、開催が延期になった場合はおよそ2か月分の宿泊がキャンセルになるということで、売り上げをどう穴埋めしていくのか頭を悩ませているといいます。

また、このホテルでは半年先までの予約を受け付けていて、すでに一般の予約も入ってきているため、年内に延期された場合は、同じ規模の部屋数を確保できない可能性があるということです。

日本青年館ホテルの三田村成之総支配人は、「状況が状況だけに決定には従うが、準備を積み重ねてきたので、延期してほしくないというのが希望です。仮に延期となると大会期間中の予約にぽっかりと穴が空いてしまい、全力で穴埋めをしていかなくてはならない」と話していました。

札幌のホテル「延期もやむをえない」

競歩とマラソンの会場となる札幌市にあるホテルオークラ札幌は、マラソンが開催される予定の日はすでに予約が集中しているということです。

しかし、新型コロナウイルスの影響が長引けば、大会期間中のキャンセルも出かねないことを懸念していて、延期もやむをえないと受け止めています。

ホテルオークラ札幌の宮崎誠社長は、「新型コロナウイルスの影響がどうなるのかわからないのでそのことを踏まえれば延期のほうがいい。大会期間中は本来なら観光客が多い観光シーズンで忙しい時期だが、新型コロナウイルスが収束しているのか疑問で、不安が残る」と話しています。