新型ウイルス 感染ないイエメン 内戦で医療体制整わず不安の声

新型ウイルス 感染ないイエメン 内戦で医療体制整わず不安の声
WHO=世界保健機関は20日、毎日更新している報告書の中で新型コロナウイルスの世界の感染者数が20万人を超えたことを発表しましたが、感染が確認されていない国があります。中東のイエメンです。
政権側と反政府勢力による5年にわたる内戦が続き、多くの市民が家を追われ、新たな国内避難民となり、満足な医療を受けることもできません。

内戦によって周辺国からイエメンへの人の流れが途絶えていることから、感染が広がっていないとみられていますが、隣国のサウジアラビアなどでは感染の拡大が止まらず、内戦で医療体制が整わない中、感染を食い止めることができるのか不安の声が上がっています。

首都サヌアにある主要な病院の一つでは18日、新型コロナウイルスの感染が確認された場合に備える準備が進められていました。

隣接する敷地には感染が確認された人を治療するための隔離病棟が設けられていましたが、ベッドの数は30床のみで重症患者用のベッドは6床しかありません。

医療関係者によりますと、新型コロナウイルスに対応できる施設は首都ではここ1か所のみだということです。

病院の医療スタッフは「数日前、新型コロナウイルスへの感染疑いのある患者を受け入れた際、病院にいた人が逃げ惑い落ち着かせるのが大変だった」と話していました。

イエメンでは内戦のさなか衛生状態の悪化から「コレラ」の感染がほぼ全土に拡大し、ことし1月までのおよそ3年間で、人口の1割に当たる200万人以上の感染が疑われ、4000人近くが死亡したとみられていることから感染症への強い警戒心があります。

市民の1人は、「支援も資金もない中、新型コロナウイルスの感染が拡大すれば、非常に大きな問題になる」と話していました。

現地で支援を続けてきたICRC=赤十字国際委員会の担当者は、「イエメンでは内戦で全体の半数の医療施設が機能しておらず、医療体制は崩壊状態だ。そうした中で新型コロナウイルスが国内に流入すれば状況がさらに悪化します」と危機感をあらわにしています。