“派遣切り”など相談相次ぐ 労働組合が厚労省に対策要請

“派遣切り”など相談相次ぐ 労働組合が厚労省に対策要請
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で非正規労働者を中心にいわゆる「派遣切り」などの相談が相次いで寄せられているとして、労働組合が厚生労働省に対策をとるよう要請しました。
要請を行ったのは、非正規労働者の労働組合などで作る「全国ユニオン」です。19日は鈴木剛会長らおよそ40人が厚生労働省の担当者と面会し、加藤大臣にあてた要請文を手渡しました。

全国ユニオンによりますと、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、非正規労働者から仕事を休んだ場合の補償などに関する相談に加え、派遣で働く人から「契約期間中なのに突然、雇い止めを通告された」といったいわゆる「派遣切り」に関する相談が今月7日からの1週間で合わせて100件余り寄せられているということです。

このため、要請では、雇い止めとなった人などへの支援体制を早急に整備することや、休業手当を支払わない企業への指導を徹底することなどを求めています。

全国ユニオンでは、今月末に契約の期限を迎える労働者も多いことから、今後、派遣切りなどの動きがさらに広がるおそれがあるとしています。

鈴木会長は「ここへきて休業補償の問題だけでなく、雇い止めや解雇の相談が増えてきており、非常に危機感を持っている。地域や業種も広範囲にわたっているため、引き続き、国に対し労働者に直接届く支援策を求めていきたい」と話していました。

非正規雇用で働く人たちからの相談が多い

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて労働組合に寄せられた相談は、全国ユニオンと全労連で今月上旬以降合わせて270件余りに上っています。

特に、派遣やパートなど非正規雇用で働く人たちからの相談が多く、業種は、ホテル、飲食業、建設業、清掃業、タクシー会社、観光バス会社など多岐にわたっています。

また、臨時休校の影響で、学校支援員や給食調理員、それに送迎バスの運転手などからの相談も目立っているということです。

相談の内容は「会社から休むよう命じられたが休業補償は出ないと言われた」「子どもが臨時休校になったので休もうとしたが、補償の対象外と言われた」など、仕事を休んだ場合の補償に関するものに加え、「派遣契約期間はまだ残っていたにもかかわらず事前の相談もなく、突然、雇い止めを通告された」などといったいわゆる「派遣切り」に関する相談も寄せられているということです。

派遣切りにあった男性 「来月からどう暮らせばいいのか」

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、突然、勤め先の工場から「派遣切り」にあった男性がNHKのインタビューに応じ、先の見えない生活への不安を語りました。

東日本にある自動車部品を製造する工場に勤めていた40代の派遣社員の男性は、先月末、ほかの10数人の派遣社員とともに、突然、契約を打ち切られたということです。

男性が働く工場では、新型コロナウイルスの感染拡大で、卸し先の日産自動車の工場が中国から部品を調達するのが難しくなり、自動車の生産量を調整している影響で、部品の生産も減っていたということです。

男性によりますと、これまでは2か月から3か月の契約期間を自動更新していて、次の契約更新は3月末の予定でしたが、先月下旬に職場に貼り出された今月のシフトから自分の名前が消えていたため派遣会社に確認したところ、「削減リストに載った」と告げられ、「派遣切り」にあったことが分かったということです。

このときの心境について男性は、「来月からどう暮らせばいいのか分からず混乱しました。情勢的にしかたがないとは思うし、現場を恨みはしないものの、派遣という弱い立場のままでいたのがまずかったのかなと思いました」と語りました。

派遣会社からは今月分の休業手当が支払われることになっていますが、賃金の6割、10万円程度にとどまる見込みで、実家で1人で暮らす70代の母親への毎月7万円の仕送りを続けながら生活するのは困難な状況となっています。

今は貯金を取り崩しながら、食費を切り詰めて生活していますが、新たな派遣先が見つからなければ、派遣会社の寮からも退去を迫られるのではないかと不安を感じていると言います。

男性は「母は月に5万円の年金しか収入がなく、仕送りを途切れさせたくはありません。今の蓄えで生活費がもつのはあと2か月程度なので、それが尽きる前に仕事が決まってほしいですが、この状況ではなかなか仕事は見つからないと思うのでとても不安です」と深刻な表情で話していました。