訪日外国人旅行者 2月は58%減 去年比で 中国からは88%減

訪日外国人旅行者 2月は58%減 去年比で 中国からは88%減
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先月、日本を訪れた外国人旅行者は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で去年の同じ月と比べて58%もの記録的な減少となりました。中国からの旅行者が8割以上減少するなど日本の観光への影響は、一段と深刻になっています。
日本政府観光局によりますと先月、日本を訪れた外国人旅行者は、推計で108万5100人で去年の同じ月と比べて58.3%減りました。

旅行者の減少は5か月連続で、減少幅は東日本大震災直後の2011年4月の62.5%に次ぐ記録的な大きさです。

これは新型コロナウイルスの感染が拡大した影響で、中国人旅行者が8万7200人で去年の同じ月よりも87.9%減ったほか、日韓関係の悪化でもともと減少していた韓国人旅行者がさらに落ち込んで14万3900人となり、79.9%の減少となったためです。

このほか、台湾がおよそ45%、アメリカがおよそ21%減るなど、アジアや欧米の幅広い国と地域で大幅に減少しました。

感染拡大を受けて日本政府は、今月9日から中国と韓国について発給済みのビザの効力を停止する措置を取ったほか、ヨーロッパやアメリカなどでも感染が急速に拡大しており、今月はさらに旅行者の減少が見込まれます。

政府は、ことし、外国人旅行者を4000万人に増やす目標を掲げていますが、新型コロナウイルスの感染拡大で目標の達成は極めて困難な状況になっています。

観光庁長官「収束が見通せず 今月さらに厳しい」

新型コロナウイルスの感染拡大による観光への影響について、観光庁の田端浩長官は記者会見で、感染拡大の収束が見通せず今月は、より厳しい状況になるという認識を示しました。

この中で田端長官は、外国人旅行者の記録的な減少について「非常に厳しい数字だ。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、日本だけでなく世界中で旅行が控えられ、全世界的に人の動きが抑えられている。複数の国が、日本への渡航の自粛を呼びかけていることもあり厳しい状況だ」と述べました。

そのうえで、今後の見通しについて「事態の収束が見通せず、今後の影響を言うのは困難な状況だが、今月はより厳しい状況になるのではないか。国内の感染拡大の防止が、観光業に対する最大の支援策だと思うので、まず、これをしっかり対応したうえで、収束したあとは各国に需要喚起のプロモーションを図り、世界の旅行市場の拡大につなげていきたい」と述べました。

外国人旅行者の減少 今後の影響懸念

これまで増加を続けていた外国人旅行者は、観光産業を中心に地域経済を支えてきただけに、今後の影響が懸念されます。

日本政府観光局によりますと、去年1年間に日本を訪れた外国人旅行者は、3188万人でした。

このうち、中国からの旅行者は959万人余りで全体の30%を占め、国や地域別で最も多く、2番目に多い韓国からの旅行者はおよそ558万人でした。

この2か国だけで、全体の半分近い47%を占めています。

また、去年1年間に、日本国内で消費した金額は、中国人旅行者は1兆7700億円余り、韓国人旅行者は4200億円余りで、合わせて2兆1900億円に上ると推計されていて、インバウンド消費の増加をけん引してきました。

今後さらなる旅行者の減少も

中国や韓国に加えて、ヨーロッパやアメリカなどでも新型コロナウイルスの感染が拡大していることから、今月はさらなる外国人旅行者の減少が見込まれます。

日本政府は、感染の拡大を受けて、今月9日から中国と韓国について発給済みのビザの効力を停止する措置を取るなど、水際対策を強化しました。これを受けて航空会社では、中国や韓国の路線を相次いで運休や減便しています。

国土交通省によりますと、水際対策を強化する前と今週を比べると、香港やマカオを含む中国路線は、1週間当たりおよそ440往復あったのが150往復程度にまで減ったほか、韓国路線は、およそ620往復から20往復程度にまで減っています。

感染の拡大は、ほかの国にも広がっていて、日本政府は、21日からは、感染者が急増するヨーロッパのほぼ全域など合わせて38か国で、発給済みのビザの効力を停止するといった水際対策を強化することにしています。

感染の拡大によって今月は、外国人旅行者のさらなる減少が見込まれます。

観光業に深刻な打撃

新型コロナウイルスの感染拡大は、旅行会社やバス、タクシーなど観光業に深刻な影響を与えています。

このうち、旅行会社でつくる業界団体、「日本旅行業協会」によりますと、外国人向け、日本人向けいずれも、旅行のキャンセルが相次いでいます。

主要な旅行会社およそ50社の売り上げは、今月13日の時点の推計で、3月が去年の同じ月よりも3200億円余り少ない1441億円、4月は2900億円余り少ない1491億円にとどまる見込みです。

3月、4月ともに去年の同じ月の3分の1程度にまで落ち込む見通しで、協会は、欧米でも感染が拡大していることから、さらに売り上げが減少する可能性があるとしています。

また、日本バス協会は、62社を対象に調査したところ、今月16日の時点で、新型コロナウイルスの感染拡大によるキャンセル数は、3月は1万9200件余り、4月は1万600件余り、5月は4000件余りに上るということです。

このため、各社を合わせた運送収入は、去年の同じ月と比べて、3月は79%、4月は64%、5月は55%、それぞれ減少する見通しです。

また、「全国タクシー・ハイヤー連合会」は、会員のタクシー会社の今月1日から14日までの営業収入について各地域ごとで調査しました。

その結果、東京では去年の同じ時期と比べて25%減少したほか、北海道では36%、京都では41%減少するなど、各地で2割から4割程度落ち込んでいるということです。