“病状改善の治療経緯”を医師が公表 北海道 新型ウイルス

“病状改善の治療経緯”を医師が公表 北海道 新型ウイルス
新型コロナウイルスに感染した男性の診察と治療にあたった北海道の病院の医師がNHKの取材に応じ、使用した薬や悪化した病状が改善した治療の経緯など退院するまでの詳しい状況を明らかにしました。
北海道にある旭川医科大学病院の古川博之病院長と、市立旭川病院の柿木康孝医師は、先月22日に感染が確認された旭川市の70代の男性の診察と治療にあたった病院の医師で、男性の承諾を得たうえで治療に使った薬や病状の変化など、改善して退院するまでの詳しい治療の経緯を明らかにしました。

男性は先月20日発熱やせきの症状を訴えて、旭川医科大学病院を最初に受診し、古川病院長は「CTで撮影した肺の画像を見て、新型コロナウイルスが原因の肺炎に特徴的な淡い影が見られた」と感染を疑ったきっかけを説明しました。

男性は先月22日に感染が確認され、感染症を扱う専門の病床がある市立旭川病院に入院します。

男性はぜんそくや肺の機能が低下するCOPD=慢性閉塞性肺疾患などを患っていて、治療にあたった柿木医師は「基礎疾患がある人は病状が悪化するのではという警戒心を持った」と述べました。

ただ新型コロナウイルスにはまだ特効薬がないことから「当初は対症療法をしながら人が本来持つ免疫力で戦ってもらうというスタンスだった」と話し、せきを止める薬や解熱剤、さらに二次感染を防ぐ抗生剤を投与したと説明しました。

しかし男性の病状は次第に悪化し、人工呼吸器が必要になるおそれもあったことから、入院から7日目の先月28日に、国内外で症状が改善した報告があるエイズの発症を抑える抗ウイルス薬「カレトラ」を投与することを決めました。

柿木医師は「投与した経験がある医師に相談したところ、『効果は証明されていないがやってみる価値はある』という話になった。副作用も軽度の肝障害や軽度の下痢だと確認し、病状が悪化しているケースなので投与した」と話しています。

投与のあと病状は改善し、翌日には体温が平熱に戻ってせきも出にくくなり、男性の日記にも「劇的に改善に向かった」とつづられています。

男性は順調に回復し、入院から19日目の今月11日に退院しました。

柿木医師は薬の効果についてはまだ医学的に確認されていない段階だとしたうえで「とても幸運なケースだった。いろいろな要因があったと思うが、病状がひどく悪化する前にタイムリーに投与できたのが改善の要因の1つになったかもしれない」と分析しています。

カレトラは国内で重症となった感染者に投与したものの、改善に至らなかったケースもあり、柿木医師は患者への投与については「投与をせずに回復した人もおり、丁寧に診療して患者ごとに判断するしかない」と述べて、病状や基礎疾患などに応じて投与の是非を判断する必要があると話しています。