世界同時不況のおそれ? 新型コロナで景気は…

世界同時不況のおそれ? 新型コロナで景気は…
年率マイナス2.89%。民間のエコノミストが試算した、日本の1月から3月までのGDP=国内総生産の伸び率の平均値です。GDPは2期連続でマイナスとなり、欧米ではリセッション=景気後退期と見なされる局面に入る可能性が高まっています。「リーマンショック以来の水準」「東日本大震災以来のマイナス」など、経済指標も相次いで厳しい現状をうつしています。新型コロナウイルスの感染拡大で、日本、そして世界の景気はどうなるのでしょうか?(経済部記者 影圭太 坪井宏彰)

閑古鳥鳴く飲み屋街

3月上旬。時々通っている都内の居酒屋ののれんをくぐると、ふだんは満席が当たり前の店内には2組の客だけ。いつもは忙しそうに働いている、おかみさんともゆっくり話ができました。

「もう夜は毎日こんな状態で空席だらけ。隣の店は休業しちゃったよ」とおかみさんは嘆きます。店を出ても飲み屋街には人はまばらで、閑古鳥が鳴く状態が続いていると言います。

街の様子を一変させた原因は、もちろん、新型コロナウイルスの感染拡大。私たちの生活、消費行動そのものを大きく変えてしまいました。

新型コロナで経済に何が?

景気はどれほど悪くなっているのか。2月、3月の経済指標に影響が表れ始めています。
目立っているのが、デパートの売り上げの落ち込みです。
大丸松坂屋百貨店では、3月1日から14日までの売り上げが、前年同期比43%の減少。3月1日から15日までの売り上げは、三越伊勢丹ホールディングスが34.8%減、高島屋は32.9%減と、大幅な落ち込みとなりました。

観光への影響も深刻で、航空便は利用客が減少して運休や減便が相次いでいるほか、JRでは新幹線の利用客も減少しています。
旅館やホテルの予約も減っていて、3月から5月までの予約人数は前年同期比45%減少(日本旅館協会調べ 2月25日時点)、51社のバス会社の1月から4月までの予約は1万1000件余りがキャンセル(日本バス協会調べ 3月3日時点)となってしまいました。

中国人旅行者の激減に加え、国内の消費者の間にも、外出や消費を控える傾向が強まっていることが影響しています。

「東日本大震災以来」の景気実感

働く人たちの景気の実感にも厳しい現状が表れています。2月の景気ウォッチャー調査では、現状を示す指数が大幅に悪化し、2011年の東日本大震災以来の低い水準となりました。
南関東の衣料品専門店営業
「ターゲットである中高年が外出しない。この状況が長く続くと経営をあきらめるしかない」

甲信越のスナック経営者
「増税、台風の被害でどん底だったところに、新型コロナウイルスでキャンセルが続出。この先の予約は全く入らない」

沖縄の居酒屋経営者
「外国人旅行者は全滅、地元客も極端に少なくなっており、通りに人がいない。売り上げがあまりにも急激に落ち込んだため資金繰りが間に合わない」
調査には、悲鳴にも近い声が数多く寄せられています。この状況が続けば、中小企業を中心に資金繰りが一段と苦しくなることが心配されます。

すでに深刻な影響が出ています。3月11日までの間に、感染拡大の影響で、企業が法的整理を申請したり、事業を停止したりしたケースは8件あり(帝国データバンクまとめ)、今後、経営に行き詰まる企業がさらに増えないか心配されます。

日本経済はリセッション?

こうした状況を民間のエコノミスト34人が分析し、1月~3月までの日本のGDP=国内総生産の伸び率を予測。その平均値が3月17日に公表されました。

結果は、物価の変動を除いた実質の年率換算でマイナス2.89%。消費税率引き上げの影響で5期ぶりにマイナスとなった去年10月~12月をさらに下回り、2期連続でマイナスになると予測されたのです。2期連続でマイナスとなると、欧米では「リセッション=景気後退期」とみなされます。

6年以上にわたって「緩やかに回復」と政府が主張し続けてきた日本の景気の姿は、一変することになります。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は、次のように指摘しています。
小林主席研究員
「一人一人の外出自粛や消費自粛が重なり、1月より2月、2月より3月が大きな消費の落ち込みになると予測している。世の中のムードが一変して、株式市場が悲観的になりつづけているのを見ると、典型的な『世界同時不況』の状況になっていると言える」

異例の金融政策でも…

海外でも、アメリカやヨーロッパでこのところ感染が急速に拡大し、アメリカでは国家非常事態宣言が出されました。

ヨーロッパでもチェコやポーランドが、外国人の入国を原則、禁止する措置に踏み切ったほか、ドイツも国境管理を厳格化するなど、人の移動を制限する動きが広がっています。

最初に感染が拡大した世界第2位の経済大国、中国では、1月から3月までのGDPがマイナスに転落するという民間のシンクタンクの予測も出て、世界経済への影響は深刻化しています。

こうした中、日本を含む各国は景気の下支えに躍起になっています。アメリカの中央銀行にあたるFRBは15日、臨時の会合を開いて政策金利を一気に1%引き下げて事実上のゼロ金利政策に踏み切ることを決定。
続いて16日には日銀も金融政策決定会合を前倒しで開いて3年半ぶりとなる追加の金融緩和を決めました。また各国は、打撃を受けた企業や個人を支援するため、財政出動を拡大していくことを相次いで表明しています。

日本でも政府・与党が新年度の補正予算案の編成も視野に、追加の経済対策の検討を本格化させる方針です。しかし、各国政府や中央銀行が対応を打ち出しているにも関わらず、株価の記録的な下落が続くなど、金融市場の動揺は収まっていません。

「感染拡大の終息」が最も有効な対策となるのは間違いありませんが、それがいつになるのか、誰も確かなことは言えない状況です。

異例の金融政策でも不安が不安を呼ぶ状況を変えることができない中で、日本政府が効果的な経済対策を打ち出せるのか。また、感染拡大の抑制と、経済の下支えが両立できるのかどうか。難しい対応を迫られています。
経済部記者
影圭太
平成17年入局
山形局 仙台局を経て
現在は内閣府担当
経済部記者
坪井宏彰
平成25年入局
広島局を経て経済部
現在、財務省担当