日銀 黒田総裁が強調「現時点で必要な措置とった」

日銀 黒田総裁が強調「現時点で必要な措置とった」
日銀の黒田総裁は記者会見で、金融政策決定会合を前倒しで開き追加の金融緩和を決めたことについて、国際的な協調の枠組みを示すとともに、年度末を控え企業の資金繰りの支援を早急に決める必要があったと説明し、「現時点で必要な措置はとった」と強調しました。
日銀の黒田総裁は会見で、会合を前倒しで開催したことについて「年度末を控えて企業金融の円滑化や金融市場の安定に万全を期すため、必要な措置を早急に判断する必要があった。また、主要国の協調の枠組みの中で行った」と述べ、アメリカが緊急の利下げに踏み切ったことなどに続いて、世界の協調姿勢を明確にするねらいがあったと明らかにしました。

また、景気の現状について日本企業の輸出の低迷や、イベントの自粛で国内の消費が落ち込んでいるうえ、世界全体に感染が広がっていることを指摘し「世界経済全体でみれば一定期間、低成長が続くおそれがあり、V字型の回復になるとは言い難い」と述べて慎重な見方を示しました。

そのうえで16日決めた追加の金融緩和について「現時点では必要、十分な措置をとった」と強調し、今後、必要があればちゅうちょなく追加の金融緩和を行う姿勢も示しました。

一方、追加の金融緩和を決めたものの、東京市場で株価が大きく下落し、効果がなかったのではないかという記者の質問に対しては「いろいろ議論はあると思うが、金融市場の不安定さを鎮めるという意味では金融政策は一定の効果を持ちうると思っている。悲観する必要はないと思っている」と述べました。

「リーマンショックとは違う」

日銀の黒田総裁は16日の記者会見で、今の新型コロナウイルスの感染拡大による金融市場の混乱は、2008年に起きたリーマンショックの際の金融危機とは違うという認識を示しました。

新型コロナウイルスの感染拡大で、世界の金融市場はリーマンショック以来の激しい混乱が続いています。

日銀の黒田総裁は記者会見で、今回の新型コロナウイルスによる景気の悪化は、感染拡大が収束すれば徐々に回復していくという認識を示しました。

そのうえで、アメリカの「サブプライムローン」と呼ばれる住宅ローンの焦げ付きが、世界的な金融危機に発展したリーマンショックと比較して「リーマンショックは金融の行き過ぎたバブルが、金融システムの中に発生したことで、欧米の大手金融機関の破綻が相次ぎ、大規模に崩壊した」と述べ、中小企業や消費に影響が及んでいる、今の状況とは危機の構造が違うという認識を示しました。

ただ、黒田総裁は「経済の先行きに対する不透明感が強いと、金融市場の動きが非常に不安定になるということでは共通している」と述べて警戒感を示し、市場に潤沢な資金を供給したり企業の資金繰りを支えたりして、金融市場の動揺をおさえていくことが重要だと強調しました。