「石炭火力への融資はリスク」 気候変動対策で株主提案

「石炭火力への融資はリスク」 気候変動対策で株主提案
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気候変動の対策を進めるうえで、金融機関が果たす役割に関心が高まっています。石炭火力発電への融資は、世界の温暖化対策が進めば事業の価値が低下してリスクになるとして、日本の大手金融グループに対し、こうした融資に関する今後の方針などの開示を求める株主提案が提出され、環境対策の加速につながるか注目されます。
この株主提案は、日本の環境NGO「気候ネットワーク」が、株式を保有している「みずほフィナンシャルグループ」に対し、15日までに提出したものです。

提案では、二酸化炭素の排出が比較的多い石炭火力発電への融資について、世界の温暖化対策が進めば事業の価値が低下してリスクになると指摘しています。そのうえで、みずほが、企業に気候変動に関する情報の開示を促す国際組織「TCFD=気候関連財務情報開示タスクフォース」に賛同していることを踏まえ、石炭関連の事業への融資に関する今後の方針などの開示を求めています。

企業の情報開示に詳しい大和証券エクイティ調査部の大澤秀一さんは「株主提案によって気候変動関連の情報開示を求めるのは日本では初めてではないか」と話しています。

ことし11月にイギリスで開かれる気候変動対策の国連の会議COP26でも、気候変動のリスクに関する情報開示をめぐる議論が焦点の1つになりそうで、環境対策の加速につながるか注目されます。

NGO「日本の金融機関の動きは非常に遅れている」

株主提案を提出した環境NGO「気候ネットワーク」の平田仁子理事は、提案の理由について、「気候変動が深刻になり、脱炭素社会に向かう中、金融機関の役割は非常に重要だが、事業の十分な情報が開示されていないため、今回株主提案で情報開示を求めている」と話していました。

そのうえで、「日本における金融機関の動きは欧米に比べると全体として非常に遅れていて、化石燃料や石炭への投融資がこれまでどおりに続いているというのが現状だ。このメッセージはみずほだけではなく多くの金融機関に届けたいし、株主提案をきっかけに気候変動のリスクに向き合ってほしい」と話していました。

石炭関連の事業は“座礁資産”

石炭火力発電をめぐる融資や投資を見直す動きは、近年、世界中で相次いでいて、世界の気候変動対策を進めるうえで金融機関の役割が大きくなっています。

ヨーロッパでは、ドイツ銀行やイギリスのスタンダードチャータード銀行が今後新たに作られる石炭火力発電所へ融資しない方針を発表したほか、フランスの「BNPパリバ」も2040年までに石炭火力発電に関するすべての融資を停止することを発表しました。

電力のおよそ7割を石炭火力発電に依存するオーストラリアでも、金融大手のコモンウェルス銀行が株主提案をきっかけに、2030年までに石炭関連の事業への融資から撤退することを決めています。

そして、ことし1月には、世界最大規模のアメリカの資産運用会社「ブラックロック」のフィンク会長が「気候リスクは投資リスクだ」として、石炭事業からの収入が多い企業の株を放出すると明らかにし、大きなニュースとなりました。

こうした動きの背景には、温室効果ガスの排出量を今世紀後半に実質ゼロにすることなどを目標にかかげる「パリ協定」の発効があります。これによって石炭火力発電など温室効果ガスの排出の多い事業は「座礁資産」とも呼ばれ、資産価値が下がっていくことが懸念されるというのです。

また、政財界のリーダーが集まる「ダボス会議」を主催する「世界経済フォーラム」がことし発表した「グローバルリスク報告書」では、長期的に発生するリスクの上位5位までを、初めて環境に関する問題が占めました。

「TCFD=気候関連財務情報開示タスクフォース」の設立にかかわり、イギリスの中央銀行、イングランド銀行の総裁を今月15日付けで辞任したあと、国連の特使に就任するマーク・カーニー氏は、石炭などの化石燃料に依存しない経済を目指そうと訴えています。

カーニー氏は1月のダボス会議で、「COP26までに気候変動に関する開示を義務化させたい」と話していて、今年11月にイギリスで開かれる国連の気候変動対策を話し合うCOP26を前に、企業が投資や融資のすべての決定において気候変動リスクを考慮することを提唱しています。