安倍首相 “現時点では緊急事態を宣言する状況ではない”

安倍首相 “現時点では緊急事態を宣言する状況ではない”
新型コロナウイルス対策の特別措置法の成立を受け、安倍総理大臣は記者会見し、諸外国と比べ日本の感染者数は抑えられているとして、現時点で「緊急事態」を宣言する状況ではなく、今後慎重に判断していく考えを示しました。また、新たな経済対策の策定も念頭に必要な措置をとる考えを示しました。
安倍総理大臣は、午後6時すぎから総理大臣官邸で記者会見を行いました。

冒頭、13日成立した新型コロナウイルス対策の特別措置法について「あくまで万が一のための備えをする法律だ。さまざまな私権を制限することとなる『緊急事態』の判断にあたっては専門家の意見も伺いながら、慎重な判断を行っていく」と述べました。そして、人口1万人当たりの日本の感染者数は0.06人で、韓国や中国、イタリアなどと比べて抑えられているとしたうえで、「現時点で『緊急事態』を宣言する状況ではない」と述べました。

一方で、「事態は時々刻々変化しており、国民の命と健康を守るため必要であれば、手続きにのっとって、法律上の措置を実行する考えだ」と述べました。

そして、症状がある人の80%が軽症で、重症化した人の半分ほどは回復していると説明したうえで、今後は、高齢者や基礎疾患がある人の感染予防に一層取り組む考えを示しました。

また、これまで感染が確認された人のおよそ8割は他の人に感染させていないとした一方、集団感染が確認されたのは、換気の悪い密閉空間で人が密集するなどの条件が重なった場合だとして、こうした条件が重ならないよう対策を講じることで感染リスクを下げることが可能だと述べました。

さらに、学校の臨時休校に関連し、健康管理やストレス解消のためにも、人が密集しないようにするなど安全な環境のもと、屋外に出て運動の機会をつくることや、予定されている卒業式は、安全面の工夫を行って、実施してもらいたいと呼びかけました。

一方、安倍総理大臣は、第2弾の緊急対策を説明したうえで「景気悪化への懸念が高まる中で生活に不安を感じている皆さんへの当面の対策も講じる考えだ」と述べました。

そして、「日本を含む世界中のマーケットが動揺しており、世界経済のさらなる落ち込みも懸念される。動向を注意深く見極めながら、今後も機動的に必要かつ十分な経済財政政策を間髪を入れずに講じる」と述べました。

そのうえで、「現在は、感染拡大の防止が最優先だが、その後は、日本経済を再び確かな成長軌道に戻すため、一気かせいにこれまでにない発想で思い切った措置を講じていく。その具体的な方策を政府・与党の総力をあげて練り上げていく」と述べ、新たな経済対策の策定も念頭に必要な措置をとる考えを示しました。

また、安倍総理大臣は、「現在は対症療法を根気強く続けるほかなく、決定的な治療薬やワクチンが存在しないことが世界的な不安の最大の原因だ」と述べたうえで、アメリカやヨーロッパ、WHO=世界保健機関などと協力し、治療薬などの開発を加速させる考えを示しました。

そして、「わが国だけの孤独な戦いではない。世界全体がいま、新型コロナウイルスという共通の敵に立ち向かっている。G7、G20の枠組みを活用し経済政策も含めた国際社会の結束した対応をリードしていく考えだ。いかなる困難も、力を合わせれば、必ずや打ち勝つことができる。私はそう確信している」と述べました。

“習主席訪日がさまざまな制限に影響与えたことは全くない”

安倍総理大臣は中国からの入国制限の措置について、「習近平国家主席の国賓としての訪日が、中国に対するさまざまな制限に対して影響を与えたのではないかということがよく指摘されるが、そのようなことは全くない。国民の健康と命を守ることを最優先に判断してきたところだ」と述べました。

そのうえで水際対策について、「諸外国における感染者数や移動制限措置の動向などを踏まえて、対象地域を順次、拡大してきたところだが引き続き状況を注視しながら分析し、機動的な措置をちゅうちょなく発動していく考えだ。水際対策は、適切に判断してきたと考えている」と述べました。

東京五輪・パラ “予定どおり開催したい”

安倍総理大臣は東京オリンピック・パラリンピックについて「アスリートや観客にとって安全で安心な感動を与える大会となるよう、日本全体が『ワンチーム』となって力を尽くしてきており、現在も準備を進めている。来週には、いよいよ聖火をむかえることになり、私自身も福島を訪れて聖火リレーのスタートに立ち会いたい」と述べました。

また、「きのうのトランプ大統領との電話会談では、開催に向けて努力していることを説明し、大統領からは『日本の透明性がある努力を評価する』との発言があった。日米で協力し、緊密に連携していくことで一致したが、延長や中止については、首脳会談では一切話題になっていない」と述べました。

そして「われわれとしては、今後ともIOCと連携しながら、この感染拡大を乗り越え、オリンピックを無事予定どおり開催したい」と述べました。

緊急事態を宣言する基準 現時点で提示は困難

安倍総理大臣は「緊急事態」を宣言する基準について、「現時点で、数値基準のような形で示すことは困難だが、判断にあたっては専門家の意見を伺いながら、慎重に行っていく。緊急事態が宣言された場合には決定に至った背景なども含め私から国民に説明をする機会を設けるなど、丁寧な説明を行っていく」と述べました。

経済対策 大胆なメッセージ性強い対策を

安倍総理大臣は、経済対策について、「今の段階では感染拡大を阻止をするために全力を尽くしていきたいが、その後、何とか経済を安定した成長軌道に戻し国民に活気や笑顔が戻るように、思い切った大胆なメッセージ性の強い対策をしていかなければならない」と述べました。

そのうえで、「具体的にどういう対策を打っていくか、与党とともに練り上げていきたい。国内だけではなく世界経済全体が相当動揺しているので、世界各国とも協力しながら必要なマクロ政策、経済財政政策を打っていきたい」と述べました。

所得減少への手当て 速やかに検討

安倍総理大臣は、「景気悪化の懸念が高まっており、観光関係や飲食関係の状況が急速に悪くなっていることを承知している。仕事がなくなる状況に直面している人もたくさんおり、電気料金など公共料金の支払いも難しい人が出てくることが懸念される。所得が大きく減少するなどの不安を感じている皆さんへの手当てを速やかに検討していきたい」と述べました。

消費税引き下げ検討する考えは?

安倍総理大臣は、記者団が景気対策の一環として消費税を一時的に5%に引き下げることを検討する考えがあるかと質問したのに対し、「消費税の去年の引き上げについては、全世代型社会保障制度へと大きく転換していくために必要な措置だが、いま、経済への影響は相当な影響があるし、その中で、しっかりと雇用を守り抜き、経済を確かな成長軌道に戻していかなければいけない。なにをすべきかについては、自民党の提言も踏まえ、世界経済の動向を注意深く見極めて、さまざまな可能性を想定しながら、必要かつ十分な経済財政政策を間髪を入れずに講じていきたい」と述べました。

学生の就活 何とか予定された採用の実現を

安倍総理大臣は、採用の内定取り消しなど学生の就職活動に影響が出ていることについて、「学生の前途も考慮し、何とか予定された採用を実現していただきたい。政府として支援を行っていくし、企業側にもしっかりと取り組んでもらいたい。とにかく雇用を守り抜く決意であらゆる手段を講じていきたい」と述べました。

緊急事態宣言でも「報道の自由」は担保

安倍総理大臣は、「緊急事態宣言が出た場合でも、『報道の自由』は担保されるのか」と質問され、「『報道の自由』が守られることは明確に申し上げておきたい。緊急事態宣言は、国民の生活や健康、命を守るために宣言するもので、われわれが独裁をするということでは全くない」と述べました。