トランプ大統領 国家非常事態を宣言 感染拡大を受けて

トランプ大統領 国家非常事態を宣言 感染拡大を受けて
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アメリカのトランプ大統領は新型コロナウイルスへの対応で、最大で5兆円余りの財政出動を可能にする国家非常事態を宣言しました。徹底した対策を打ちだすことで感染の拡大を防ぐとともに、株価が急落するなか、社会や経済に広がる動揺を抑え込むねらいがあるとみられます。
トランプ大統領は13日、記者会見して国家非常事態を宣言し、これにより、最大で500億ドル、日本円で5兆4000億円を感染拡大防止のために活用できるようになるとともに、医療機関のベッド数の制限の撤廃や遠隔診療の実施など、医療体制の強化が可能になります。

またトランプ政権は13日、非常事態宣言とは別に、先に成立していた83億ドルの緊急予算に追加する形で経済対策を実施することで、野党・民主党と合意をしました。

新たな法案では、健康保険に加入していなくてもウイルスの検査を受けられるようにすることや、休職や解雇を余儀なくされた人たちのための所得保障や失業保険の充実などが盛り込まれており、上下両院の承認を経て、来週前半にも成立する見通しです。

ニューヨーク株式市場は前日に過去最大の値下がりとなったあと、13日は値下がりした銘柄を買い戻す動きが先行し、さらに取り引き終了直前にトランプ大統領が国家非常事態を宣言したことで、さらに大きく値上がりしました。

トランプ大統領としては、社会や経済に広がる動揺を抑え込むとともに、ことし11月の大統領選挙での再選に向けて、強い指導力をアピールするねらいもあるとみられます。

一方、WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は13日、「今やヨーロッパが『パンデミック・世界的な大流行』の中心地になった」と述べ、対策強化の必要性を強調しました。

イタリアでは感染者が1万7000人、亡くなった人が1200人を超え、中国の武漢で対策にあたっていた医師や看護師などによる医療チームが到着し、今後、数週間にわたって感染が最も深刻な北部で支援を行うことになりました。

またスペインでは、感染者が4200人を超え、サンチェス首相は「国内の感染者は、来週には1万人以上になる」との見通しを示し、非常事態を宣言しました。

感染者が3600人を超えたフランスでは、100人以上が集まることを新たに禁止したほか、パリの観光名所のルーブル美術館やエッフェル塔などが当面、休館することを決めました。

さらにイギリス政府は、5月に予定されていた統一地方選挙を1年延期することを決め、イギリス王室はエリザベス女王の今後のスケジュールが変更になる可能性があると発表するなど、ヨーロッパ各地で影響が広がっています。

国家非常事態宣言とは

「国家非常事態宣言」は、国の安全に関わる緊急事態などへの対応を迅速にとる必要に迫られた際に大統領が宣言するもので、過去には2001年の同時多発テロの直後に出されたほか、外国での紛争や人権侵害に対して制裁措置をとる際にもたびたび使われています。

トランプ大統領は去年2月、みずからの公約であるメキシコとの国境沿いの壁の建設を、議会の承認を経ずに進めるために異例の非常事態を宣言し、その正当性をめぐる議論に発展しました。

2009年にアメリカで新型インフルエンザが急速に広がった際には、医療機関がみずからの判断で臨時の診療所を設置できるようにするなど、現場の態勢や権限を強化するためにオバマ前大統領が非常事態を宣言しました。

今回の非常事態宣言が出されたことで、FEMA=連邦緊急事態管理庁に計上されている災害対策予算を含めて最大で500億ドル、日本円で5兆4000億円を、ウイルスの感染拡大の防止に向けた全米の各州や自治体の取り組みに活用できるようになります。

また、医療機関では、病床数の制限の撤廃や、医療機関の施設の外への臨時の施設の設置、それに遠隔診療などを行えるようになります。