日本郵政“国の助成利用は有給休暇ない場合のみ”従業員に示す

日本郵政“国の助成利用は有給休暇ない場合のみ”従業員に示す
臨時休校で仕事を休まざるを得なくなった保護者の所得を補償するため、国が新たに設けた助成制度をめぐり、日本郵政グループが制度の利用は、年次有給休暇を使い切った場合に限るなどとする文書を従業員に示していることが分かりました。厚生労働省は、年次有給休暇は労働者の意思で取得するもので、使用者が一方的に取らせた場合は法の趣旨に反するとしています。
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため今月から始まった臨時休校で、仕事を休まざるを得なくなった保護者の所得を補償するため、国は年次有給休暇と同額の賃金を支払う企業に、日額8330円を上限に助成する新たな制度を設けています。

この制度の創設が公表されたあとの今月4日、日本郵政グループが従業員に示した内部文書によりますと、臨時休校によって子どもの育児のため出勤できない場合は、従業員の希望に最大限配慮したうえで、まず年次有給休暇を取得し、制度の利用は年次有給休暇がない場合に限るとし「乱用しないよう注意」と書かれています。

厚生労働省は「個別の事例の是非は言えないが、年次有給休暇は労働者の希望に応じて取得させるもので、使用者が一方的に取得させるのは法の趣旨に反する」としています。

郵政産業労働者ユニオンは「国の要請で休校になった結果、仕事を休まざるをえないのに、年次有給休暇を使うのは適切ではなく、気兼ねなく休めるようにすべきだ」として取り扱いを改めるよう求めています。

日本郵政グループ「制度外の社員とのバランス考慮」

日本郵政グループは「子どもがおらず、助成金の制度の対象とならない社員とのバランスを考慮して、基本的には年次有給休暇を優先的に取得することとしている。制度を活用しないということではなく、今後も状況をみて運用を検討したい」とコメントしています。

制度利用断られた男性「納得できない」

神戸市内の郵便局で非正規の職員として働く50代の男性は、年次有給休暇ではなく、国が新たに設けた助成制度を活用できないかと上司に相談したところ、断られたといいます。

神戸市内の郵便局で勤務する船山良成さん(53)は、病院に勤務する妻と小学4年生の息子と3人で暮らしています。

船山さんは、13年前から非正規の職員として配達や集荷の業務に携わっています。

船山さんが暮らす大阪 茨木市でも新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、今月2日から小学校が休校になりました。しかし、学童保育に預けられるのは小学3年生までで、近くに頼れる親族もいないため妻と交代で仕事を休み息子の面倒を見ているといいます。

船山さんは「ふつうの休みと違い、友達の家に遊びに行かせることもできませんし、2年前には大阪北部地震があったため子どもを1人で留守番させるのは不安です」と話しています。

船山さんは、国が新たに設けた助成制度を活用できないかと考え、先週、職場の上司に相談しました。しかし上司からは「会社の方針で、年次有給休暇が残っているのなら特別な休暇を使うことはできない」と伝えられたといいます。

船山さんは時給1600円で、週5日フルタイムの契約で働いているため、休むと給料が減り、簡単に仕事を休むことはできません。そのため船山さんは12日から3日間、年次有給休暇ではなく無給の休みを取って子どもの面倒を見ています。

船山さんは「いつ病気になるか分からない家族や自分のために、年次有給休暇は最後まで取っておきたいと考えました。今回、国が制度を設けたのに、年次有給休暇を先に使えというのは納得ができないです。会社には考えを改めてもらいたいです」と話していました。

電話労働相談などに複数の相談

連合によりますと、今月、緊急に行った電話の労働相談などには、臨時休校で仕事を休まざるを得なくなった保護者の所得を補償する制度について、会社が助成制度を利用するための申請手続きが面倒だとして利用してくれないとか、年次有給休暇をとるか無給の欠勤扱いとなっているなどという相談が複数寄せられているということです。

連合総合運動推進局の山根木晴久総合局長は「国の助成制度は労働者が申請するものではなく、企業が賃金をきちんと支払い、そのうえで申請をしなければ活用することができないため、企業にはしっかり活用してほしい。また、国も制度の周知や手続きの簡素化をするなどして、企業が使いやすい環境を整えてほしい」と話していました。