新型ウイルス感染拡大 収入減や解雇 貸し切りバス運転手の苦悩

新型ウイルス感染拡大 収入減や解雇 貸し切りバス運転手の苦悩
新型コロナウイルスの感染拡大で深刻な影響が出ている貸し切りバス業界では運転手が自宅待機などで収入が大きく落ち込んだり、解雇されたりするケースが出始めています。運転手たちの不安の声を取材しました。

仕事激減で収入半減

「先日、最後の仕事が終わりました。それ以降、仕事は入っていません」こう話すのは、首都圏のバス会社に勤務する46歳の男性運転手です。

男性は正社員で、主にベトナムやタイなどのからの観光客向けのツアーを担当しています。

新型コロナウイルスが感染拡大する中、会社では徐々に仕事が減っていき、ついに、来月上旬までの仕事が、すべてキャンセルとなりました。

男性は、妻と中学生の息子3人で生活していますが、この影響で、給料も半分程度にまで落ち込んでいて、住宅ローンの返済や家族の生活費の捻出などに頭を悩ませています。

さらに会社では、自宅待機を命じられる運転手も出始めていて、今後、このまま仕事を続けることができるのか不安だといいます。

「息子は来月から高校に入学し、支出も増えていく。こうした中で、仕事が減り、ダメージは計り知れない。状況次第では、解雇の可能性もあるかもしれず、これから、どうなるのかわからず、不安な気持ちでいっぱいだ」。

仕事激減で解雇されるケースも

仕事が激減して、運転手の中には、解雇されるケースも出始めています。

「先月末で解雇されました。家族もいるのに、これから、どうやって生活していけばいいのか…」こう話すのは、67歳の貸し切りバスの男性運転手です。
男性は、正社員として首都圏のバス会社で働いていましたが、先月いっぱいで解雇されました。

男性が働いていたバス会社は、主に中国人観光客向けのツアーバスを運行していましたが、新型コロナウイルスの影響で、1月以降、キャンセルが相次ぎ、その後、すべての仕事がキャンセルとなりました。

仕事が全くなくなり、不安に思っていたところ、1月末に突然、会社の担当者から、解雇を伝えられたといいます。

「担当者からは『仕事がなくなり、このまま人件費を支払うと、会社がつぶれてしまう。大変申し訳ないが、乗務員全員を2月いっぱいで解雇する』と言われました。驚いたのと、とにかく不安で…」
男性運転手は、妻と障害のある30代の娘の3人で暮らしています。

年金は受け取っているものの、それだけで生活するのは難しく、新たな仕事を探すため、送迎バスの派遣会社2社に登録し、就職活動を続けています。

しかし、最近、運転手の求人への応募者が多いこともあり、現在も採用には至っていません。

また、ここにきて、元の会社の担当者から「今月中旬から、しばらくの間、会社も閉鎖する」と伝えられました。

解雇される際に、担当者からは『状況が回復して再び求人を出す時には、優先して採用する』と言われていただけに、ショックも大きく、ただただ不安だといいます。

「私としては、30年以上の経験を生かしたバス運転手の仕事がしたい。ただ、バスの仕事が戻る見通しは全くたっていない中で、障害のある娘や家族のため生活をしていくには、運転手以外の仕事も探していかないといけない。しかし、高齢で経験がない自分が、新たな仕事を見つけられるのか。とても不安で本当に先が見えない」