“初期症状だけでは感染疑えず” 20代感染者が証言 札幌

“初期症状だけでは感染疑えず” 20代感染者が証言 札幌
k10012327401_202003121212_202003121213.mp4
新型コロナウイルスの感染者が相次いでいる札幌市のライブバーの従業員の娘で、自身も感染して入院している女性が、NHKの電話インタビューに答え、「最初は軽いせきと頭痛で、かぜと思った。従業員の母の感染が先にわかり、それがなければ病院に行かなかったと思う」と述べ、初期の症状だけでは感染を疑えなかった状況を明らかにしました。
電話インタビューに答えたのは、今月5日に新型コロナウイルスへの感染が確認され、入院して治療を受けている20代の女性です。

女性は今月3日に感染が確認された札幌市のライブバーの60代の従業員の娘で、このライブバーでは合わせて6人の感染が確認されています。従業員の母親について、女性は「先月26日に仕事から帰宅すると、のどに少し違和感があると言っていた。翌日27日に少し熱が出てかかりつけの病院に行き、抗生物質の処方と点滴を受けて帰宅した」と説明しました。

しかし、症状は改善せず、「翌日28日も病院に行って点滴などを受けたが症状はよくならなかった。今月1日に保健所に相談し、翌2日に別の病院で新型コロナウイルスの検査を受けることになったが、何も食べられないほど症状が重くなっていた」と話しました。

女性にも1日の朝に症状が出始めましたが、「頭痛と軽いせきがコンコンと続くようになった。高い熱が出ているわけでもないので普通のかぜだと思った」と述べました。

自身の感染を疑い始めたのは、今月3日に母親の感染が確認されてからで、「身近に感染者がいなければ病院にかかることもなかった。母は介添えなしにトイレに行けないくらい衰弱していたので、必死に看病しているうちに感染したのかもしれない」と振り返り、初期の症状だけでは感染を疑えなかった状況を明らかにしました。

女性は38度を超える熱が出たこともありましたが、現在、症状は落ち着いているということです。

治療については、「よく使われる解熱剤などが出されていて、自分としては『あとは自力で治してください』ということなのだと思う」と話しています。

また、女性の80代の父親も感染が確認されていて、「母は回復に向かっているが、父は体調が悪くなっていてどうなるかわからない。誰のせいでもないと言ってくれる人がいる一方で、ほかの家族も含めて冷たい目で見る人もいると思う」と述べ、残された家族も含め周囲からどのように見られるのか不安だと話していました。

対策は「本当に意識してやらないと…」

女性は、取材に応じたのは感染した経緯や症状について広く知ってもらい、その理解と対策に生かしてほしいという思いからだとしています。

女性は「感染対策が報道されていても、本当に意識してやらないとなかなかできないことだと思いました」と話しました。

そのうえで「自分たちが感染してしまって、もしかしたら誰かにうつしているかもしれないと思うと、本当にかからないように手洗いなどをちゃんとしておけばよかったなと思います。やっぱり、できることやるということに尽きると思う」と涙声で振り返っていました。

ライブバー 先月26日に感染拡大か

今回、NHKのインタビューに応じた20代の女性の母親は、感染者が相次いで報告されている札幌市のライブバーで従業員として働いていました。

このライブバーでは今月12日までに女性の母親を含む従業員や客、合わせて6人の感染が確認されていて、さらにこの6人の濃厚接触者から女性を含む5人の感染者が報告されています。

関係者によりますと、このライブバーは定員が30名ほどで、従業員がジャズやシャンソンなどの生演奏を披露するステージが1日に数回開かれ、客がカラオケをしたりカウンター越しに従業員と話をしたりすることができます。

またライブバーで感染が報告された6人のうち5人は、いずれも先月26日に店にいたことが分かっていて、保健所ではこの日に感染が広がった可能性もあるとみて来店者に申し出るよう呼びかけています。

一方、関係者によりますと、店では来店者を伝票で細かく記録していて、先月26日に来店したのは常連の客11人で、ほかに来店した客がいた可能性はないのではないかと話しています。