米大統領 “入国停止や大規模支援策”も影響収まる気配なく

米大統領 “入国停止や大規模支援策”も影響収まる気配なく
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アメリカのトランプ大統領は新型コロナウイルスの感染拡大と影響を食い止めるため、ヨーロッパの26か国からの入国を30日間停止し、日本円で5兆円規模の支援策を導入したいという考えを明らかにしました。しかし急速に広がる感染と生活や経済への影響が収まる気配はありません。
トランプ大統領は11日、ホワイトハウスの大統領執務室から国民向けに演説し、「ウイルスとの戦いで極めて重要な局面にある。これまでで最も攻撃的かつ包括的な取り組みだ」と述べて、新たな措置を発表しました。

このなかでトランプ大統領は水際対策を強化するため「ヨーロッパからの入国を30日間、停止させる」と明らかにしました。

国土安全保障省によりますと、対象となるのはイギリスなどを除くヨーロッパの26か国で、アメリカ東部時間の13日午後11時59分以降、これらの国から渡航してきたり、2週間以内の渡航歴があったりする外国人の入国を認めないということです。

さらに国務省はアメリカからのすべての海外渡航に関して、渡航先で感染したり行動を制限されたりする可能性があるとして、再検討を求める勧告を出しました。

トランプ大統領は演説で追加の経済対策も明らかにし、中小企業向けの低利の融資など500億ドル、日本円で5兆2000億円規模の新たな支援策を導入したいという考えを示しました。

トランプ大統領はこれに先立ち日本の所得税に近い給与税の引き下げも打ち出していて、株価が歴史的な下落を記録するなど、経済への影響の懸念が強まるなか、対応に躍起になっています。

また、トランプ大統領は「多くのアメリカ人にとってリスクはとても低い。若くて健康な人は早期の回復を期待できる。ただ高齢者のリスクは高く、重ね重ねの注意が必要だ」と述べて、冷静な対応を求めました。

しかし、アメリカでの感染者はこの1週間で急増し、専門家は今後、さらに悪化するという見通しを示していて、感染と生活や経済への影響が収まる気配はありません。

“物資の輸入は対象外” ツイッターで強調

トランプ大統領は演説でヨーロッパからの入国停止を明らかにした際、人だけでなく物資の輸入も禁じると受け止められる発言をしましたが、その後、ツイッターに「貿易はヨーロッパからの30日間の入国制限措置の影響は受けない。この措置は人を停止させるもので物資ではない」と書き込み、物資の輸入は対象とはならないことを強調しました。

「入国制限 感染拡大防止に必要も経済活動を悪化させる」

アメリカがヨーロッパからの入国を制限することが世界の経済に及ぼす影響について、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「入国制限は感染拡大の防止には必要だが、経済活動を悪化させる表裏の関係にある。アメリカとヨーロッパは世界経済の3分の1の規模を占める大きな市場だ。自由貿易の柱であるヒト・モノ・カネのうちのヒトの移動が滞るということは、企業の事業運営にも支障をきたしかねず世界経済にとってマイナスだ。アメリカの決断によって入国制限が連鎖していくことが懸念される」と話しています。

また日本経済の下支えのために必要な対応については「ウイルスによってもたらされた今回の危機は今の段階では金融危機とは違う。資金が市場に潤沢にあるため、金利の引き下げなど金融緩和の直接の効果は限られるだろう。経済的なダメージを受ける企業や人に対する財政的な支援が当面は求められている」と指摘しています。

米への入国停止は26か国

ホワイトハウスやアメリカ国土安全保障省によりますと、アメリカへの入国を停止するのは、EU加盟国を中心に人とモノの自由な移動を認めた「シェンゲン協定」に加盟する26か国を、アメリカ入国の14日前までに訪れた外国人です。アメリカ国民とその家族は含まれないということです。

この措置が始まるのは、アメリカ東部時間の13日午後11時59分、日本時間の14日の午後0時59分以降で、対象となる26か国は、アイスランド、イタリア、エストニア、オーストリア、オランダ、ギリシャ、スイス、スウェーデン、スペイン、スロバキア、スロベニア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、フランス、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、マルタ、ラトビア、リトアニア、リヒテンシュタイン、それに、ルクセンブルクです。

EU加盟国から米への渡航 1か月152万人以上

EU=ヨーロッパ連合の統計局によりますと、EUの27の加盟国から去年3月の1か月間に航空機でアメリカに渡航した人の数は、合わせて152万人以上に上り、ここ数年、毎年増加の傾向にありました。

このうち最も多かったのが、ドイツからの渡航者でおよそ40万人、次いでフランスがおよそ30万人、オランダが22万人でした。

EU大統領「必要なあらゆる措置進める」

アメリカのトランプ大統領がヨーロッパからの入国を停止すると明らかにしたことを受けて、EU=ヨーロッパ連合のミシェル大統領は12日、ツイッターに、「きょう状況を分析する。経済の混乱は避けなければならない。EUは感染拡大の抑え込みや研究支援など必要なあらゆる措置を進めている」と投稿し、対応を急ぐ考えを示しました。

「国際社会に感染防止 しっかり説明したい」官房長官

菅官房長官は午前の記者会見で、アメリカのトランプ大統領が、イギリスを除くヨーロッパからの渡航を停止させる方針を明らかにしたことについて「わが国への特段の言及はなかったと承知している。政府としては、アメリカを含む国際社会に対し、わが国の感染防止のための取り組みや国内の状況をしっかり説明していきたい」と述べました。