「緊急事態宣言」可能にする法案 閣議決定 国会に提出

「緊急事態宣言」可能にする法案 閣議決定 国会に提出
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新型コロナウイルスの感染がさらに拡大した場合に備え、政府は10日の閣議で、総理大臣が「緊急事態宣言」を行い、自治体による外出の自粛や学校の休校などの要請や指示を可能にするための法案を決定し、国会に提出しました。
閣議決定されたのは、平成24年に成立した新型インフルエンザ対策の特別措置法の改正案で、感染拡大が続く新型コロナウイルスについて「早期に終息させるために徹底した対策を講じていく必要がある」として、最長で2年間対象に追加するとしています。

そして感染が全国的に急速にまん延し、国民生活や経済に甚大な影響を及ぼす場合などに、総理大臣が「緊急事態宣言」を行い、緊急的な措置を取る期間や区域を指定するとしています。

そのうえで、対象地域の都道府県知事は、住民に対する外出の自粛要請をはじめ、学校の休校や多くの人が集まる施設の使用制限などの要請や指示ができるほか、特に必要がある場合は臨時の医療施設を整備するため土地や建物を所有者の同意を得ずに使用できるとしています。

法案は10日夕方、国会に提出され、11日に衆議院で審議入りし、今週13日に成立する見通しで、政府は翌14日に施行する方向で調整を進めています。

官房長官「直ちに緊急事態宣言出す状況にない」

菅官房長官は閣議のあとの記者会見で、政府が閣議決定した「緊急事態宣言」を可能にする法案について「危機管理の観点から常に最悪の事態を想定し、あらかじめ備えることが重要であり、国民生活への影響を最小とするために、緊急事態宣言など、もう一段の法的枠組みの整備が必要だと判断した」と述べました。

一方で「現時点では直ちに緊急事態宣言を出すような状況にないと認識している。法案では宣言を行った際には国会に報告することとされているが、宣言を行うことについては国民生活に与える影響に鑑み、慎重に判断すべきものと考えている」と述べました。

経済再生相「影響最小限へ早期成立を」

改正案を担当する西村経済再生担当大臣は閣議のあとの記者会見で「今がまさに、この感染症を終息させるうえで大変大事な時期で、国民生活や経済に及ぼす影響が最小限となるように、早期成立を期していきたい。この法案で緊急事態宣言を出し、さまざまな措置が取れることになっているが、いざというときに備えるものでそういう事態にならず、まさに『伝家の宝刀』であり続けてほしい」と述べました。

また私権の制限に対する懸念があることについて「国民の自由と権利を尊重する観点から、『私権の制限は必要最小限のものでなければならない』という配慮規定がある。緊急事態宣言の要件に該当するかどうかの判断に際しては専門家の意見を聞くことも含め、十分配慮して、適切に判断が行われるようにしたい」と述べました。

厚生労働相「宣言は専門家の諮問委で判断」

加藤厚生労働大臣は閣議のあとの記者会見で、政府が閣議決定した「緊急事態宣言」を可能にする法案について「宣言が必要な事態や、宣言を踏まえた対応が必要な事態の可能性を想定し、政府として法案を出した。宣言を行うには、国内や海外の状況、あるいはWHOがどう全体を判断しているのかも踏まえ、専門家の会議である諮問委員会で判断いただくので、それに向けて必要な情報をしっかり収集していきたい」と述べました。

自民 二階幹事長「緊急要する問題」

自民党の二階幹事長は記者会見で、「緊急を要する問題だ。少し油断すると大変な事態になりかねず、大変適切な法案だ」と述べました。

自民 森山氏「事前承認は対応遅れない範囲で」

自民党の森山国会対策委員長は、記者会見で「緊急事態宣言をしない努力がいちばん大事だが、どういうことが起きるか分からず、手抜かり無く対応するために、法案の成立が極めて大事だ」と述べました。

一方、野党側が求める国会の事前承認については「できるだけ国会に連絡をもらうことは大事だが、やむをえない場合があることは理解しなければならない。対応が遅れることがあってはならず、遅れない範囲でやることが原則だ」と述べました。

公明 山口代表「緊急事態宣言は与党と十分協議を」

公明党の山口代表は政府与党連絡会議で「法案は国民の命と健康を守るための備えであり、与野党の幅広い協力を得ながら、一刻も早く成立させることが重要だ。一方で、私権の制限を伴う緊急事態宣言は、影響が大きいだけに、出す場合は与党とも十分に協議し、国民への丁寧な説明をお願いしたい」と述べました。

このあと山口氏は記者団に対し、野党側が求める国会の事前承認について、「緊急を要する宣言はあらかじめ政府に委ねているので、さらに時間的なプロセスを要求するのは避けるべきだ」と述べ、否定的な考えを示しました。

また政府が今回の事態を「歴史的緊急事態」に指定したことについて、「今回の事態は新たな経験であり、今後しっかりと検証して教訓を得ながら、次の時代に対応するという政府の姿勢は極めて重要だ」と述べました。

立民 安住国対委員長「宣言を出す前に国会意見聴取を」

立憲民主党の安住国会対策委員長は記者団に対し「『緊急事態宣言』が強い権限を持つ以上、何らかの形で宣言を出す前に国会に説明し意見を聞かなければならない。あすに採決を控えている中、法案の修正は難しいかもしれないが、法案に明記せずとも担保する方法はあるので、野党側の意向を取り入れてもらいたい」と述べました。

国民 玉木代表「国会への事前承認を求める」

国民民主党の玉木代表は記者団に対し、「強力な権限で私権を制限する条項があり、会派では国会への事前承認を求めることでまとまっている。政府に法案の修正を求めるが、スピード感も大事であり、しっかり議論したい」と述べました。