円急騰 一時101円台 東京外国為替市場

円急騰 一時101円台 東京外国為替市場
9日の東京外国為替市場、円相場はおよそ3年4か月ぶりに一時、1ドル 101円台まで円高ドル安が進みました。新型コロナウイルスの感染拡大で世界経済に深刻な影響が及ぶのではないかという懸念から、比較的安全な資産とされる円を買う動きが急速に広がりました。
円相場は、朝方から円を買う動きが進み、昼前には先週末より4円以上値上がりして1ドル 101円半ばまで円高ドル安が進みました。

午後5時時点の円相場は、先週末と比べて3円57銭、円高ドル安の1ドル=102円22銭から25銭でした。

ユーロに対しては、先週末と比べて1円91銭、円高ユーロ安の1ユーロ=116円94銭から98銭でした。

ユーロはドルに対して、1ユーロ=1.1439から41ドルでした。

円高ドル安が加速したのは、新型コロナウイルスの感染拡大で世界経済をけん引してきたアメリカをはじめ、各国の経済に深刻な影響が及ぶのではないかという懸念が強まっているためです。

市場関係者は「産油国の協議が決裂し、原油価格が急落していることが引き金となって、投資家の慎重姿勢が一気に強まり、円を買う動きが進んだ。金融市場が大きく荒れる中、これからの欧米の市場で株価や原油価格が落ち着くかが焦点になる」と話しています。

自動車や電機の業績悪化懸念

外国為替市場で急激な円高が進んだことで、自動車や電機など輸出関連の企業の業績に大きな影響を及ぼすことが懸念されています。

自動車や電機の大手メーカーは、今月までの1年間の為替レートを1ドル 107円から109円と想定しています。

このうちトヨタ自動車は、為替レートを1ドル 108円と想定していて、これより1円、円高が進むと年間の営業利益が400億円減る見込みだとしています。

このほかの自動車メーカーでも、想定している為替レートより1円、円高になった場合、年間の営業利益がホンダで120億円、日産自動車で110億円、それにSUBARUで100億円それぞれ減る計算だとしています。

一方、電機メーカーなどでも、想定レートより1円、円高になると、年間の営業利益がキヤノンが44億円、パナソニックが24億円、三菱電機が18億円それぞれ減益になるとしています。

自動車や電機メーカーの間では、新型コロナウイルスの感染拡大で、中国を中心に生産や販売が落ち込んでいて、さらにこのまま円高が進んだ状況が続けば、業績への影響は避けられない見通しです。

経団連 中西会長「大変深刻な事態だ」

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で円高や株安が急激に進むなど、金融市場の混乱が続いていることについて、経団連の中西会長は9日の記者会見で「大変深刻な事態だ」としたうえで、官民が連携して感染拡大を防ぐための対策に取り組むべきだという考えを強調しました。

この中で中西会長は、金融市場の混乱が続き、円高や株安が急激に進んでいることについて、「大変深刻な事態だと思う。きょうになってまた一段と進んだことを深刻に受け止めている」と述べました。

そのうえで、中西会長は「深刻な影響が及んでいる交通や観光、さらには中小企業の資金繰りなどに多面的な影響が現実に発生しているという状況にある。だからこそ、本当の意味で感染症をねじ伏せるための対策を、民も官も力をあわせ、全力を投入してやっていくべきだ」と述べ、官民が連携して感染拡大を防ぐための対策に取り組むべきだという考えを強調しました。

円相場の急騰の理由は

東京外国為替市場で9日、急速に円高ドル安が進んだ要因について、あおぞら銀行総合資金部の諸我晃部長は「アメリカのニューヨーク州が非常事態宣言を出すなど、ここにきて感染拡大がアメリカの実体経済に与える影響への懸念が一気に強まって、ドルが売られた」と指摘しました。

そのうえで「先週、FRB=連邦準備制度理事会が緊急の利下げを決めたことで、アメリカの長期金利が低下し、ドルの魅力が薄れたため、ドル売り円買いの流れになった。さらに、原油価格の急落がアメリカの企業収益にネガティブな要因になるとして、ドルの売り材料となった」と述べました。

今後の見通しについて、諸我氏は「利下げなどの金融政策では根本的な解決は難しく、企業への支援などの財政政策が重要になるだろう。アメリカの実体経済への影響がどの程度か、今月末にかけて発表される経済指標で確認できるまでは不安定な市場が続きそうで、高い警戒が必要だ」と述べました。