楽天市場 送料の一律無料化を撤回

楽天市場 送料の一律無料化を撤回
ネット通販「楽天市場」の送料をめぐる問題で、楽天は今月18日から予定していた出店者に一律で無料化を求める方針を撤回し、対応できる店舗から始めることを正式に明らかにしました。新型コロナウイルスの感染拡大を理由に挙げていて、会社にとって大きな方針転換になります。
楽天は「楽天市場」で3980円以上を購入した場合の送料を無料にするため、今月18日から「送料込み」の料金体系に統一する計画でした。

これについて会社はきょう記者会見し、18日から一律で無料化を求める方針を撤回し、対応できる店舗から始めることを正式に明らかにしました。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴って店舗で人員不足などの影響が出ていることを理由に挙げていて、無料化の取り組みに加わるかどうか、出店者側が選べるようにするとしています。

全店舗で無料化を実施する時期は未定だということです。

そのうえで、無料化によって利益が落ちた場合の店舗への支援策を用意するほか、無料化に参加している店舗かどうか、利用者が分かるようにするとしています。

無料化をめぐっては、送料の負担が増えることなどから一部の店舗が強く反対し、公正取引委員会が出店者に対する優越的な立場を利用した不当な要求にあたる疑いがあるとして独占禁止法に基づく緊急停止命令を先週、裁判所に申し立てていました。

記者会見した楽天の川島辰吾氏は「無料化の取り組みに法令上の問題はないと考えているが、公正取引委員会の申し立ては厳粛かつ真摯(しんし)に受け止めて対応していきたい」と述べました。

一方で、今回の方針について「新型コロナウイルスの影響が非常に大きいと判断した」と述べて、あくまで感染拡大を重視したと強調しました。

会社にとっては大きな方針転換となり、出店者の理解をどこまで得られるかが注目されます。

楽天ユニオン「将来の導入懸念」

楽天市場の送料無料化に反対していた出店者らが加盟する任意団体「楽天ユニオン」の勝又勇輝代表は「楽天は今回、送料無料化を完全に撤回するとは明言しておらず、会見の内容は非常にあいまいだ。出店者側には『新型コロナウイルスの影響や状況の変化を踏まえて、5月ごろをめどに改めて方針を連絡する』としていて、そのころに強制的に無料化を導入するのではないかという懸念がある。公正取引委員会は、ことば遊びのような楽天の発表に惑わされず、緊急停止命令の申し立ても取り下げないでほしい」と話しています。

送料問題の経緯

楽天は、去年、「楽天市場」で3980円以上購入した場合に、送料を一律で無料とする取り組みを今月18日から始めることを決めました。

ライバルのアマゾンに比べて送料体系が分かりにくく利用者の不満につながっているとして、これを改善するねらいでした。

しかし、一部の出店者が送料の負担が増えるなどとして強く反対し、ことし1月、公正取引委員会に調査を求める署名を提出。

これを受けて公正取引委員会は、先月10日、優越的な立場を利用して出店者に不当な要求をした独占禁止法違反の疑いがあるとして立ち入り検査しました。

その後、先月13日の会見で楽天の三木谷浩史社長は「送料無料ということばがひとり歩きし反省している」と述べて、「送料込み」という表現にあらためると表明しましたが、取り組み自体は今月18日に導入する意向を変えませんでした。

そのうえで三木谷社長は「出店者には『送料込みで価格を調整してください』と言っているので、優越的地位の乱用には当たらないと認識している」と述べ、公正取引委員会に理解を求めました。

しかし、公正取引委員会は、予定どおりに実施されれば公正な競争が侵害されるなどとして先週、独占禁止法に基づく緊急停止命令を東京地方裁判所に申し立てました。

申し立てのあとも楽天は「法令上の問題はない」として予定どおり今月18日から取り組みを始める姿勢を示していましたが、送料無料化に賛成する立場の出店者からも、新型コロナウイルスへの対応に追われていることや、強行すると評判が悪くなるなどとして、延期を求める声が上がっていました。